業界観測

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上海第一陣「復工復産」 (職場復帰・生産再開)企業リスト分析!

本文は重点的に業界、地区の角度から上海復工復産第一陣重点企業「ホワイトリスト」を分析、ご参考になれば幸いです。



2022年4月14日、MIR DATABANKが「上海の新型コロナを背景に、行き詰まった製造業」という文章を発表し、今回の疫病は上海の製造業企業に大きな打撃を与えただけでなく、中国の製造業の発展にも深刻な影響を及ぼしたことがわかった。


工業情報化部は最近、上海ワーキンググループを派遣し、重点工業企業の安定生産と復工復産を推進し、産業チェーンサプライチェーンの円滑な稼働を保障し、資源を集中して集積回路、自動車製造、設備製造、バイオ医薬等の重点業界666社の重点企業の復工復産を優先的に保障した。


もし上海のこの666社の重点企業が秩序立って復工復産を行うことができれば、これは疫病が全国の製造業、川上・川下産業チェーンに与える悪影響を大きく緩和し、疫病がもたらす悪影響を低減することが期待される。本文は重点的に業界、地区の角度から上海復工復産第一陣重点企業「ホワイトリスト」を分析、ご参考になれば幸いです。

 

1.   自動車、バイオ医薬品と医療、半導体業界の企業数が最も多い

 

上海復工復産の第一陣重点企業の「ホワイトリスト」は業界別に見ると、多岐にわたる。そのうち、自動車業界の企業数が最も多く、次いでバイオ医薬と医療、半導体業界だった。

 

第一陣重点企業「ホワイトリスト」-業界別

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(データ出所:公開資料によりMIR睿工業が整理する)

*自動車:自動車OEM、自動車部品等。バイオ医薬/医療:製薬企業、医療機器生産企業、保護用品生産企業、PCR検査機関等。半導体:半導体設備、半導体材料、ウェハー工場、パッケージ・テスト工場等。電力:発電所、電線ケーブル、配電製品等。その他:3C、鉄鋼、石油化学、建設機械、物流、タバコ、自動化設備等の業界。

 

国家統計局の2020年のデータによると、上海の自動車と半導体業界は全国産業の10分の1のシェアを占めており、この2大産業の復工復産は中国の自動車と半導体の発展にとって極めて重要である。

 

今回の復工復産企業リストのうち、バイオ医薬/医療業界の企業数が占める割合は30%に達した。上海のバイオ医薬産業は発達しており、上海の戦略的新興産業の重要な柱である。『上海市バイオ医薬産業発展「第14次五ヵ年」計画』によると、2020年上海全市のバイオ医薬産業規模は6000億元に達し、その中の製造業生産高は1416.6億元であり、2020年全市のバイオ医薬規模以上の工業企業は409社であった。また、防疫物資やPCR検査に関連する医療業界の企業も、今回の重点復工復産企業である。

 

2.   浦東新区、嘉定区の企業数が最も多い

上海復工復産第一陣重点企業「ホワイトリスト」は地域別に見ると、企業数が100社を超える地区は浦東新区と嘉定区である。

第一陣重点企業「ホワイトリスト」-地区別

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(データ出所:公開資料によりMIR睿工業が整理する)

*電力企業の傘下の発電所は多くの地区に分布している。例えば、上海電力股份有限公司の傘下の発電所は、金山区、浦東新区、閔行区、崇明区、宝山区にかかわっている。

 

上海各区の2021GDPランキングを見ると、浦東新区のGDP1.5兆元を突破し、第一位にランキングしている。

l  浦東新区にある自動車工場には、テスラ上海スーパー工場、上汽GM汽車キャデラック金橋工場、上汽GM汽車金橋南・北工場、上海匯衆汽車製造公司乗用車アクセル工場、上海汽車集団乗用車支社臨港工場等が含まれる。

l  日月光、安集微電子、中微半導体(設備)、上海華力、格羅方徳(Global Foundries)等の半導体企業も浦東新区に工場がある。

l  浦東新区の「張江薬谷」(張江バイオ医薬拠点)には既に1400社以上のバイオ医薬革新主体と7万人近くのバイオ医薬従業員が集まっており、復星凱特、君実生物、基石薬業、和黄医薬、上海医薬、復宏漢霖等の著名な製薬企業が含まれる。

 

上海各区の2020年ハイテク企業数ランキングを見ると、嘉定のハイテク企業は既に1800社を超え、浦東に次いで全市で第2位となっている。

l  嘉定区に位置する自動車工場には、上汽大衆汽車有限公司第一工場、上汽大衆汽車有限公司第二工場、上汽大衆汽車有限公司第三工場、上汽大衆汽車有限公司新能源汽車支社等が含まれる。

l  産業集団、利揚芯片、聯影微電子、邁柯博等の半導体企業も嘉定区に工場がある。

 

3.   厳格に要求に基づいて復工復産を行わなければならない

 

今回の復工復産は100%の正常な生産ではなく、一定の手順を踏む必要がある。

 

企業の復工復産を強力で秩序ある効果的に推進する為に、2022年4月16日、上海市経済情報化委員会が「上海市工業復工復産の疫病防止・制御指導(第一版)」を発表し、産業チェーンの供給安全・安定を保障する為に明確な要求を出した。例えば、企業に公共場所、住所の「二点一線」の管理を実施するよう要求する;企業に全般的な閉鎖管理を実施するよう要求し、異なるグループの従業員の間で無接触のシフト交替を行う;従業員は一日二回の検査を堅持し、朝に抗原検査を行い、夜にPCR検査を行う;疫病防止・制御と安全生産の条件が整わない企業に対しては、復工復産をしてはならない。

企業ごとに状況が異なる為、具体的な復工復産の時期は、疫病の管理状況と自身の準備状況に応じて適時に調整しなければならない。今回に公表された企業リストのうち、一部の企業は閉ループ管理できない場所が多く、従業員の隔離式生産を確保できない為、最終的に復工復産を実行する企業の数はホワイトリストの数より少なくなると予想される。

 

現在、一部の企業も秩序立って復工復産を開始している。

 

40000人以上の従業員を持つ広達上海製造城は、台湾広達グループの製造拠点である。2022年4月16日、広達上海製造城の関係責任者によると、F1工場では500人、F3工場では1500人が秩序立って復工復産を行い、それぞれテスラの部品とアップルのノートパソコンを生産している。「4月22日までに、操業再開できる従業員は6000人に達する見込み」と言われた。


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2022416日 広達上海製造城

 

現在、各業界の供給保証圧力は確かに大きく、各社は生産能力の回復状況を明確にしていないが、操業再開に向けた最初の一歩を踏み出すことが重要であり、作業が始まってから問題を徐々に解決していくしかない。

専門家の中には、「もし今回の「ホワイトリスト」の重点企業が秩序立って復工復産を行って、疫病の繰り返しを背景に操業再開できるなら、上海が模索している復工復産モデルは、上海の第二陣、第三陣の操業再開企業に対して非常に良い参考作用があるだけでなく、全国のその他の工業地域にどのように短時間内にリスクコントロール手段を用いて静的な管理を行い、常態化した疫病を背景に生産進度を保証することができるか等の問題に対して、大いに参考になる」と述べた。