業界観測

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中国国産工作機械はハイエンド装備の発展を抑制

工作機械業界の「マルクス主義」を導入し、金属切削用工作機械の「中国の特色ある社会主義の道」を模索

以下を見れば、中国の工作機械の発展が如何に深刻に抑制されたかがよくわかる

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(データ出所:MIRDATABANK


工作機械には加工ソリューションはあるが、我々には対応ソリューションが無い

新中国が成立した時に、18社の重点国有企業(十八羅漢)と研究所八箇所(研究院七箇所、研究所一箇所、備考:研究院の殆どは「独立法人企業」であり、研究所の一部は大学や科学研究機関の所属機関であり、一部は個々の地域で学生募集資格を持つ大学院である。)で構成された旋盤産業システムを構築し、当時の最高の生産研究レベルを代表し、中国初期の産業発展のために一定の役割を果たした。

アメリカは1952年に世界初のCNCフライス盤を開発した。僅か6年後、1958年に北京第一工作機械工場と清華大学が協力して中国初の数値制御フライス盤を開発した。日本は現時点でCNC工作機械で成果を上げたばかりであり、スイスに於ける最初のCNC工作機械PICOMAX 50 NCは中国より17年後の1975年にやっと開発したことを知っておく必要がある。

続いて、その後はない製造業のモデルチェンジとグレードアップにより、中国に於けるハイエンドCNC工作機械の需要の増加が加速したが、中国国産はミドル・ローエンド市場を死守し、「薄利多売」、「大きくなってから強くなる」、「M&A買収」などの理念がよく見え、ハイエンド市場はこれで外資ブランドに獲得された。

今でも「ST」(営業利益は赤字)の瀋陽機床と「債権者に追い詰められた」昆明機床は依然としてGENERTECの参入を待っているが、その参入が何度も延期されたのは実際に資本の間のゲームで、GENERTECはどのように昆明機床の「借金」を「返済」するのは、まだ確実なソリューションが無い。


「庖丁」(料理人)がいなくなったら、どうやって「解牛」するのか?

中国に於けるハイエンド工作機械の需要の増加は製造業のモデルチェンジとグレードアップの推進だけではなく、曲面加工に使用しなければならないハードな要素以外に、5軸リンケージ技術の普及とコストの低減はハイエンド工作機械の普及率を高めるもう一つの重要な要素である。

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(データ出所:MIRDATABANK

五軸を代表とするハイエンドCNC工作機械の分野で、現在科徳数控のような民営企業は多く登場したが、内資ハイエンド工作機械の9%の市場シェアにより、我々はまだハイエンド工作機械の国産化代替の适当なソリューションを見つけていないことが証明された。工作機械は「牛」であるが、「庖丁」が欠けている。

中国に於けるハイエンド工作機械製造のためのソリューションを探すことは、現在の急務である。現在、上海の新型コロナ流行により、野菜を買うのが難しく、多くの人が「強制」されて「団長」になるが、共同購入の「団長」になるのは决して容易ではなく、「団長」をよくなる最も速い方法は他人の成功経験を吸収し、回り道をしないことである。ハイエンド工作機械業界も同様である。


他山之石 可以攻玉(他山の石、以って玉を攻むべし)

「古為今用」は昔からあり、「洋為中用」(外国のものを中国の役に立てる)の製造業に於ける創始者は曽国藩である。

洋務運動期間中、曾国藩は人材を募集して先進的な設備を求め、容に委任し、2年間をかけてアメリカPutnam社から最初バッチの工作機械設備を購入し、西洋の現代工作機械工具を中国に導入した。江南機械製造総局は後期中国製造企業の元祖となった。

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(データ出所:公開資料)

一台の設備を見ると、以前は目に見えるもの-工作機械が不足していたが、導入して模倣することで製造していた。現在劣っているのは目に見えないもの-精度、安定性、信頼性、他国の成功で従う理念と方法であり、現在必要なのは参考と革新である。

DMGはドイツに於ける精密ハイエンド工作機械の代表の一社であり、掘削およびタッピングマシンの競争力は日本FANUCBROTHERなどのメーカーに及ばず、中国に於けるそれを調達する会社は点科技以外にない。

某国や某ブランドを崇拝するのは正しい方法ではなく、潤星科技がDMGを参考にして掘削およびタッピングマシンを発展させようとしたが、結局は間違った。

包括的な比較、詳細な思考、及び漸進的な学習によってのみ、他山の石、以って玉を攻むべし。


他山の石の「他」は誰?

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(データ出所:MIRDATABANK

中国に於ける金属切削用工作機械の輸入シェアの半分以上が日本やドイツに独占され、日本は工作機械のコア部品の重要な産出国でもある。日本の技術封鎖を背景に、ドイツの高精密工作機械は中国の宇宙製造業の「救命稻草」(溺れる者はわらをもつかむ)になり、そのハイエンドの数値制御ブランド-HEIDENHAINSiemensはほぼそれぞれ中国ハイエンドに於ける工作機械の市場シェアの半分を占める。

日本の「コア部品」、ドイツの「人材本位」、韓国の「他国の強みを勉強」、スイスの「生産数量は少ないが高精度」、イタリアの「サイズは大きいが高精度」、アメリカの「基礎研究開発」は、それぞれの強みである。

「東数西算」(西部地区でデータ処理センターを建設し、東部地区の経済活動で生まれたデータとそれに対する需要を西部地区で処理するプロジェクト)や「南水北調」(南方地域の水を北方地域に送り慢性的な水不足を解消する)ができ、「他国の強み」を学ぶこともできる。


日本-まず停滞した20年間を見る

機械製品は沢山の種類の部品で構成されており、その中のいずれかの重要な部品に故障が発生すると、機械全体に大きな影響を与える可能性がある。工作機械の競争は産業チェーンの競争というより、川上の「隠れたチャンピオン」たちの競争といった方が適切である。

米国と日本が「プラザ合意」を締結した後、日本の経済発展は20年間停滞した。この20年の間、日本の製造業は絶えず「モデルチェンジとグレードアップ」、「技術の向上」し、ハイテク、ハイエンド製品とハイエンド部品へ発展し、最も早いグループの「隠れたチャンピオン」を育成した。米国でさえ多く(軍用を含む)のハイエンド部品、ハイエンド材料を日本から輸入しなければならない。

逆に中国を見ると、機能部品の発展が遅れている状況はあまり変わっていないようで、ボールねじやガイドレール、電気スピンドルなどは主に日本から輸入する。

川上産業チェーンから着手し、「隠れたチャンピオン」を育成する。企業それぞれは自分の事業を深堀するなら、多くの企業のカバーする範囲が広くなる。

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(データ出所:MIRDATABANK

TIPS:中国で市場シェアが最も高い工作機械の日系企業のMazak社は、2021年によく発展し、半年足らずで通年の販売任務を完了し、通年の業績は倍増した。


ドイツ-「ライン型資本主義」を見る

フランスの経済学者Michel Albertは、ライン流域の西欧諸国、主にドイツが行っている市場経済モデルを「ライン型資本主義」と呼ぶ。ライン型資本主義は明らかに「人間本位」の価値観を持っている。

工作機械業界では、どんなに中核的な部品競争であっても、最終的には人材競争である。ドイツは、「人材本位」モデルの元祖である。

ドイツの工作機械といえば、「厳格な製造」というのが第一印象であり、厳格の背後には基礎人材が支えている。これはドイツのデュアルトラック教育のおかげである。デュアルトラックは簡単に言えば二つの道であり、一つは大学であり、もう一つは職業学校の道であり、中国現在の短期大学に似ている。最大の違いは、職業学校が劣っているわけではないことである。

中国では人材の育成と偏見の是正は一朝一夕ではなく、ドイツの労働者層は高い賃金をもらっており、ドイツの中上層階級に属している。中国の「大学院生は探しやすく、良い労働者は求めにくい」現状は早急に変える必要がある。

「研究開発人材を重視し、人間本位」。曾国藩の湖南軍は中国近代史上で最も早い「高薪養廉」(汚職や腐敗を防ぐために高い賃金を与える)メカニズムを実行した。高給で「清廉」になることができるかどうかは分からないが、高給で「研究開発人材」を育成することができるのは確かである。

 

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(データ出所:MIRDATABANK

TIPS:工作機械分野に於いて、ドイツ企業のDMGを知る人が少なく、2021年には「平湖五軸工場の新築」イベントがホットな話題になった。現時点、平湖五軸工場は建設中で、2023年の春に生産開始し、DMU50/75/95の三つの小型五軸モデルを生産する見込み。


韓国-工作機械業界の「上位企業三社」

韓国で最も誇らしい工作機械業界の「上位企業三社」は、DoosanHYUNDAI WIASamsungである。「上位企業三社」の韓国での集中度が30%以上に達したことも驚くことである。

ヨーロッパの工作機械に比べ、韓国の工作機械はコスパが高く、技術差が小さくなっているのが特徴である。これは主に韓国の工作機械が他国の強みを勉強し、敢えて考察して勇敢に実践し、隣接する日本の強みやヨーロッパに於ける工作機械の先進理念を勉強したためである。

中国では従来から実践研究が不足しており、書物内の知識を勉強するだけで、参考文献を引用し、徐霞客みたいな人が少ない。

「他国の強みを勉強」真面目に仕事し、敢えて質問し、更に仕事を良くする勇気と精神を持つ。

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(データ出所:MIRDATABANK)

TIPS: Doosan 2021年にDitial Otomoteから2.4億ウォンの金額で買収された。最近Doosanは「動向が頻繁」で、新品を続々と発表し、製品は縦型マシンリングセンター、ガントリー型マシンニングセンター、横型マシニングセンター、CNC精密自動旋盤に関わっている。


スイス-芸術製品について

スイス:我々はドイツ製より少し高いが、より正確である。冗談のような話であるが、スイス製の特徴を側面から反映されている。

スイスの時計とセイバーは精密の代名詞であり、工作機械業界でも同様である。洗練され、繰り返し彫刻し、より小さなスペースで、精密製造をより精密に、より小さく、多機能化するのがスイス人の強みである。

スイス工作機械の強さは、まさに二、三の特定または業界セグメントに集中して深堀したためであるが、中国に於ける多くの工作機械会社は、小型で精密が優れた工作機械を作るための鍵であることを忘れ、規模化と多様化を過度に追求する。

「精密への磨きを重視」急いで成功するのではなく、顧客のニーズと問題点をよく理解する。

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(データ出所:MIRDATABANK

TIPS:GF集団には3つの事業部(パイプ、精密鋳造、工作機械)があり、工作機械事業部にはAgieCharmilles(電気加工)Mikron (マシニングセンター)2つの機械加工ブランドがあり、マシニングセンターは常州工場で生産する。


イタリア-もう一つの座標である「大型工作機械」に直面

パスタの起源地は必ずしもイタリアにあるとは限らないが、大型工作機械の強国はイタリア以外ではない。

人間は体が大きいと動きにくそうで、大型工作機械は当然精度が低いことを連想するが、イタリアはその逆である。主軸回転速度を見ると、中国は主に8001500r/minに達した時、イタリアの先進レベルは最大30004000r/minにまで発展した。

我々がよく知っている上場企業-海天精工、台群精機等の主要事業は全て、広く使用されている汎用工作機械にあり、大型工作機械は瀋陽集団昆明機床股份有限公司、武漢重型機床集団有限公司などに支えられているが、最近の発展があまりよくない。資本は利益を追求し、利益がなければ、資本が当然不足する。

「大型工作機械への関心と投入の強化」。汎用工作機械に依存して大きく、強くなるだけでなく、大型工作機械は国を業界をリードする地位に導くこともできる。

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(データ出所:MIRDATABANK

TIPS:上海のPAMAの組立工場では小型ボーリングおよびフライス盤しか生産できず、大型工作機械は全てイタリアから輸入されている。


アメリカ-最後に、誇り高い基礎科学研究の強みを見る

ヨーロッパに比べてアメリカは先端的な工作機械技術が不足すると考えている人が少なくない。然し、アメリカは基礎研究開発を非常に重視しており、CNC工作機械の根源はアメリカにあり、アメリカが最初のCNC工作機械を率先して開発したことからも明らかである。アメリカの基礎科学研究が長期的にリードを維持しているのは、政府が積極的に指導し、十分な経費を提供していることと不可分の関係がある。

かつてアメリカは科学研究を重視し、アプリケーションを軽視し、工作機械の生産速度が鈍化した為、日本に追い越されたが、幸いにも偏差を適時に是正した。

基礎技術があれば、製造レベルの偏差は容易に是正することができる。基礎技術が不足していると、他人に支配され、短期的には追い越すことが難しい。これはいわゆる「基礎がしっかりしておらず、発展は安定ではない」というものである。

「基礎技術の開発に注力」そうであることを知るだけでなく、その理由も知っていなければならない。

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(データ出所:MIRDATABANK)

TIPS: HaasHARDINGEの工作機械は同業界に於ける企業の中で認可度が比較的高い。カリフォルニア州にある本社工場は「Haasを使用してHaasを製造」。中国国内に於ける工作機械のホスト工場、例えば海天精工、紐威、海德曼は自分の金属切削用工作機械を生産するためにHARDINGEの研削盤を購入した。


工作機械業界の「マルクス主義」を導入し、金属切削用工作機械の「中国の特色ある社会主義の道」を模索

ドイツを研究するにせよ、日本を観察するにせよ、最終的には中国の歴史、文化、価値観と結びつけなければならない。結局のところ、社会環境、歴史文化、外部環境圧力及び企業発展段階によって、企業の適用するリーダーシップモデルは異なる。

商業競争は戦場のようなものであり、よく準備しないと往々にして成功の彼岸に達することができず、我々は事前に「敵」の予測に判断する必要がある。我々は努力したことがないわけではなく、心を落ち着かせて外国の技術と類似の製品を研究した時、外国の同類の製品は値下げして価格競争を始め、中国企業の研究開発費を無駄にした為、どのくらいの企業が堅持できるのか?これは本当に「道は長く険しい」ことを証明した。

然し、「マルクス主義」は「無政府主義」を打ち負かし、ミサイルが作られ、原子力潜水艦も作られ、工作機械界の「李大」、「銭学森」、「黄旭華」も常に中国の工作機械に最適な道を模索することができる。