業界観測

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「ロシアのウクライナへの進攻」」が中国工業分野に与える影響を深く分析

では、「ロシアのウクライナへの進攻」が中国企業にどのような機会をもたらす可能性があるかを、傍観者の視点から、ビジネスポジションに立って分析とする(工業・エネルギー分野だけ)

最近、ロシアとウクライナへの進攻戦争は緊迫化し、欧米のロシアに対する経済制裁も本格化している。戦争が好きな人はいない。戦争に伴うのは、亡くなる生命と多くの悲惨な運命である。そして、グローバル化の時代には、戦争は世界のあらゆる業界に影響を与え、経済の大恐慌をもたらす。本文では、「ロシアのウクライナへの進攻」が中国企業にどのような機会をもたらす可能性があるかを、傍観者の視点から、ビジネスポジションに立って分析とする(工業・エネルギー分野だけ)


一、世界の主流経済体はロシアを制裁し、中国にEPCのロシアプロジェクトの展開の機会を与えた

2021年ENRの公開資料によると、世界250強のEPC事業(設計・調達・建設)のうち、中国は78社がランクイン。これら78社の海外事業を詳しく分析すると、その多くは東南アジア、中東、アフリカ等に集中しており、詳細は以下の通り。


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(データソース:ENR

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最近、ロシア、ウクライナ情勢が予想以上に悪化したことを受け、米国、英国、ドイツ、カナダ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国など多くの国がロシアに対する制裁を発表した。金融、軍事、科学技術などの面では、ロシアとSWIFTとの連絡を遮断する(ベルギーに本社を置くSWIFTは万行以上の銀行とネットワーク接続しており、世界の主要な越境振替の半数はSWIFTを通じてデータを転送)、商品、サービス、技術の輸出、販売、供給を禁止、重要なプロジェクトを中止、重要な人員を制裁するなどが含まれる。制裁措置は、ロシアに於けるこれらの国々のEPCプロジェクトの進展と今後のプロジェクト協力計画に深刻な影響を及ぼし、中国EPCのロシアでのプロジェクトの展開に有利になる。

次の質問は、どのような中国EPCがロシアで市場を開いているのかということ。

中国商務省が発表したデータによると、2021年中国、ロシアの貨物貿易額は1468.7億ドルに達し、前年同期比35.9%増となり、中国は12年連続でロシア最大の輸入・輸出パートナーとなった。ここ数年、中国とロシアのプロジェクト協力はますます頻繁になり、主に電力、化学工業、石油化学、鉄鋼、交通運輸などの業界に集中しており、中国能建、中国鉄建、中国化学などのグループ会社は相次いでロシアの重点プロジェクトの建設に参加している。


ロシアで中国EPCプロジェクトの状況-一部

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(情報ソース:MIR DATABANK


更に、制裁措置の結果として、欧米など多くの国がロシアからの石油や天然ガスの輸入を減らし、世界の他の国(中東や南米など)からの輸入エネルギー増やすことになる。今後、中東、南米(特にベネズエラ)には多くの関連する新規プロジェクトがあるが、中国のEPCはこれらの地域と国で、既存の優位性があると確信している。工事プロジェクトの受注は中国EPCのポケットに入る。


二、国産代替、中国送配電と自動化メーカーが海外市場で新たなチャンスを迎える

EPCの背後には、重要なデバイスと製品がある。通常、EPCは関連プロジェクトのエンジニアリング実施のみを担当し、主要な設備と製品はサードパーティから購入する必要がある(特に電力関連の送配電製品と工業制御関連の自動化製品)。制裁措置により、欧米諸国の企業が直接・間接的に製品をロシアに売ることはできず、たとえ関連製品を中国EPCに売っても、中国EPCがプロジェクトを通じてロシアに売ることも禁止される。一部の部品は設備とともにロシアに入るかもしれないが、フォローアップサービスなども考慮しなければならない。これにより、SIEMENSABB等の外資系自動化企業が関連するEPCでの製品の調達割合が低下し、中国企業に新たな市場機会が生まれる。

類似の事例:

期間:2014

国内企業: XX技術

落札プロジェクト:イラン油田整備プロジェクト

プロジェクト金額:3億元(XX技術の当年売上高の約20%

落札要因:イランは米国やEUの制裁を受けていたが、イラン側は戦争が起きた後、工事サービスの備品が手に入らず、米国や欧州企業と協力することを懸念した為、XX技術がこのプロジェクトを獲得した。

影響: XX技術は同プロジェクトをベンチマークと事例として、海外市場の開拓に成功

では、いったいどの中国企業が国産代替を実現する可能性が最も高いのだろうか。 MIRは専門的な市場調査の経験に基づいて、代表的なEPCプロジェクトに必要な工業製品リストと、同製品の主要な欧米の主要サプライヤーと中国の主要サプライヤーを整理した:


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(情報ソース:MIR DATABANK

 

付録

MIRは中国海外EPC市場に対する長期的なモニタリングと調査に基づき、ロシアでプロジェクト実績のある中国EPC TOP152020年海外売上高ランキング)を整理したので、参考にしてください:


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(データソース:ENRMIR DATABANK

 

付録Ⅱ:

ウクライナでの中国EPCは武装衝突のリスクに直面し、プロジェクトの正常な運営に影響を及ぼしている。

中国商務部の最新版『対外投資協力国別(地域)ガイドライン』によると、2020年にウクライナで実際に経営する中資企業は54社で、主に通信、電子製品、インフラ、農業、加工業、製造業などの分野に集中している。近年、ウクライナの風力発電市場が注目されている為、中国電建、金風科技、中国能建、龍源電力など多くの国内企業が次々と積極的に進出している。ウクライナ情勢により、多くの企業がウクライナ事業の運営状況を発表している。

調査によると、一部の企業はウクライナでの事業を停止しており、一部の企業は現時点では影響は小さいが、今後も変数があり、注目しなければならないという。

 

ウクライナで中国EPCのプロジェクト状況-一部

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(情報ソース:上場会社の公告、公開資料の整理)