業界観測

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上海の新型コロナを背景に、行き詰まった製造業

では、この状况の下で、上海に於ける大規模な製造工場にどのような影響を与えるのだろうか?



2020年初め武漢で新型コロナが発生して以来、危険は繰り返しずっと存在する。20223月に中国は新しいラウンドの新型コロナの流行期に入り、現在、上海は新規感染者数が大幅に増加し、何日も続けて万人以上が確診され、上海全体は全面的に封鎖されている状態にある。では、この状况の下で、上海に於ける大規模な製造工場にどのような影響を与えるのだろうか?

国家統計局の2020年のデータによると、上海の半導体と自動車業界は全国産業の10分の1のシェアを占め、3C、化学工業、鉄鋼業界も一定の割合を占め、上海新型コロナの流行は上海に位置する製造業のメーカーに深刻な影響を与え、中国の製造業、特に半導体と自動車業界に対しても少なからぬ影響を与えた。本文は今回の新型コロナがこれらの業界に与えた具体的な影響について詳細に分析する。

2020年上海製造業に於ける主要業界の中国での割合状況

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(データ出所:国家統計局)

 

新型コロナは「寒の戻り」で、上海のGDP成長への圧力が高まる

 

新型コロナがしばしば繰り返される状況下で、ロックダウン(封城)はもはやそれほど特殊なことではなく、武漢市、深圳市、西安市はロックダウンしたことがあるが、ロックダウンが経済に与える影響も、決して人騒がせな言論ではない。

2020年最初の衝撃の下で、武漢市は76日間閉鎖され、直接の経済損失は2000-2500億元で、GDPの成長率は大幅に低下し、2019年の全国平均を上回った7.4%から2020年第1四半期の-40.5%まで下がり、年間GDPは前年比4.7%減の15616億元で、2020年に中国で唯一のマイナス成長を遂げた都市である。

同年、フランスは8週間の「外出禁止令」を実施し、直接の経済損失は1200億ユーロである。フィリピンは45日間都市を閉鎖し、経済損失は1万億ペソ(約1400億元)である。日本のロックダウンにより、2020年第2四半期の国内総生産(GDP)は年率で28.1%減少し、2008年の金融危機時の17.8%の減少よりも深刻である。

振り返って見ると、上海は2021年にGDP4.3万億を超え、全国の都市の中で1位になった。今回の上海での3月末のロックダウンは現在まで続いており、生産活動の制限が経済に与える影響は言うまでもなく、上海の2022年上半期の経済運営には少なからぬストレスがある。年初に上海が定めた年間GDP5.5%の成長率目標を達成するには、大きな挑戦に直面することになる。

また、国際市場は中国の今回の新型コロナにも大きな関心を寄せており、海外メディアは上海が中国のGDP成長に重要な役割を果たしていると報道した。今回の新型コロナによって上海の厳格なロックダウンとロシアウクライナ紛争の影響は、中国の2022年の年間GDP成長率を引き下げる。

 

船の渋滞はないが、貨物の輸送は困難

 

上海には世界最大のコンテナ港である上海港があり、毎年完成する対外貿易スループットは全国沿海主要港の5分の1を占める。新型コロナの影響により、上海ではコンテナ貨物の運行も楽観的できない。上海の封鎖は港を閉鎖せず、上海港は24時間運行を維持しており、現在全体的に船便は正常であるが、今回のロックダウンは圧力を全て陸上輸送に傾けることになった。

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上海の封鎖期間中、コンテナトラックの貨物輸送は基本的に「半麻痺状態」にあり、港の労働者やトラック運転手の出入りは以前ほどスムーズではなく、他省の車両は上海に入ることが難しく、入ってきても出て行くことが難しく、貨物輸送の時効が遅れ、全国の輸出貿易に影響を与えた。また、上海地区の物流車両は全国的に管理されており、これは国内市場に於ける上海の製造業企業の発展にも不利な影響を与えた。

2022328日から、江蘇省、浙江省、安徽省の3省に於ける複数の地区の高速出口による上海の車両管理措置が更に厳しくなり、安徽省銅陵市、浙江省諸市、江蘇省鎮江市、丹陽市等からの人が直接引き返しを勧告され、浙江省仙居市は上海からのトラック運転者に対して高速道路を降りた後の直接隔離を実施する。

「今一番大変な問題は物流で、貨物が運べない。」これは上海に於ける多くのメーカーに共通するフィードバックであり、物流が阻害され、最終的な影響は産業チェーン全体に反映された。一般的に緊急事態に直面し、工場は在庫に基づいて短時間の生産を維持することができるが、生産に必要な材料を長期間受け取らないと、最終的には深刻な在庫不足につながり、最終的な結果は依然として生産能力が中止することになる。また、新型コロナによるサプライチェーンの閉塞が受注に与える影響も、当期にとどまらず、今後も続く。

また、輸出が不便なため、多くの受注が海外に移転された。海外の顧客は中国国内メーカーが不安定であると感じる為、東南アジアに於ける他のサプライヤーを探し、他のサプライヤーを見つけた場合、受注が再び中国に移転されることは容易ではない。たとえ後で取り戻すことができても、割合は限られている。

 

ウェハーの閉鎖工場内生産は維持されたが、出荷が妨げられて「致命傷」となった

 

上海は中国第一の経済都市であるだけでなく、中国のハイテク産業が最も密集している地域の一つでもある。

チップの中心都市として、上海は電子受託加工、ウェハー受託加工、パッケージテスト生産の主要都市であり、PEGATRONPWRTSMC、中芯国際、華虹半導体、紫光展鋭、日月光等多くの企業の工場は上海にある。

上海市に於ける集積回路産業の主要企業の分布状況

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(データ出所:MIR DATABANK)

上海で新型コロナが発生して以来、各企業の公開声明によると、TSMC、中芯国際、華虹半導体、日月光、合晶、MA-tek等はいずれも閉鎖生産を実行しており、チップ生産能力の絶え間ない保証に尽力している。然し、ロックダウンの影響により、企業の出荷圧力は必然的に増大しており、これらの企業は配達するトラック運転手が不足し、ウェハーを顧客に届けることができない局面に直面しておりMA-tekは既に受注をロックダウン終了後に続々と納入すると発表した。

情報によると、中芯国際は上海に8インチ工場1箇所と12インチ工場1箇所あり、8インチ工場の月間生産能力は13.5万枚で、12インチ工場の月間生産能力は3500枚である。華虹集団傘下の華虹宏力と上海華力は全部で5箇所のウェハー工場を持っており、8インチ工場の月間生産能力は約18万枚で、12インチ工場の月間生産能力は約7.8万枚である。また、TSMCは上海松江区に1箇所の8インチウェハー工場を持っており、月間生産能力は約6万枚である。

現在世界的な半導体不足の状況に於いて、これらのメーカーの重要性を想像するのは難しいことではなく、出荷が妨げられる状況が続くと、「チップ不足」は更に深刻になる可能性がある。また、上海全体の封鎖を背景に、全ての集積回路企業が周到に手配できるわけではなく、上海の集積回路企業が非常に集中した分布の下で、産業状況は必ず不安定になる。

 

多くの自動車工場が生産を中止し、上海の自動車産業は殆ど停滞

 

上海市が閉鎖管理を実施した後、大手工場のTeslaはそれに応じて生産を中止し、2022328日から4日間、上海工場の生産活動を中止すると発表したが、投稿日まで、上海Teslaのスーパー工場はまだ生産を再開していなかった。

情報によると、Teslaの上海臨港にあるスーパー工場は主に「モデル3」と「モデルY」の生産を手掛けており、同時に中国と欧州の2つの新エネルギー自動車市場に供給している。同社の公式サイトによると、現在、Teslaが中国国内に於ける自動車の納期は20-24週間で、生産中止期間の延長に伴い、Teslaの生産能力が極度に逼迫し、新車の納入期間が再び長くなる可能性があり、サプライチェーンの圧力は言うまでもない。また、Teslaのベルリン工場は既に稼働しており、上海での新型コロナの影響により、中国国内産業の受注が海外に移転する可能性があることにも注意が必要である。

Teslaの生産中止は、今回の上海閉鎖管理の重要な縮図にすぎない。今回の新型コロナは上海に本社を置くSAIC系に与えた影響も小さくなく、SAIC乗用車、SAIC-GMSAIC VOLKSWAGEN等の工場は相次いで生産を削減したり、生産を中止したりした。

SAIC系のほか、NIONETAENOVATEWM Motor等の自動車製造の新たな勢力、Volvoアジア太平洋区、Ford China等も上海に研究開発本部を設置しており、今回の管理措置は各社の最近の生産販売台数に一定の衝撃を与えるに違いない。

上海市自動車製造産業の主要企業の分布状況

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(データ出所:MIR DATABANK)

然し、上海に於ける今回の新型コロナの影響は、自動車メーカーの工場の生産削減・生産中止だけでなく、自動車産業全体の川上・川下サプライヤーにも大きな衝撃を与えた。

不完全な統計によると、ZFAptivBosch等数社の国際自動車供給大手はいずれも上海に工場を設立しており、過去2年間、Tesla工場をめぐり、臨港にもCATLJOYSON ELECTRONICHORIZON100社以上の企業が集まっており、エンジン、ギアボックス、動力電池、自動運転チップ、誘導レーダー等の自動車用ハードウェア分野に関わった。

2022329日、中国国内最大の自動車ワイヤーハーネスサプライヤーであるAptivは上海工場の労働者に在宅を通知しており、上海地域全体に於ける部品サプライヤーの生産中止と物流停滞は大体331日からであり、一部の部品メーカーは受注が失われる可能性があるという不安に陥った。

さらに、部品不足の影響は上海以外の地域の自動車メーカーにも広がっている。関係者によると、自動車メーカーは一般的に部品の在庫が不足しており、他の地域に於ける一部の自動車メーカーは既に生産中止を余儀なくされた。例えば、WM Motorは浙江省温州市と湖北省黄岡市のスマート製造拠点に位置しており、現在、大部分の受注は短期的に納入することができない。

上海の新型コロナの影響で一部の自動車メーカーは生産中止や生産削減を発表

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

半導体チップの不足が続くことによるマイナス影響のように、重要な部品が不足すると、自動車組立工場は一時的に生産中止になる可能性があり、長期的な地域全体のロックダウンは、既に深刻に逼迫しているグローバルサプライチェーンを悪化させる可能性がある。上海の新型コロナが好転しなければ、他の完成車工場の生産数量に与える影響はまた続々と現れる。

 

池魚之殃(災いに巻き込まれる)

 

半導体、自動車等の重点業界を除き、上海の製造業の中で一定の割合を占めている3C電子と化学工業業界も同様に今回の新型コロナで深刻な影響を受けた。3C電子、化学工業メーカーは一時的な生産削減・生産中止を余儀なくされ、末端製品の出荷が妨げられることもよくある。

公開ニュースによると、世界第2位のiPhone受託加工工場であるPEGATRONは、上海と昆山の2箇所の工場に於ける生産活動を中止した。この2箇所の工場はPEGATRONが既に稼働している唯一のiPhone受託加工工場で、生産能力はiPhoneの世界生産能力の2030%を占めた。4月初めにAppleに於けるMacBookの主要工場であるPWRの上海工場の生産中止に於いて、AppleMacBook製品群に大きな影響を与える可能性がある。

工場の生産中止や物流停滞に加え、新型コロナの影響で資本投資意欲が低下している為、2022年に3C業界への投資が激減すると予想される。さらに、工場は生産中止しているが、顧客の受注は撤回されることなく、一旦封鎖が解除されると、各工場は材料を購入して生産を急ぎ、材料の需要と出荷数量が激増し、必然的に新しい混乱の局面が現れる。

上海及び昆山に於ける一部の3C電子及び化学工業企業の新型コロナによる影響状況

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

また、長江デルタの統合を背景に、人材や資源の移動が益々頻繁になり、地域都市群内で相互に波及する現象もしばしば発生している。そのため、上海の新型コロナは都市内の産業チェーンの川上・川下に影響を与えたほか、周辺の省・市にも巨大な入力圧力をもたらし、蘇州市、南通市、嘉興市、寧波市等の製造業の主要都市は新型コロナの予防とコントロールの持続したグレードアップにより、既に地元の一部企業に於ける正常な運行に著しい影響を与えた。

MIR DATABANKには関連工場情報が多く収録されており、MIRは上海に於ける電池や製薬業界の工場分布状況を整理し、上海の新型コロナはこれらのメーカーにも大きな影響を与えると予測する。江蘇省、浙江省等の工場の分布情報は、MIR DATABANK-業界部分に登録してご覧ください。

上海の電池、製薬業界に於ける工場の分布状況

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(データ出所:MIR DATABANK

 

 

最後

 

上海に於ける毎日の確認された新型コロナウイルス感染者数は依然として多く、上海の製造企業全体は生産能力が制限され、出荷が困難になるという状態にある。生産リズムを維持しようと努力しているメーカーもるが、新型コロナの影響は私たち全員が予想外であること認めなければならない。これは上海の製造業にとって重大な試練であり、今は新型コロナが一日も早く収束し、上海の製造企業が早く稼働を再開できることを願っている。