業界観測

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フォトリソグラフィ装置だけに注目するのはやめなさい!

しかし、数年の発展を経て、中国の案はフォトリソグラフィ装置を一挙に完成させることができないようで、「カーブで追い越す」ことは私たちの片思いの美しい幻想のようであることに気がついた。



01.ウェハー製造プロセスに於ける「有名ではない物」

 

2018年に米国が対中貿易戦争を開始した際、多くの人は初めて「フォトリソグラフィ装置」という言葉を耳にした。一時、フォトリソグラフィ装置は非常に人気を集め、この分野でどの段階まで発展し、差はどれぐらいなのか、みんなが注目していた。国も一連のストラングルホールドの技術的難題を解決しなければならないと声を上げており、フォトリソグラフィ装置も明らかに登場した。しかし、数年の発展を経て、中国の案はフォトリソグラフィ装置を一挙に完成させることができないようで、「カーブで追い越す」ことは私たちの片思いの美しい幻想のようであることに気がついた。 

 

単一の段階で「カーブ追い越し」ができない以上、ウェハー製造プロセス全体で「多業界で急成長」が可能ではないか。現在、多くの中国企業がフォトリソグラフィ以外のプロセスに焦点を合わせ、国産フォトリソグラフィ装置と共同で成長している。もし、業界の急成長の東風に乗じて、キーポイント技術のブレークスルーを実現することができれば、中国半導体業界の成長の見通しは極めて明るい。

 

フォトリソグラフィ装置、エッチング装置、薄膜堆積装置は従来からウエーハ製造分野の3つの主要装置である。多くの人はフォトリソグラフィ装置を知っており、半数の人はエッチング装置を知っているかもしれないが、業界関係者以外は薄膜堆積装置を殆ど知らない。これはそれが重要ではないということではなく、みんながフォトリソグラフィ装置に注目している現状では、人々は身近の物事や出来事を殆ど見られなく、国産薄膜堆積装置は黙々と成長する有名ではない物になる。

 

フォトリソグラフィープロセスを壁に落書きすることに例えると、薄膜堆積とは「壁を平らにして、白くする」ことであり、実際に操作すると化学的或いは物理的変化を利用して原子、イオン、活性基反応性基を形成して基板表面に吸着させ、化学変化或いは凝集を起こし、徐々に数nmから数μm迄の厚さの金属、媒体、或いは半導体材料の薄膜を形成する。主な設備は化学気相成長装置(CVD)、物理気相成長装置(PVD)、原子層成長装置(ALD)、エピタキシャル炉等である。

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(情報源:MIR DATABANK

 

02.急成長の市場

 

半導体業界に於いて「ムーアの法則」が依然として作用を発揮するにつれて、チップに必要な薄膜層の数はますます多くなり、薄膜堆積プロセスのステップも全体のプロセスに於ける繰り返し回数も絶えず増加し、薄膜堆積装置に対する需要の成長率は大きい。MIR DATABANKのデータによると、2021年中国の半導体薄膜堆積装置の市場規模(主にCVDALDPVDを含む)は280.2億元に達し、成長率は約32%に達する。今後2年間のウェハー工場の持続的な生産拡大と製造工程の絶え間ない高度化は依然として大量の薄膜堆積装置の需要をもたらし、市場規模の成長率は依然として大きく、市場空間は広いと予想される。

 

2020年中国半導体薄膜堆積装置市場規模(M RMB)

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(データ出所:MIR DATABANK

 

需要があることに加えて、ウェハー製造市場全体で有名ではないことから、薄膜堆積装置は中国の国内メーカーにとって「多業界で急成長」の最高の切り口の一つであることは間違いない。

 

 

03.外資の大手企業は多く、内資メーカーがブレークスルーを実現する道は凸凹して長い

 

内資メーカーの薄膜堆積装置の戦略は全てのプロセス技術の面でひたすら追随するのではなく、ある一つのポイントに集中し、更に自社の成長に適した技術ルートを選択し、一つのポイントに集中して攻略する。この戦略は現在中国の国内の薄膜堆積装置市場構造と深く関わっている。中国の薄膜堆積装置市場の大部分のシェアは依然としてアメリカ及び日韓メーカーに占められており、最大規模のCVD製品群市場に於いて、応用材料(AMAT)、汎林半導体(LAM)、東京電子(TEL)等多くの大手企業があり、国産メーカーの中では、沈陽拓荆、北方華創が外資メーカーから僅かな市場シェアを奪い取った。

2020年中国半導体CVD市場シェア(M RMB)

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(データ出所:MIR DATABANK

PVD市場は外資の応用材料(AMAT)が約60%のシェアを占める独占の局面を示している。中国の国産上位メーカーは主に北方華創で、同社のexiTin H430 TiN金属ハードマスクPVDは中国初の40nm以下の製造プロセスに対応した12インチ金属ハードマスク設備で、現在28nmプロセスの需要に対応している。

 

技術は国産メーカーのブレークスルーには避けられない障害物であるに決まっている。瀋陽拓荊、北方華創等の国産薄膜堆積装置メーカーは近年非常に急成長しており、既に中国の国内主流ウェハー工場の受注を獲得し、順調に引き渡したが、総合的に見ると、中国の半導体薄膜堆積装置の国産化率はまだ10%に満たず、まだ成長の余地が大きい。

 

CVDの技術開発の道が長く、発展技術の分枝が多く、現在PECVDはいくつかの技術タイプの中で、市場規模が最も大きい設備タイプである。また、ALDはCVD技術の伸びとして、そのプロセスは自己成長制限の特徴があり、薄膜の厚さを正確に制御することができ、製造された薄膜は均一な厚さと優れた整合性を有する等の特徴がある為、28nm以下のキーサイズを縮小した二重露光プロセスにますます広く使用されており、今後のウェハー製造発展の大きなトレンドとなっている。この分野では、国産メーカーの瀋陽拓荊、北方華創はSACVD、PECVD、ALD、LPCVD、APPVD等の技術に於いて少しブレークスルーし、より先進的な設備を研究開発しているが、現在AMAT等の外資メーカーと比べて、まだ差がある。

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(データ出所:MIR睿工業が公開資料に基づいて整理)

PVDの技術開発は主に金属材料と対応寸法の変化に現れている:金属材料は初期のAlインターコネクトからCuインターコネクト、タングステン材料、コバルト材料等、窒化チタン(TiN)を材料とするハードマスクPVDプロセスへと成長した。サイズはムーアの法則の論理に従ってマイクロ化、密集化、垂直インターコネクトの方向に進んでいる。一般的に、32nm以下のプロセスでは、金属インターコネクト線の距離が近すぎることによる寄生容量効果を処理する為に、電線の間の誘電体材料として窒化チタン(TiN)が一般的に使用されている。PVD分野で国産メーカーの北方華創はAlインターコネクトTiNハードマスクを使用し、28nmチップ製造プロセスで既にブレークスルーし、そして更に先進的な設備を研究開発している。しかし、現在、AMATのような外資系メーカーのPVD装置は5nmチップ製造に対応できるようになっており、その差は小さくないことが分かる。

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 (データ出所:MIR睿工業が公開資料に基づいて整理)

 

04.国家ブランド企業は大いにやりがいがある

 

現在見ると、CVD市場は国産メーカーの肝心な技術のブレークスルーを実現する見込みがある。なぜなら、この市場の集中度は相対的に高くなく、個々の外資メーカーの独占的地位は明らかではないからである。2022年4月20日に瀋陽拓荊は「科創板」で上場され、2020年にCVD市場でのシェアは3.1%に達した。これはCVD分野で外資メーカーの独占の局面が既に国産メーカーに打破されたことを示した。

 

瀋陽拓荊は国有企業の血脈があり、2010年4月に中国科学院瀋陽科学計器股份有限公司と孫麗杰の投資により設立された。中国科学院の直属システムの分枝である為、設立されてから、瀋陽拓荊の骨には研究開発の血が流れ、「90-65nmプラズマ増強化学気相成長設備の研究開発とアプリケーション」、「1x nm 3D NAND PECVDの研究開発及び産業化」等の四つの国家の重要科学技術の特別プロジェクト/課題を担当した。研究開発の過程で、半導体製造に於けるナノメートルレベルの厚さの薄膜の均一性、薄膜表面の粒子数の少なさ、迅速な成膜、設備の生産能力の安定、高速度等の重要な難題を重点的に克服し、解決した。

瀋陽拓荊はPECVDを製品の核心として、既に180nm~14nmロジックチップ、19/17nm DRAM及び64/128層FLASH製造プロセスの需要に対応し、その主要事業の収益の中で、割合は90%を超えた。ALD製品はそのPECVDコア技術の基礎の上で革新設計を行い、既に55-14nmロジックチップ製造プロセスの需要に対応し、そしてThermal ALD製品の研究開発を行っている。SACVD製品の面では、現在、瀋陽拓荊は中国国内で唯一産業化アプリケーションが可能な企業であり、12インチ40/28nmと8インチ90nm以上のロジックチップ製造プロセスの需要に対応している。

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 (情報源:瀋陽拓荊目論見書)

2020年瀋陽拓荊の主要事業収益-製品別(M RMB)

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(情報源:瀋陽拓荊目論見書、MIR睿工業の整理)

 

現在、産業化の過程に於いても国産メーカーの中で上位を占めており、同社の製品は中国国内の一部の半導体集積回路ウェハーメーカーの認可を得ており、中国国内の代表的な顧客には以下のものが含まれる:中芯国際、華虹集団、長江存儲、積塔半導体、浙江創芯、合肥晶合、粤芯半導体等。

 

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(情報源:瀋陽拓荊目論見書、MIR睿工業の整理)

薄膜堆積装置の分野に於ける代表的なメーカーは拓荊の他、北方華創も国家ブランドの血脈を持つ企業であり、その前身は北京電子控股有限公司が元の国営700工場、706工場、707工場、718工場、797工場、798工場の良質な資産と事業を統合して設立したものである。その主要製品はLPCVD、APPVD等を含み、現在28nm以上のプロセスの需要に対応している。これは、ハイエンド機器の分野に於いて、国有企業の背景を持つ産業・学校・研究機構統合モデルは有効な道である。このモデルは技術人材を非常に重視しており、瀋陽拓荊技術を例にすると、同社の研究開発スタッフは189人で、技術サポートスタッフは129人であり、2種類の技術スタッフの人数が会社の総人数に占める割合は70%を超えており、この割合はテクノロジー主導型半導体設備業界に於いても、かなり高いレベルである。今後、このサーキットで国家ブランドメーカーは引き続き力を入れ、産業・学校・研究機構統合体系に頼って、産業の発展に新鮮な活力を注ぎ込み、推進する産業の国産化にも貢献することが予想される。

 

 

結び

瀋陽拓荊は中微半導体、芯源微電子、盛美半導体、華峰測控等に続き、科創板で上場されたもう一つのブレークスルーした国産メーカーであり、薄膜堆積装置分野に対する資本の期待を十分に見ることができる。これらの会社は半導体デバイスの面で、ある1つ或いは2つのセグメント分野にのみ注目している。AMAT、LAM、TEL、ASM等のような上位外資メーカーが完備した製品群を備えており、半導体製造プロセスの多様なプロセスをカバーする。しかし、産業発展の初期段階に於いて、国産メーカーのこのような専念は技術のブレークスルーをより早く実現し、国産化率の高まりをより早く実現する重要な発展モデルであると筆者は考えている。