業界観測

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第1四半期産業用ロボットの販売台数は予想を下回り、新型コロナの影響が明らかに

MIR DATABANKのデータによると、2022年第1四半期中国産業用ロボットの出荷台数は65749台に達し、昨年同期に比べて20.5%の成長を示した。


 

2022年の始めに、疫病が繰り返して発生し、メーカーのサプライチェーンと生産輸送効率が明らかに低下したほか、チップ不足の問題がまだ好転していないこと、コモディティ商品の値上がり、地政学等は、いずれも製造業の需給にマイナスの影響を与えた。中国の産業用ロボット市場は、内部・外部の圧力に直面していたにもかかわらず、依然として成長した。MIR DATABANKのデータによると、2022年第1四半期中国産業用ロボットの出荷台数は65749台に達し、昨年同期に比べて20.5%の成長を示した。

2019Q1-2022Q1中国産業用ロボット四半期別の出荷台数(台)

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(データ出所:MIR DATABANK)

*出荷台数の計算には次の製品が含まれる:6-axis≦20kg6-axis>20kgSCARACobotsDelta

1四半期の市場急成長は、実はすでに見えていた。産業用ロボット市場の需要は2020年下半期から勢いよく回復したが、2021年下半期にはコモディティ商品、原材料、人件費、輸送等のコストが引き続き上昇し、チップ、減速機等の主要ロボット部品の供給が緊張した為、一部ロボットメーカーの2021年下半期の納期が大幅に延長され、引き渡しが遅れていた。その為、2022年第1四半期には多くのロボットメーカーの受注は十分であり、前年同期を大きく上回った。出荷の大部分が昨年の第3~4四半期に受注した。また、1-2月産業用ロボット全体の川下需要は多く、市場は高い成長態勢を示した。しかし、3月に入ってから、疫病の市場への影響が初めて現れ、供給と川下需要は同時に緊張し、市場の成長は鈍化した。全体的に見ると、第1四半期市場の成長率は弊社が2021年末に予想した25%を少し下回った。

 

1四半期産業用ロボットの出荷が急増、市場の差異化が明らかに

 

業界の需要を見ると、新エネルギー自動車、リチウム電池、医療、半導体、物流等の先進技術業界の需要は依然として旺盛であった。しかし、3C、一般工業(家電、金属加工、食品飲料等)は、消費不振、コモディティ商品の値上がり、生産と輸送が抑制され、輸出の減少等から受けた影響が大きく、需要が弱まった。

2021-2022Q1産業用ロボットの主要川下産業出荷は前年同期比伸び率

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(データ出所:MIR DATABANK

MIR DATABANKのデータによると、2021年の自動車業界の産業用ロボット出荷台数は約6万台(自動車完成車、自動車部品、自動車電子を含む)であり、このうち新エネルギー自動車が大半を占め、そして新エネルギー車のシェアは年々上昇している。2022年第1四半期中国の新エネルギー自動車の生産販売台数は前年同期に比べて平均1.4倍増加し、増加幅は大きく、>20 kg 6-axisの新エネルギー自動車分野での使用は大幅に増加した。

2021年の動力電池業界に於ける産業用ロボットの出荷台数が全体に占める割合は6%以下であり、将来の成長可能性は高く、MIR睿工業は2021-2025年の複合成長率を約50%であると予想している。第1四半期には、市場の需要と供給が旺盛である為、動力電池メーカーの生産能力は拡大し続け、SCARA及び6-axisの電池セル組立、モジュール&PACKプロセスセクションでの使用需要が増加した。

中国は現在すでに最大の半導体市場であり、2022年に入ってから、インテル、台積電、聯電、中芯国際等の半導体メーカーが次々と生産拡大計画を発表した。半導体業界では、シリコンウウェハーやウェハー製造、パッケージテストプロセスにおいて、作業や資材の輸送に産業用ロボットを大量に使用し始めた。

疫病に牽引され、医療機器、医薬生産、医療消耗品等の医療関連分野の産業用ロボットの使用が増えている。このうち、PCR検査、鼻/咽頭スワブの生産、抗原キットの組み立て、消毒・殺菌防護用品の生産、ワクチンの調製等により医療関連需要が急増し、SCARACobots等の使用を牽引した。疫病の状況から見ると、この傾向は第二四半期まで続く可能性がある。

 

製品構成を見ると、第1四半期>20kg 6-axis、SCARA、Cobotsの出荷が好調であったが、≤20kg 6-axisやDeltaは予想を下回った。

2019Q1-2022Q1産業用ロボット各製品出荷台数の前年比成長率/%

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(データ出所:MIR Databank

>20 kg 6-axisは新エネルギー自動車、動力電池等の分野での使用が増加し、第1四半期出荷台数の前年同期比成長率は30%を超えた。

SCARAは主にリチウム電池等の業界の需要と疫病に牽引され、医療関連分野で大幅に増加した。

Cobotsは自動車部品や自動車電子、半導体、化学製品等の工業分野で好調していたほか、飲食、教育、医療健康、電力、新しい小売等の非工業市場で安定した出荷を続けていた。

≤20 kg 6-axisは、電子業界や一般産業投資、輸出の伸び悩み等の影響を受け、第1四半期の成長率は安定していた。

一方、Deltaロボットは食品・飲料や日常品分野等で多く使用されており、第1四半期は消費低迷の影響で前年同期比でマイナスとなった。

 

値上げの波に影響され、産業用ロボットメーカーは相次いで値上げした

 

2021年には産業用ロボットの市場価格が高騰し、2022年の第1四半期に入ってさらに勢いを増やした。MIR睿工業の予想によると、今回の値上げはすべての顧客を対象とした無差別な値上げではなく、総括して言えば外資メーカーの値上げ幅が通常大きく、国産メーカーのうちでは主に大手メーカーが値上げした。値上げの問題を検討する前に、市場全体の背景を理解する必要がある。

なぜ値上げしたのか。

産業用ロボット製品の価格は、コストと需給関係の影響を受ける。コスト面では、第1四半期の原材料費や輸送費の高騰、メーカーの操業停止や人件費の増加、関税、貿易戦等により、ロボットの製造・販売コストが大幅に増加した。需給の面では、第1四半期の川下は疫病の影響を受けたにもかかわらず、全体的な需要は依然として多かった。ロシア・ウクライナ戦争および疫病等はさらに需給関係のアンバランスを激化させ、受注が余ったが在庫が不足することは市場の主要な矛盾となった。メーカーの値上げは主にサプライチェーンのコスト圧力を緩和する為である。そして近年、内資メーカーは市場を先取りする為に、往々にして急進的な価格策略を採用する。今回の値上げもその利益水準を改善するのに有利である。

どのメーカーがどのように値上げしているのか。

2021年、外資系メーカーはすでに値上げ戦略を取った。その中でABB、KUKA等の欧米系メーカーは大きなサプライチェーンの圧力に直面し、率先して値上げした。2022年に入って外資系メーカーの価格は引き続き上昇している。国内メーカーに目を向けると、2022年第1四半期にInovanceは公告を発表し、全シリーズの産業用ロボット製品に対して価格調整を行い、価格は約5%-8%上昇し、しかもすでに2022年4月15日から発効し、国産ロボットの価格上昇の第一弾を打った。その後、Estun、STEP等も相次いで値上げをした。一部の国産メーカーは自らコストの圧力に対抗し、引き続き大量生産して市場を先取りしている。

なぜ大手国産メーカーが先に値上げしたのか。MIR睿工業は、InovanceEstun等の大手メーカーがすでに一定の市場シェアと市場認知度を獲得したが、この過程においてもずっと巨大な利益圧力を受けていたので、市場値上げの背景とすでに強い発言権を獲得した下で、率先して値上げの行動を取ったと考えている。注目すべきのは、ロボットメーカー値上げは無差別な値上げではなく、通常、大口顧客に対しては値上げせず、小口顧客に対しては値上げをする。ロボットメーカーとエンドユーザーとの間の対抗と考えるのも良いだろう。

値上げは諸刃の剣。

値上げがメーカーに与える有利な影響は、利益状況を改善し、特に国産ロボットメーカーにとっては、業界の製品価格と利益水準を合理的な範囲に戻すことができることである。しかしその一方で、国産ロボットメーカーの値上げは自社の価格競争の優位性を弱める可能性があるが、納期や現地の技術サービスの優位性を発揮することで、価格上昇の影響を相殺することができる。現在の市場環境では、値上げは国産ロボットメーカーにとってデメリットよりもメリットの方が大きい。外資系メーカーにとって、四大メーカーの値上げと品薄は他の外資系メーカーに市場機会を創出し、新たな情勢の下で産業用ロボットメーカーの市場シェアに多少の変化が生じる可能性がある。

その一方、値上げの市場影響を検証するにはまだ時間が必要であり、コストに敏感な中小メーカーの設備改造がしばらく遅れる可能性がある。

 

不安定な第一四半期が過ぎて、2022年の二四半期と通年の市場はどうなるのか。

 

MIR 睿工業は、第2四半期の市場が前年同期に比べて下落する可能性があると予想している。国内の疫病が完全に抑制されていない状況では、第二四半期の市場には多数の懸念が存在する。

需給は依然として疫病の影響を受ける。現在、外資系ロボットメーカーは新エネルギー自動車やリチウム電池等の需要に牽引されており、受注は十分であるが、深刻な欠品状況に直面しており、短期間では改善されない。内資系のロボットメーカーは、納期が安定しているものの、一般工業等への投資が鈍化していることによる影響を受け、第2四半期の受注は伸び悩んでいる。

過去2年間、中国は疫病を効果的に抑制した為、多くの海外受注を受けた。しかし、現在、海外疫病は徐々に安定し、生産生活も回復しているが、中国は疫病の深刻影響を受け、生産と輸送が妨げられており、この前の海外の疫病が中国にもたらした輸出チャンスは消えつつある。特にベトナムをはじめとする東南アジア諸国は、中国に隣接している位置、安価な労働力と便利な海上交通条件を持っている為、軽工業分野で中国メーカーと激しく競争しており、これまで中国に流れていた受注が他の国に流れた。

今回の疫病は、中国一部制造メーカーの海外移転を加速する可能性がある。

●2021年第2四半期の市場基数は大きかった為、2022年同期の市場成長が高くない。

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(データ出所:MIR DATABANK

中央と各地域政府も一連の疫病対応と景気刺激措置を打ち出し、生産生活をできるだけ早く回復させている。疫病は市場需要の増加を遅らせる。もし疫病が5、6月に有効に抑制されれば、第3四半期に市場は回復し成長する。2020年初頭の疫病状況を類推すると、MIR睿工業は2022下半期に市場が回復を迎え、2022年通年の産業用ロボット市場の成長率は約15%になると楽観的に見ている。

短期的に見ると、疫病発生情況の安定に伴い、2021年の第3四半期以来の炭素排出減少圧力下で一部の製造業の制限された拡張需要は2022年に開放される見込みである。半導体、新エネルギー関連業界、物流等の分野の生産能力は引き続き拡張され、2022年の市場成長を牽引する。一般工業分野等の従来型市場も続々と回復し、設備の増設・改造需要をもたらす。

中・長期的に見ると、疫病は製造メーカーの自動化改造に対する需要と意欲を強化する。2021年末の《"第14次五カ年計画"ロボット産業発展計画》の発布、"専精特新(「専門化・精密化・特徴化・斬新化」という4つの優れた特徴を持つ企業のことだ)"政策による先進的製造分野の中小メーカーの発展に対する激励、人口構造及び雇用コスト等の促進、スマート製造の背景での製造業のレベルアップの要求、産業用ロボット製品の使いやすさ、スマート化及び配置効率の向上、資本市場の牽引等はすべて産業用ロボット市場の安定した成長を推進した。

近年産業用ロボット全体の基数が大きい為、今後業界の成長率はある程度鈍化する可能性があるが、政策から見ても、需要から見ても、中国は製造業が「大から強」へ転換する昇級期にあり、そしてトップレベルに遠く及ばない為、産業用ロボット市場今後数年の成長可能性は大きい。