業界観測

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電気化学エネルギー貯蔵の「課題とチャンス」

新型コロナウイルス感染症が発生した後、川上のコモディティ原材料価格は絶えず上昇し、不動産業界の景気は断崖式に下落し、インターネット業界はもう好調ではなくなり......中国経済を支えるのは何だろう?



新型コロナウイルス感染症が発生した後、川上のコモディティ原材料価格は絶えず上昇し、不動産業界の景気は断崖式に下落し、インターネット業界はもう好調ではなくなり......中国経済を支えるのは何だろう?

答えの一つは--エネルギー革命

今後40年、中国はカーボンニュートラル時代に入り、この深刻な転換と変革は間違いなく巨大な価値とチャンスを秘めている為、エネルギーのグリーン転換は中国経済回復の新たな原動力になるだろう。

「第十四次五ヵ年計画」期間中および将来、中国はエネルギー転換、「カーボンピーク・カーボンニュートラル」という目標に注力する。電力システムのクリーン転換は中国が「カーボンピーク・カーボンニュートラル」という目標を達成する為の核心的な取り組みである。中国は既存のエネルギー構造を全面的に革新し、大規模な新しいエネルギーを電力システムへ連携させる必要がある。2021年秋以降に頻発した電力制限現象は、中国既存電力システムが抱える問題を再び浮き彫りにし、最近及び中長期的なエネルギー転換に新たな課題を提出した。

 

新しい電力システムの柱


「カーボンピーク・カーボンニュートラル」を実現する為には、まず太陽光や風力等の再生可能エネルギーの使用比率を高める必要がある。しかし、再生可能エネルギー特有の変動性、断続性とランダム性は、電力システムに安定的な原動力を提供することができず、逆に電力システムに入り乱れ、電力システムに巨大な挑戦をもたらす。近年、太陽光発電、風力発電は急速に発展して、電気が発せられた後にすぐに使用されていないか、貯蔵されないと、無駄になる。それによって「光を捨てる」、「風を捨てる」現象を引き起こして、大量の電力資源の浪費をもたらしている。

以上の問題を解决し、従来型エネルギーを含む電気エネルギー発電を改善する為に、発電、電力システム、ユーザー側のエネルギー貯蔵が多くなっている。新しい電力システムの構築において、エネルギー貯蔵は重要な柱となる。

 

新型電力システム構造

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発電側では、発電調整、補助運行、システムFM(エネルギー貯蔵(電気化学エネルギー貯蔵)FMの速度が速く、柔軟に充放電状態を切り替えられる為、良質なFM資源となる)、再生可能エネルギーの発電出力を平滑化し、予備容量を提供する等の能力を備えている。

送電側では、送電システムの混雑を緩和し、送配電設備の容量拡張を遅らせることができる(負荷が設備容量に近い送配電システムで、エネルギー貯蔵システムを利用し、より小さい設備容量を通じて効果的に送電システムの送配電能力を高めることができ、それによって送配電設備の新設を遅らせ、コストを下げる)。

ユーザー側では、エネルギー貯蔵を通じて電力の自家発電・自己使用を実現することができて、ピーク電力価格差で利益を獲得し、容量の費用管理に参与すると同時に、ユーザー側にエネルギー貯蔵施設を増設して使用側のピークカット能力を上げて、供給側と送電路の負荷容量と送電容量を減らすことも電力システム作業の重点である。また、カーボンニュートラルの目標を達成するには、工業用低品位熱源のリサイクル率を増加させる必要がある。不安定で断続的な余剰廃熱エネルギーを貯蔵し、ユーザーに供給することが最も有効な対策の一つである。

国家発展改革委員会と国家能源局は2021年初めに共同で『電力の電源・電力システム・負荷・貯蔵一体化と多エネルギー相互補完発展の推進に関する指導意見』を発表した。 「多エネルギー相互補完実施方法」と「電源・電力システム・負荷・貯蔵一体化の実施方法」(「源網荷儲」は電源、電力システム、負荷、貯蔵の全体的なソリューションを含む運営モデルで、社会の中断可能な電力負荷とエネルギー貯蔵資源を正確に制御することができる)を提出した。ほぼすべての「一体化」ソリューションはエネルギー貯蔵に関するものであり、エネルギー貯蔵が非常に重要な位置にあることを意味している。

エネルギー貯蔵はクリーンエネルギー産業、動力電池と新エネルギー車等と関連し、「カーボンピーク・カーボンニュートラル」目標の実現をサポートする。MIRの推測によると、エネルギー業界は設備、エンジニアリング及び電力サービス等の関連業界を含めて十数兆元以上の市場潜在力需要を掘り起こす。

 

中国エネルギー貯蔵市場の黄金期


2021年、中国のエネルギー貯蔵市場の設備搭載容量は43.44GWで、世界第一となった。電気化学エネルギー貯蔵設備の容量は5117.1MWで、全体の11.8%を占め、2020年の電気化学エネルギー貯蔵の割合より3%近く上昇し、大規模構築の効果が顕著であった。

2021年、中国の電気化学エネルギー貯蔵技術のうち、リチウムイオン電池エネルギー貯蔵技術の設備搭載容量は1830.9MW、99.3%の割合を占めた。現在、電気化学エネルギー貯蔵の主流であるリチウム電池技術はすでに大規模化建設の段階に入った。

 

2021年の中国における新規エネルギー貯蔵設備の比率

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(データ出所:CESA)

 

市場メカニズムの完備と財政・税金のサポートを通じて、2つの面でエネルギー貯蔵市場の発展環境を育成することは、中国政府のエネルギー貯蔵業界における重点である。中国のエネルギー貯蔵サポート政策は2021年に強化され、2021年だけでも集中的に打ち出された国家と地方のエネルギー貯蔵政策は275項目に達した。国家標準の面では、エネルギー貯蔵標準は合計230項目である。そのうち、国際標準は68件、国内標準は162件(各種技術の技術標準を含む)。

政策の強力なサポートと業界の技術標準の完備は、規範化、大規模化、商業の良性化発展の基礎であり、エネルギー貯蔵が2021年に爆発的に増加することを推進した。

 

課題が解決されつつあり、技術革新は乗り換え続けている


経済性はずっと電力貯蔵の大規模化、商業化発展を制約する核心的要素である。発電の面では、エネルギー貯蔵は新エネルギー発電所の2%~5%の投資収益率を下げる。電力システムの面では、エネルギー貯蔵の配置はコスト回収できない。使用の面では、過去のピーク価格差では収益できない。しかし現在、経済性の課題が解決されつつあり。

市場の建設から見ると、まず、電力スポット市場の急速な整備に伴い、新エネルギー+エネルギー貯蔵の安定的な電力供給は、非安定的な新エネルギー電力よりも利益を獲得し、エネルギー貯蔵の経済性を向上させる。次に、グリーン電力取引が徐々に市場化価格設定を実現するのに伴い、市場化価格設定方式はグリーン電力の価格弾力性を十分に発揮し、取引価格が既存の電力システム連携価格に対応する付加収益を上回ることで、更なる収益を獲得することが期待される。同時に補助サービスのコストが発電側から電気使用側に移転する傾向が現れている。広東の電力代行購入プランはエネルギー貯蔵コストを電力使用側に移転し、画期的な意義がある。 2021年12月、広東省発展改革委員会は、「広東省電力システム企業の電力代行購入実施方案(試行)」の実行に同意した。実施方案では、新型エネルギー貯蔵・揚水発電所の費用と需要側の対応等の費用は、市場取引と電力システム電力代行購入に直接参加する全体プレイヤーが共同で負担することが示された。

「広東省電力システム企業の電力代行購入実施方案(試行)

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(情報出所:広東省発展改革委員会)

 

エネルギー貯蔵システムのコストを見ると 2021年は川上原材料の価格上昇とリチウム電池が新エネルギー車に大量供給すること、蓄電池の生産能力不足等の原因によるエネルギー貯蔵システムのコストはまだ低下していないが、長期的に見れば、エネルギー貯蔵システムのコストの低下と商業化の傾向は依然として明らかであり、今後、継続した技術革新はシステム全体のコストの低下をけん引することはエネルギー貯蔵市場の更なる発展の核心要素である。

資本サポートから見ると、中央銀行は正式に炭素排出削減サポート施策を実施した。同施策は主にクリーンエネルギー、省エネ環境保護、炭素排出削減技術等の三大重点分野に焦点を当て、風力発電、太陽エネルギー利用、揚水エネルギー貯蔵、電気化学エネルギー貯蔵、電源・電力システム・負荷・貯蔵一体化プロジェクト等の分野を含み、金融機関に炭素排出削減貸付を提供するように誘導する。そして貸付利率は同じ期限のLPRと大体同じであり(現在1年期、5年期以上のLPRはそれぞれ3.85%と4.65%である)、同じタイプの農村・小型商業金融機関の1年5.5%の平均利率と比べて1.65 pct低下する。エネルギー貯蔵と関連業界は固定資産業界として、収益性は資金調達コストの金利変動に対する敏感性が強いが、今回の預金準備率削減はエネルギー貯蔵と関連施設の資金調達コストをさらに引き下げ、強力な資金保障を提供した。

事業モデルの革新から見ると、共有エネルギー貯蔵モデルの強力推進は電気化学エネルギー貯蔵の大規模化に力強い動力を提供した。1社または数社が新エネルギー集約ステーションに投資して共有蓄積エネルギー発電所を建設し、蓄積エネルギー発電所は地域内、さらに地域外の新エネルギー発電所、給電会社と同時に電気料金決済協議を締結し、新エネルギー発電所が電力制限の影響を受ける時、調整機構によって廃棄風力、廃棄光電量を共有蓄積エネルギーシステムに貯蔵し、負荷側の用電ピークまたは受け入れ空間がある時に電気エネルギーを放出する。ブロックチェーンに基づく共有エネルギー貯蔵使用プラットフォームは、抑制された新エネルギー電力・電力量とエネルギー貯蔵システムの受けた電力・電力量を情報収集プロセスを通じてブロックチェーン上に記録し、可視化とトレーサビリティーを実現し、複数の主体間の取引結果の整理を完了し、エネルギー貯蔵収益の清算が難しいという問題を解決した。2021年下半期以降、青海省、山東省、湖南省等複数のエネルギー貯蔵中核省でエネルギー貯蔵を共有するプロジェクトの立ち上げも爆発的に増加している。

共有エネルギー貯蔵モデル

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(情報出所:MIR DATABANK)

カーボンピーク、カーボンニュートラルがもたらすエネルギー革命の時代背景の下で、政策、標準、市場、ビジネスモデル、価格メカニズム等が急速に改善され、エネルギー貯蔵の発展を制約する重要な核心要素が徐々に取り除かれ、多シーンアプリケーションの需要が高まり、エネルギー貯蔵の課題はすでに解消され、中国のエネルギー業界の発展を推進する力強い原動力となる。