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米中貿易戦争が中国製造業及び自動化市場に対する影響分析

2019年5月18日 土曜日

2019年5月10日、米中両方は貿易商談が失敗したと発表した。米国政府は中国からの2000億ドル相当の輸入品のに対する関税を10%から25%に上げた。中国も相応な措置を行い、米国産の輸入品600億ドル相当に対する関税を25%に引き上げた。

背景:2019年5月10日、米中両方は貿易商談が失敗したと発表した。米国政府は中国からの2000億ドル相当の輸入品のに対する関税を10%から25%に上げた。中国も相応な措置を行い、米国産の輸入品600億ドル相当に対する関税を25%に引き上げた。実際は、米中両国は2018年7月、8月に500億ドルの輸入品に対し追加関税政策を実施開始した。米国ニュースによると、米国は今後の貿易商談状況に基づき、他の3500億中国製品に対し、追加関税を課すかどうか検討中。

米中貿易戦争は、20年以来、中国の経済発展における重大の出来事の1つである。 それは中国経済にどのような影響を与えるでしょうか? しばらくの間、さまざまな意見があった。 本稿は製造業業者の立場に立って、観察された事実と長年の市場調査経験に基づき、米中貿易戦争が中国の製造業、特に自動化市場に対する影響を分析していく。

まず、米国の対中追加関税対象品目は以下の通り:



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上の図から見ると、米中貿易戦争は中国複数の業界に大きな影響を与えている。 例えば、モーター及び電気機器、3C製品、自動車および部品、樹脂およびゴム、鉄鋼、ハードウェア製品、医療機器、ガラス等。これらの業界における中国生産メーカ及び貿易業者は、米国への輸出事業において、コスト及び価格の高騰、売上急減のリスクに直面しているとみられる。


影響された業界について、検討したい点四つある:


1.  中国製造業は大幅に下落するかどうか?将来、大量の工場、特に外資工場は中国から転移するかどうか? 

一部のメディア、特に外国メディアは、中国経済の発展見通しが楽観的ではなく、多くの工場は中国から移転する可能性が高いと思う。 しかし、筆者はこれらのメディアが、中国製造業の詳細を理解していない下で、結論を引き出し、机上の空論だと考える。具体の理由は以下のとおり:


1)  中国では、上述の業界は、基本的に内需を主要な牽引役として、輸出の貢献度が非常に低い。特に米国への輸出。 例えば、家電製品のエアコン、内需からの出荷額が業界の生産額の70%を占め、輸出の占める割合は約30%を占め、米国への輸出額は小さい。あくまでも、中国の人口は多く、市場が大きい。産業移転の最大原則は、需要の近接である。そのため、 今回の米中貿易戦争は中国の製造業にそれほど大きな影響を与えない。


2)  中国には最良のものが海外で販売されるという良い伝統がある。製造業でも同様に、米国に輸出されている商品は、普通最も高級な商品である。 ハイエンド商品は高い利益、柔軟な価格調整を意味する。 関税を10%から25%に引き上げたことは、中国におけるハイエンド製造業に大きな影響を与えるには不十分である。それに、これらの企業の多くはコスト削減の方法を知っている。


3)  工場の移転は、多くのメディアの想像したほど簡単ではない。 あらゆる工場の移転または産業の移転は、以下の問題を考えなければならない。a)サプライチェーンの再構築。 現在、中国の製造業サプライチェーンは、過去20年間にわたって徐々に完備しつつある。 数年以内に他の国でサプライチェーンを再構築することは容易ではない。 b)優れたブルーカラー労働者。 現在、中国製造業のブルーカラー労働者は、過去数十年間で絶えず募集、トレーニング、成長を経っている。他の場所でこのような技術グループを速く養成することは非常に困難である。 c)工場移転は設備、財務、法律等多くの問題に関わる。これらによる追加費用は、米国追加関税によるコストの増加をはるかに上回る。


もちろん、今回の貿易戦争が中国の製造業に影響を及ぼさないということではないが、その影響はそれほど大きくない。米中貿易戦争による両国への影響は下の図の通り、米中両国に不利で、中国の周辺国に利益を得るかもしれない。

 


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2.  中国製造業には失業ブームが出るか。

多くの人々は、中国の製造業が衰退し、大量の従業員が失業可能だと心配している。実際に、中国政府はこの貿易戦争に対処するために一連の措置を実施。 その一つは、インフラ整備の強化である。 2019年1月以来、国家発展改革委員会によって承認されたインフラ投資プロジェクトは、都市間鉄道、軌道交通および空港交通施設を含む5000億元を超えた。 そして、中国の内陸中部及び西部地域では、より多くの資源と資金が投資された。従って、 貿易戦争による中国製造業の失業ブームは到来しないと思う。


3.  製造業全体の材料コストは速く上昇するか?

筆者は、今後製造業におけるコストが小幅に上昇すると考えている。まず、 中米貿易戦争により、製造業全体のコストが増加し、各プロセスの資材及び装置の価格も上がる。 一方、中国政府が今回の貿易戦争に対処するために、通貨供給量をさらに増やし、預金準備率を引き下げると予測。 (実際、中央銀行は今年の第1四半期に同じ措置を取る)。 これは、人民元/米ドルの為替レートの更なる上昇を意味する。これにより、米国追加関税の影響が少し弱まる。 もちろん、中国国内における資材及び設備の価格が上昇することになっている。


4.  今回の貿易戦争が中国自動化産業に対する影響はどう。

もちろん、中国自動化産業にマイナスな影響を与えている。中国自動化産業は2017年及び2018年上半期に高い伸び率を維持したが、2018年年末に落ち込み、2019年に発展見通しが楽観ではない。MIR睿工業による自動化製品成長率の推移及び予測は以下の通り:

 


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2019年、自動化市場は下落傾向があるのは、要因の一つは米中貿易戦争であり、より重要な要因は自動化川下業界における産業構造の調整である。(例えば、リチウム電池業界、3C業界、工作機械業界等)2019年下半期、5G産業の迅速な発展に連れ、インフラ整備が更に強化されている。そのため、中国における自動化産業の見通しが良いと思われる。