業界観測

数年に亘り、工業分野の仕事で培った経験を通じ、客観的に蓄積した膨大なデータを基に、お客様へ弊社ならではの独自のアドバイスをご提供します。


ホームページ > 業界観測

2022年産業用ロボット市場は本当に下落するのか?

2021年末にMIR睿工業が予測した2022年の産業用ロボット市場全体の伸び率は20%と、2021年の49.5%の急成長に比べると一定の距離があるが、前四半期の市場の推移を見ると、タイトルに書かれた問題に対しては「ない」と肯定的に答える。


 

タイトルに書かれたように、これは全ての業界関係者が非常に関心を持っている問題かもしれない。結局、2021年末の産業用ロボット市場では、2022年の市場成長はあまり楽観視できない等の議論がよく聴かれた。2021年末にMIR睿工業が予測した2022年の産業用ロボット市場全体の伸び率は20%と、2021年の49.5%の急成長に比べると一定の距離があるが、前四半期の市場の推移を見ると、タイトルに書かれた問題に対しては「ない」と肯定的に答える。 

2017-2022年中国産業用ロボットの市場規模と予測

image.png

(データ出所:MIR DATABANK


 

需要は依然として大きい



2022年初めのロシアとウクライナの間の局地的な衝突は全ての人の予想を超え、戦争の勃発は更に人を油断させ、中国内部の新たな疫病も勢いに乗っている。

こうした外部環境への影響は市場の成長にも影響するのが常識だが、MIRが入手した情報によると、一部のメーカーの受注が前年同期を下回ることもあるが、全体として見ると2022年第1四半期の産業用ロボット市場の受注は前年同期に比べて増加傾向にある。

産業用ロボットの上位メーカー4社をはじめとする外資メーカーは、2022年に第一四半期の受注が大幅に増加したことを示し、多くの国産メーカーも同様に第一四半期の受注が著しく増加したことを示している。

ロボット産業チェーン下流のシステムインテグレーター市場の需要も飽和状態であり、疫病の制限を受けて各システムインテグレーターの販売スタッフは外出して直接市場を開拓する機会は明らかに減少したが、新規顧客の自発的な流入による受注の増加を妨げるものではない。

国際情勢は結局好転し、疫病が抑制された後、生産能力も徐々に回復し、グローバルサプライチェーンは結局軌道に戻り、それに伴って市場の需要が更に開拓されることが予想される。

 


需要はどこから来るのか



現在、製造業のアップグレードは業界成長の重点であり、産業用ロボットの代替効果も明らかになっている。各業界の「機械で人間を入れ替え」はほぼ完了しており、下流産業の需要増加は依然として産業用ロボット市場成長の主要な原動力であり、各メーカーの第1四半期の受注増加はこれらの業界のターミナルアプリケーション要求に牽引された。

現時点で見ると、第1四半期の産業用ロボットの市場成長の軌跡はMIRの2021年末の予測と完全に一致している。2022年の産業用ロボット販売台数の重点は新エネルギー車、太陽光発電、リチウム電池、半導体、医薬業界等を主とする先進的技術業界に焦点を当て、全面的な「カーボンニュートラル」を背景に、これらの業界は確実に重点に置かれた。

この他、自動車部品、食品飲料、倉庫保管物流等の業界では、産業用ロボットの仕分け、運搬、パレタイズに対する需要状況は昔と同じだ。

しかし、一般工業では、疫病や国際輸出貿易の落ち込みに加えて、コモディティ価格の上昇が多少影響を与え、キャッシュフローが逼迫し、中小企業では設備の買い替え需要が遅れている。今のところ、この状况はまだしばらく続くだろうが、もしある程度好転したければ、消費市場が明らかに変化してから、一般工業分野は回復するかもしれない。

その為、2022年第1四半期には産業用ロボットの川下にある新興産業の成長が顕著になり、市場の需要が大幅に増加する。

 


受注しても納品することができない



マクロ環境では、全く影響を受けないと言えないが、産業用ロボット市場にとっては、需要側よりも供給側が大きく影響された。

現在の市場状況を見ると、メーカーの受注は多いが品薄が深刻で、その影響は各社の納期にも現れ、一部の特殊製品の納期が36週間にも延びているのは、まだまだ先のことである。

状況がこのようになった大部分の原因は、長く続いた疫病、サプライチェーン危機及び局地戦争により世界的にチップ不足が発生し、チップ系材料の価格も絶えず上昇しており、四半期毎にサプライヤーが値上げしており、最高上昇率は累計で50%を超えているからである。チップの納期は大部分が52週間以上に伸び、最長で80週間以上に伸び、産業用ロボットの生産に必要な安全モジュール、RDCモジュール、教示器等のチップの供給が不足している。

外資系メーカーがチップの不足で大きく足を引っ張られ、生産と販売が困難になっている状況とは異なり、2022年には国産メーカーの業績パフォーマンスは少し良くなる可能性があり、具体的には以下の三つの方面にあり、

Ÿ 現在、国産メーカーの納期はまだ正常な状態にあり、受注は期日どおりに納品することが保証されている;

Ÿ 産業用ロボット分野への資本投資により、国産メーカーはより多くの資金をサプライチェーンの段階で準備する;

Ÿ 国産メーカーが使用するチップは中国現地で供給されており、地域の優位性が明らかであり、国産化率が相対的に高い。

全体を見ると、現在の市場状況をもとに、楽観的に見れば第1四半期の市場の成長率は25%~30%ぐらいであると予想し、需要状況を見て第1四半期の成長率は30%に達するが、しかし3月に全国の多くの省の疫病が深刻化し、納期の延長の影響で少し低下し、成長率は25%になる可能性がある。

2021Q1-2022Q1中国産業用ロボットの四半期別市場規模

image.png

(データ出所:MIR DATABANK


 

まとめ


上記のように、各主要メーカーの受注需要は依然として大きく、主要な下流産業の市場需要は依然として増加し、第1四半期の産業用ロボット市場は需要側も供給側も全て前年同期を上回った。楽観的に見れば、第1四半期の市場の成長に支えられ、2022年の中国産業用ロボット市場が予想通りに成長し、または予想より良くなると信じる理由がある。