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2018年中国新エネルギー自動車補助金政策

2018年10月15日

直近では、2016年12月の「新エネルギー自動車促進における補助金政策調整の通知」(2017年1月1日より実施

中国政府は電動自動車を中心とした「新エネルギー自動車」に政策的に力を入れている。2009年1月のパイロットプロジェクト始動及び同年3月の「新エネルギー自動車戦略」を発表してから、毎年政策面で強化され、国家政策のように進められている。

直近では、2016年12月の「新エネルギー自動車促進における補助金政策調整の通知」(2017年1月1日より実施、以下「2017年政策」という)および2018年2月の「新エネルギー自動車促進における補助金政策調整改善の通知」(2018年6月12日より実施、以下「2018年政策」という)が財政部により発表された。

「2017年政策」より「2018年政策」のほうが、補助対象となる技術基準は厳しくなり、航続距離、電池エネルギー密度、消費電力への制限は細かく設定されている。以下は、2つ政策の比較、新規プロジェクト、企業動向、新技術動向等方面から市場トレンドを分析したい。


  1.「2017年政策」と「2018年政策」の比較

1)  乗用車について

「2018年政策」では長航続距離、高エネルギー密度、低消費電力の乗用車に対し補助金強化する一方、短航続距離、低エネルギー密度、高消費電力の乗用車に対し補助金減額した。


image.png

1台乗用車の補助金 = 

航続距離補助金標準 × 電池エネルギー密度補助係数 × 100キロ消費電力補助係数

※電池容量に対し、補助金上限は1,200RMB/kWh。


2)  バスにつ

「2018年政策」では補いて助対象基準が厳しくなり、急速充電以外の高エネルギー密度電気バス及び低消費電力の電気バスの発展を後押しする形。

急速充電以外の電気バス:


image.png

1台バスの補助金 = 

Min{車の電力 × 単位電力補助金;1台当たり補助上限} × 係数(電池エネルギー密度係数、エネルギー消費量係数、急速充電倍率係数)


  2.新エネルギー自動車市場動向予測

1)  今後2-3年間、関連企業は業界再編、淘汰、M&Aに直面する

2018年政策は長航続距離、高エネルギー密度、低消費電力の動力電池に大いに力をいれており、動力電池性能に対する要求が厳しくなる一方。そのため、激しい競争に陥ることを予想し、電池性能の低い中小企業は淘汰、M&Aに直面するだろう。また、中国動力電池関連企業の数は2016年の150社から2017年の100社以内に減少したことがわかった。2020年以降には、TOP5-10だけの動力電池企業だけが生き残されるとの予測も。


2)  投資総額減少するが、大規模且つ高性能の動力電池プロジェクトに重点的に投資される

以下2つのことがわかった。

  2017年、動力電池業界への投資は爆発的に増え、膨大な資金が入り込んだ。

  2018年政策公表後、投資総額は減少するが、大規模且つ高性能の動力電池プロジェクトに重点的に投資される。


関連データは以下の通り。

  2016年、投資総額は374億RMB以上。投資額20億RMB以上の動力電池プロジェクト10件。

  2017年、投資総額2,159億RMB以上。投資額20億RMB以上のTop10動力電池プロジェクトの投資総額746億RMB以上で、平均投額約75億RMB。

  2018年Q1-Q3、投資総額は1,300億RMB以上。少なくとも24件の投資プロジェクトあり、計画生産能力230GWh以上。その中で、Top10動力電池プロジェクトの投資総額1,000億RMB以上、平均投資額約100億RMB。


2018年Q1-Q3、投資される動力電池プロジェクト一覧:

No.

プロジェクト

金額

計画
 
生産能力

説明

1

5GWh角型アルミパック動力リチウムイ電池プロジェクト

30億RMB

5   GWh


2

天臣新能源システムアセンブリプロジェクト基地

50億RMB

4   GWh

投資金額50RMB、年産4   GWhの動力セル及びシステムアセンブリ、40万セットのBMS産業基地を建設計画。

3

河南平煤国能锂电平煤鳳泉区でのリチウムイオン電池プロジェクト

50億RMB

10   GWh

第一期、投資金額5RMB、年産1   GWhのラミネート型電池生産ラインを建設。第二期、投資金額45RMB、計画生産能力9 GWhに達し、主に30-50Ah超格子ソフトパックモジュール等を生産。

4

星恒電源25   GWhの滁州生産基地

100億RMB

25   GWh

当プロジェクトは四期に別れる。第一期、投資金額30RMB2019年第二四半期に建設完了し、正式に生産後、生産能力は6 GWhに達する計画。第二期は2020年度末の建設後に、動力リチウムイオン電池の生産能力13 GWhに達する。当プロジェクトは2022年に全部で建設完了後、生産能力は25 GWhに達する。

5

華鼎国聯動力電池産業化基地プロジェクト

100億RMB

10   GWh

2021年をめどに、年産5万トンの正極材料及び100億ワット時の動力電池の生産基地を建設完了し、動力電池のエネルギー密度は260Wh/kgから350Wh/kgにアップする計画。

6

青海西宁世界最大規模の動力電池プロジェクト

不明

24   GWh

比亞迪青海南川動力電池工場は三元系電池のみを生産。2019年、正式に生産開始、年産24 GWhに達する。

7

新エネルギー貯蔵装置の研究開発の生産プロジェクト

80億RMB

6   GWh

全部は3期に分けられる。第一期既に完成し、年産1.5 GWh。また、2019年末に第二期と第三期は完成見込み。完成後、年産6 GWh、年間売上高60RMBを実現予定。

8

億緯鋰能ラミネート型三RMB系電池工場

137.6億RMB

32   GWh

201810月に始動し、201910月に量産を実現し、2023年に年間生産能力は32   GWh、年間売上

高は350RMBを実現予定。

9

年産20   GWh動力電池プロジェクト(江蘇鎮江)

不明

20   GWh

第一期、2020年に建設完了後、年産10 GWh動力電池生産ラインを実現すると計画;第二期、2022年に新規創設の年産10 GWh動力生産ラインが建設完了後、年間で40万台の新エネ車に適用可能。

10

年産20   GWh動力電池プロジェクト(重慶璧山)

100億RMB

20   GWh

当プロジェクトは主に動力電池セル、モジュール及び関連産業などのコア製品製造を含む。

11

比亞迪年産30   GWh動力電池プロジェクト

120億RMB

30   GWh


12

聯動天翼新エネルギー産業基地

200億RMB

30   GWh

当プリジェクトは主にリチウムイオン電池及びモジュール、EV動力システム、エネルギーストレージ(Energy storage)システムなどの研究開発及び製造が含まれる。

13

30RMB国能電池プロジェクト(無錫錫山)

30億RMB

3   GWh PACK+5 GWhセル

二期に分けられる。第一期、12RMBを投資し、3 GWh PACK及び1.5 GWhセルのスマート化生産ラインを建設;第二期、投資金額18RMB3.5 GWhセルのスマート化生産ラインを建設計画。


3)  高速成長の特需市場から安定成長の通常市場に

2017年政策は、動力電池産業の発展を大いに牽引した形で、膨大な資金は入り込み、たくさんの動力電池企業は出現した。その結果、動力電池業界は爆発的な成長を遂げた。

2018年政策は、補助基準及び性能要求が引き上げられたため、多数の動力電池企業は補助金を以前よりもらえなくなる。一方、原材料価格は継続的に上昇し、企業利益が大幅に減少。

新エネルギー自動車への需要という大きな背景が変わらないため、いずれは、補助政策に頼らない市場に変貌し、高速成長の特需市場から安定成長の通常市場に変化していくとみられる。


4)  次世代動力電池市場が動き出す

下記通り、MIR は原材料、規格、パック材料、形状四つの方面から次世代動力電池の変化詳細、技術難易度、発展動向を分析した。

 


image.png

(データ出所:MIR DATABANK)

大手自動車メーカ動向:

  比亞迪(BYD):生産する絶対多数の自動車に搭載された電池を三元系リチウム電池に置き換えた。また、電池交換により、大部分車種の電池エネルギー密度は元の100 WH/k未満から140WH/kgになっているため、当該新車は補助係数1.1倍の補助金を獲得するようになった。

  北汽新能源:新型車種及び既存主流自動車には、三元系リチウムイオン電池が搭載されている。


大手動力電池メーカの動向:

  比亞迪(BYD):100億RMB以上を投資し、2ヶ所の三元系動力電池生産基地を建設。

  億緯鋰能:100億RMB以上を投資し、三元系生産基地を建設。

  寧德時代(CATL):引き続き三元系リチウム電池に注力。

  沃特瑪及び国軒高科:沃特瑪2020年の計画生産能力は20GWh、国軒高科2020年の計画生産能力は30GWh