業界観測

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Q3自動化市場の回顧:回復傾向にある圧力

MIRは2022年通年で自動化市場の成長率が明らかに鈍化すると予想している。


2022年第3四半期には、中国経済は一時期的な、一部地域でのコロナ繰り返し、高温・電力制限、不動産の低迷等の影響を受け変動したが、全体市場は回復傾向にあった。第3四半期中国自動化全体市場規模は748.12億元で、前年同期に比べて2.4%の微増となった。注目すべきのは、川下の需要が減少し続け、新規受注が不足し、第4四半期の業界見通しが楽観的ではないことである。MIRは2022年通年で自動化市場の成長率が明らかに鈍化すると予想している。

 

2020-2022年中国の四半期別自動化全体市場規模

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(データ出所:MIR DATABANK)

 

 

1.   川下需要は引き続き低迷、OEM業界は6%下落

プロジェクト型業界は7.8%増加し、依然として主要な原動力

 


全体の経済状況から見ると、第3四半期中国GDPの成長率は3.9%ぐらいであり、その中で第二次産業は同期比で5.2%増加した。各地のコロナ予防と経済発展管理策の効果が現れ、七割以上地区の工業生産が回復した。経済全体は上向きの傾向にあったものの、いくつかの課題も直面している:

 

1、 行の「動態ゼロ化」(問題発見即解決)防疫政策はしばらくの間では動揺せずに堅持される為、消費とサービス活動の回復が引き続き抑制される可能性がある;

2、 インフラ投資は依然として堅調だが、不動産販売と建設活動は依然として低迷している;

3、 製造業の景気は全体的に臨界値を下回っており、チップ等重要な原材料の供給問題は緩和されたが、まだ完全には解決されていない;

4、 北半球では冬が近づいている為、住民の暖房や工業生産の為のエネルギー消費量が大幅に増加し、全体エネルギー供給が緊張になる。

 

このような問題の影響で、もともと需要が低迷している自動化の川下産業がさらに悪化し、これも自動化製品の成長動力不足を招いている。

 

業界別に見ると、2022年第3四半期OEM自動化市場の規模は265億元で、前年同期比6%減となった。OEM自動化業界は市場需要低迷の深刻な影響を受け、多くの重要な細分業界の景気が明らかに好転していなかった。電池製造、太陽光発電設備が大幅に成長し、印刷機械、製薬機械、HVAC、食品飲料機械、エレベーターが少し成長した以外、その他のOEM業界はすべて下落傾向にあった。具体的に見ると、成長したOEM業界の中で、電池業界第3四半期の同期比は23%成長し、太陽光発電業界も20%以上成長した。しかし、これらの業界だけではOEM業界全体の発展を牽引するのはまだ不十分である。

 

現在、中国全体のOEM自動化市場は、まだはっきりとした回復の兆しを見せていないが、第4四半期の各OEM業界の市場動向は、従来型OEM業界(ゴム、紡績等)は減少幅が縮小するものの依然として低迷していること、民生(食品飲料、製薬等)、スマート装備(ロボット等)関連の業界は堅調に回復すること、新エネルギー(電池、太陽光発電等)関連の業界は比較的速い成長率を維持すると予想される。

 

4四半期には、G20サミット、APECの開催と国内の防疫管理政策の緩和、国家産業の投資加速等に伴い、OEM自動化業界全体の下落幅が狭くなる見込みである。しかし、通年で見ると、OEM自動化業界の成長率は4%減少すると考えている。今後、製造業のサプライチェーン、川下産業の需要が徐々に回復するにつれて、2023年に自動化OEM業界が変曲点を迎えることを期待される。

 

2022年第3四半期のOEM業界における自動製品の同期比成長率

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(データ出所:MIR DATABANK

備考:電子及び半導体製造機械には、電子製造、半導体、太陽光発電、液晶等の設備が含まれる

 

プロジェクト型業界を見ると、2022年第3四半期のプロジェクト型自動化市場規模は483元で、前年同期に比べて7.8%増加した。2022年初めから現在までの状況を見ると、プロジェクト型業界の成長率はOEM型業界を上回る。

 

第3四半期以来、国有資本投資の動向の下、重工業(鉄鋼業以外)の投資成長率は比較的安定している為、国有企業が主導する採鉱、化学工業、電力、市政及び公共施設等のプロジェクト型産業自動化製品は、同期比の成長傾向が明らかである。

 

プロジェクト型業界2022年第3四半期における自動化製品の同期比成長率

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(データ出所:MIR DATABANK

 

プロジェクト型業界が安定的な成長を維持することができるのは、一方では、世界コモディティ商品のインフレがある程度で国内エネルギー業界投資の成長を牽引した;もう一方、ロシアとウクライナの戦争に伴うエネルギー圧力は、国家エネルギー備蓄計画の実行をある程度促進した。したがって、エネルギー備蓄計画の実施に伴い、今後2年間、プロジェクト型の産業自動化製品が引き続き成長すると考えられる。以上のことから、MIRはプロジェクト型業界の通年同期比成長率が7%に達すると予想している。

 

 

2.   自動化の各製品ラインは回復を見せている

各メーカーは市場将来性に対する予測が慎重

 


自動化サプライチェーン(チップ)の危機が緩和され、延期した受注が徐々に納品され、新エネルギー業界(電池製造、新エネルギー自動車、太陽光発電)の成長が高かった為、第3四半期の一部自動化製品の売上が回復された。

 

各製品ライン第3四半期の業績を見ると、サーボ、CNCの成長率がマイナスであった他、低圧インバーター、大中小型PLC、HMIがいずれもプラス成長した。そのうちPLC全体が2ケタ以上の成長を遂げた。

 

2022Q1-2022Q3自動化市場の主要製品の同期比成長状況(四半期別)

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(データ出所:MIR DATABANK

 

サーボ市場は、第3四半期は同期比5.1%減となった。これは主に自動化川下市場の消費需要の下落、アップルの受注が海外へ移転されて電子・半導体等新興業界の成長傾向が著しく鈍化し、紡績・包装等従来型業界もコロナ禍の影響で輸出・入が抑制され、成長が下落傾向を見せたことによるものである。

 

低圧インバーター市場の第3四半期の成長率は予想を上回り5.4%に達した。これは主に二つの原因がある:

 

第一に、第3四半期のプロジェクト型業界は低圧インバーターの川下市場を牽引した。そのうち、自動車、石油化学、化学工業等のプロジェクト型業界は第3四半期も依然として急成長を維持し、需要を大幅に促進した。


第二に、第3四半期のチップ不足状況はある程度緩和されて、その為延期された受注も今期に納品された。

 

HMIとPLCは第3四半期全体の業績が良く、それぞれ8.3%と11%(大中型PLCは11.3%、小型PLCは11.1%の成長)ぐらいの成長した。HMIとPLC第3四半期好調の原因は主に二つある:

 

一,  延期された受注の納品:チップ不足によるPLCの納期延長状況が第3四半期に緩和されたことで、第1~2四半期の一部の受注が第3四半期に納品されたことが、一部の業績を押し上げた。

 

二,  代理店の買いだめ:一部のメーカーが第3四半期に値上げや品薄状態に陥ったことで、代理店が値上げや納期が長いという圧力の下で買いだめを行い、HMIとPLCの業績を押し上げた。

 

注目に値するのは、第3四半期のプロジェクト型業界(自動車、軌道交通、化学工業)は依然として中大型PLCの成長の主な原動力である。OEM業界は新エネルギー類(電池制造、太陽光発電設備等)業界のパフォーマンスは悪くなく、その他のOEM業界は対外貿易需要の減少、国内生産はコロナの繰り返し等の影響を受けて、需要は伸び悩んでいた。多くの小型PLC川下産業は下落傾向が現れて、電池製造、太陽光発電、半導体等の少数のOEM業界がプラス成長傾向にあった。


第3四半期はデジタル・コントロール・システム(CNC)の従来型販売閑散期とされ、そして川下需要低迷の影響で成長率が13%下落し、3期連続の大幅下落となった。新エネルギー等成長の高い業界があるが、依然として業界全体の成長を牽引することはできない。また、国産メーカーは安定した新エネルギーの受注ができず、一部の業界トップメーカーも大幅に下落した。数値制御システム(CNC)は2021年上半期のような爆発的な成長はできす、市場は悲観的である。

 

全体としては、ほとんどの製品は第3四半期に成長率が多少回復したものの、川下産業の需要が全体的に低迷している中で、各製品ラインの新規受注の状況は楽観的ではない。市場は、第20回党大会の新たな政策が一部業界の市場需要を促進することを期待しているが、実際の政策効果が現れるまでに時間がかかり、短期には需要を促進する効果はっきりしていない。

 

サプライチェーンの面から見ると、一部の外資メーカーにとって、年末までサプライチェーンの問題はまだ完全に緩和されない見込みで、輸入部品に依存するメーカーは生産と販売の上で依然として一定の問題が存在する。しかし、2022年前半と比べると、全体的な状況は好転している。

 

ますます高くなる業界の圧力に直面して、多くの自動化メーカー、特に外資メーカーの川下従来型業界は成長原動力、受注が不足している。受注残が納品された後、外資メーカーは長期的に高い成長圧力に直面する。ローカルメーカーにとっては、同じ問題に直面しているが、ローカルメーカー市場は長年の技術革新を経て、ローカルサプライチェーンの優位性が次第に現れ、市場シェアが向上した為、業界の不況は、いくつかの実力あるローカルメーカーにとって、発展のチャンスでもある。

 

業界の低迷状況とローカル競争相手の二重の圧力に直面して、一部の外資メーカーも革新を求めている。特に欧米メーカーの対応速度が他の外資メーカーに比べてもっと速い。例えば一部の欧米メーカーは新しい市場を開拓し、工業用ソフトウェア、データセンター等の分野で事業を拡大している;一部の欧米メーカーはいくつかの非重要事業を停止し、もっと余裕を持って市場の圧力に対応する; また一部の欧米メーカーは、中国本土で代替可能な部品を積極的に探し、徐々に普及させている。そして、中国への投資を拡大し、R&D共創センターを設立して、中国本土市場に適した製品を作り上げている。


 

3.   業界の下落傾向が明らかで、ブルウィップ効果に警戒


 

MIRは、川下産業の需要が減少していることは間違いないが、第3四半期には自動化市場が回復したと見ている。市場は、第4四半期のインフラ投資が依然として堅固で、第20回党大会のサポート政策も相次いで発表されると予測しているが、短期間では市場は成長の原動力が不足する状態にある。これに基づいて、MIRは2022年の中国全体の自動化市場の成長予測を下方修正し、以前の8.5%から2.4%に引き下げた。

 

中国全体の自動化市場の成長傾向(税抜き、億元)

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(データ出所:MIR DATABANK

 

自動化市場は楽観的ではないが、不況サイクルの中での「ブルウィップ効果」に警戒が必要である。

 

2022~2023年に市場全体が急速に下落したことを背景に、自動化市場サプライチェーンの需要変動は、川上需要に深刻な影響をもたらす。急速な成長段階のサプライチェーンに蓄積された巨大なバブル(重複注文と大量の在庫)、および下落段階の川下の関連メーカーの保守的な態度は、川上のメーカーへの注文をさらに減少させる。

 

自動化市場ブルウィップ効果の図例

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(データ出所:MIR DATABANK

 

これに対し、MIRは各自動化製品メーカーが顧客の実際の需要の変化に注目し、市場が回復している時に「ブルウィップ効果」の影響で状况を見誤ってビジネスチャンスを失うことを避けるべきだと提案している。

 

備考:「ブルウィップ」とは経済学の用語で、サプライチェーンの川下の需要変動が川上にいくほど増幅していく需要変動現象である。川下のごくわずかな需要変動が拡大しながら川上へ伝わっていく様子が、ムチを鳴らしているように見えるためブルウィップ効果と呼ばれている。