業界観測

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中国自動化製品市場:2022年上半期の十つのイベント

MIR睿工業は中国の自動化製品市場に長期的に注目し、豊かな市場調査経験に基づき、2022年上半期の十つのイベントを選び、一緒に中国の自動化製品市場の発展を振り返りましょう。



2022年上半期、中国は国際情勢(ウクライナ戦争、中米貿易戦争の余波)、中国国内の疫病の影響を受け、経済は一定の圧力を受けた。2022年上半期の中国の国内総生産は562642億元で、前年同期比2.5%増加した。このようなマクロ環境の下で、2022年上半期中国の自動化製品市場は大きな下押し圧力を受け、2022年の市場の成長が明らかに減速すると予想され、2023年は更にマイナス成長になるかもしれない。一定期間内に自動化製品市場は大きな圧力を受けるが、しかしやはり非常にしっかりと将来の中国自動化製品市場の発展の見通しを見据えている。MIR睿工業は中国の自動化製品市場に長期的に注目し、豊かな市場調査経験に基づき、2022年上半期の十つのイベントを選び、一緒に中国の自動化製品市場の発展を振り返りましょう。

(以下のイベントは重要度評価で順位付けされている)


*データ定義:

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第十位

上海での感染封鎖による自動化製品メーカーの売上高へのマイナス影響



2022年第1四半期の新型コロナウイルスの繰り返しは中国経済の中心である上海への悪影響が最も深刻であり、産業チェーンが深刻な衝撃を受けた。

2020年上海製造業の主な業界が中国で占める割合の状況

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 (データ出所:国家統計局,MIR叡工業まとめ)


感染封鎖は上海に工場や物流センターがある自動化製品メーカーの売上高にマイナスの影響を与えた。例えばYASKAWAやOMRON等上海の一部工場は感染症の為閉鎖された。他の一部の自動化製品メーカーの物流センターは上海にあるが、感染封鎖措置の影響で出荷できなかった。

また、上海地域は中国の自動化製品代理店の集中地区で、特に日系企業は上海に大量のコア代理店があり、感染封鎖の影響を受け、代理店も予定通りに出荷できず、自動化製品市場のさらなる低迷を招いた。下流企業も感染症の影響を受け、多くの下流企業の生産やサプライチェーンが影響され、例えば自動車、半導体、3C等の企業のプロジェクトの投資、プロジェクトの実施と自動化製品の調達に影響した。

サプライチェーンの面では、多くの自動化製品メーカーは特にチップが上海の空港や港に滞留し、順調に通関ができず、チップの品薄の激しさを更に深刻化させたことを表明した。その他、国際便の減少、道路の封鎖、空輸と陸運の費用が明らかに上昇し、物流コストが増加した。



第九位

「チップ不足」は依然として業界全体の問題である



2021年のチップ市場の全般的な品薄状况と異なったのは2022年のチップ市場は明らかな構造的な分化の傾向が現れ、一方で下流の汎用系と家電分野でのチップの値下げ幅が明らかである。 一方、車両用チップは需要に追いつかなかった。その為、MCUの最もよく使われるチップ、特に汎用型MCUは昨年と比べて市場の好転が明らかで、市場では既に品薄になっていない。品薄なのは主にカスタム化された専用チップで、具体的には自動化製品市場にとってはマスターチップ、通信チップ、アナログ・デジタル変換チップの不足である。

2022年の主要チップ別欠品予測とその原因

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(情報源:MIR DATABANK)


今回のチップ不足ブームには以下のいくつかの原因がある:

1、市場需要の増加:半導体業界は2020年から回復期にあり、消費者向け電子(携帯電話、コンピューター等)等の下流のアプリケーション用業界は疫病抑制の需要が爆発し、新興業界(新エネルギー車、太陽光発電等)は急成長し、チップ需要を大幅に増加させ、市場の供給が需要に追い付かない状態を招いた。

2、原材料価格の上昇:2021年から、チップ原材料の調達が困難になり、チップ生産能力が更に逼迫した。

3、感染症の影響:多くの半導体製造メーカーが操業を停止し、それによってチップサプライチェーンの生産能力供給に影響が出た。

自動化製品業界は「チップ不足」の影響を受け、上位メーカーのABB、Siemensの受注はずっと遅延し、一部の代理店がこの機会に買いだめし、市場に実際にチップがあるが、川下産業のチップ供給は依然として逼迫する状况をもたらした。



第八位

自動化製品業界では「値上げ」の声が相次いでいる



2021年、自動化製品メーカーは原材料の値上げ、上流チップの供給の逼迫に苦しみ、自動化製品市場は例年より値上げ回数が増え、上昇幅が高まる現象が現れ、しかもこの現象は2022年上半期にも続いた。


2022年中国自動化製品メーカーの値上げ情報-一部

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(データ出所:MIR DATABANK)


2022年の値上げブームは日系のMitsubishi とYaskawaを始めとし、その中でYaskawaのインバーター製品の上げ幅が大きい。ドイツ系Siemensの値上げ製品数は多く、上げ幅は大きい。中国国内資本上位メーカーのInovanceではサーボやインバーター等の製品も相応の値上げが行われている。


2022年下半期に大口原材料の供給が安定し、チップの新規増加生産能力が徐々に放出され、市場の状况が明らかになると予想されている。



第七位

外資系メーカーは中国市場での事業展開をより重視する



国産自動化製品メーカーの台頭に伴い、一部の伝統的な分野で外資メーカーは市場の優位性を失いつつある。MIR DATABANKのデータによると、2021年の中国の低圧インバーター、サーボ、センサー、小型PLC等の製品市場に於いて、国産ブランドの市場シェアがいずれも上昇し、その内サーボの市場シェアが最も急成長した。しかし、国産メーカーの台頭は外資メーカーの中国市場への重視を失わせておらず、むしろ一部の外資メーカーは中国市場での事業展開を加速している。

2022年3月31日にMitsubishi 株式会社は中国上海で「中国共創センター」を開設すると発表した。Mitsubishi 「中国共創センター」の設立により、Mitsubishi は中国市場の多様化するニーズにより迅速かつ柔軟に対応し、中国顧客のニーズにより合ったFA製品のアプリケーションを開発し、カスタマイズされたソリューションを提供して顧客満足度を高め、FAシステム事業を拡大する。

2022年7月5日にSiemensは江蘇省蘇州市で、2022年10月1日から、蘇州市にあるSiemens電気製品中国本社を正式に中国及び東アジア本社に格上げし、その職責を韓国、日本を含む東アジア地域の事業に拡大すると発表した。

中国の自動化製品市場の新たな情勢に直面して外資メーカーはもう単純な投資や工場建設の方式で中国市場で事業を展開するのではなく、より多元的な方式で中国市場の戦略的地位を高める。例えば、中国で生産・創研センター(中国の顧客に対して、中国に適した*CFC製品を開発する)を設立したり、国内に投資して潜在力のある企業を支援したりする。これらの新方式は今後も長期にわたり、外資系メーカーの中国での市場活動の主要なルートになるだろう。

*CFC:「China for China」の略語



第六位

国産メーカーの地元の優位性が更に現れている



汎用ACサーボ市場のパフォーマンスを例とする:2022年上半期、大部分の国産メーカー、例えばInovance、HCFA、信捷等の市場パフォーマンスは市場全体を上回り、限られた市場需要の中で迅速に市場の機会をつかみ、短い納期で自社の競争優位性を拡大し、更に着実な成長を実現する。この他、一部の国産メーカーは第2四半期に値上げを実行し、一部の代理店は値上げ前の大量買いだめも国産メーカーの売上高の増加を更に牽引した。

それに比べて、外資メーカーの状况は楽観視できない。日系メーカーは全般的にマイナス成長を示し、主な原因は2つある:一つは上海での感染拡大の影響で、YaskawaやMitsubishi 等の日系メーカーのサプライチェーン問題が深刻化したことだ。第二に、一部の日系メーカーの優位な川下の産業、例えば工作機械、電子等の業界の需要は著しく減少し、太陽光発電、リチウム電池等の新エネルギー業界は納期が長い為、国産メーカーに一部の市場シェアを奪われた。

Siemensを除いて、大部分の欧米メーカーは2022上半期にも普遍的に成長が鈍化し、更にはマイナス成長傾向にあり、主な原因は限られた市場の需要の下で、チップ不足の欧米系メーカーはサプライチェーン上の優位性が明らかではない。

中国汎用ACサーボ市場で内外資メーカーの売上高成長率

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(データ出所:MIR DATABANK)



第五位

HCFA上場-国産の自動化製品メーカーのIPO規模が更に拡大



2022年4月28日にHCFAは正式に科創板で上場した。今回のIPO調達した資金は8.01億元で、それぞれデジタル化工場プロジェクト、杭州研究院プロジェクト、マーケティングサービスネットワーク建設プロジェクト、流動資金の補充に充てられた。


HCFAは技術駆動の工業自動化制御のコア部品と全体ソリューションのサプライヤーで、主に工業自動化製品の研究開発、生産、販売とアプリケーションインテグレーションに従事している。主な製品はサーボシステム、PLC等を含んで、工業自動化分野の制御層、駆動層と実施センシング層をカバーし、そして近年、産業チェーンの川上・川下に沿って絶えず延長し、上流の工業制御チップ、センサーと下流のハイエンド精密数値制御工作機械等の分野に足を踏み入れている。MIR DATABANKのデータによると、2021年にHCFAの汎用ACサーボ製品の市場占有率は既に国産サーボブランドの第2の位置にあり、その製品の高いコストパフォーマンスの優勢によって、将来の発展の見通しは明るい。


中国自動化製品上場企業の2019-2021年成長傾向

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(データ出所:各社の決算書、MIR DATABANK)



第四位

製品側全体のパフォーマンスは予想を下回ったが、下半期は回復する見込み



MIR DATABANKは自動化製品分野の主要製品の売上高を四半期ごとに監視している:汎用ACサーボ、低電圧インバーター、PLC(大・中・小型)、HMI、CNC等。データを見ると、2021年初頭から2022年第2四半期にかけて、汎用ACサーボ、低電圧インバーター、PLC(大・中・小型)、HMI、CNCともに減速していた。その中でCNCの成長率の低下幅は最も大きく、これは主に疫病の深刻化による上流のチップ不足+工作機械の下流産業(伝統的な自動車、建設機械、3C)市場の低迷によるCNC需要の減少である。もう少し安定していたのがHMIと大中型PLCで、2022年第2四半期終了後もプラス成長となった。これは主にOEM市場の新エネルギー、半導体及び一部のプロジェクト型業界、例えば化学工業、市政等が依然として成長しており、辛うじて横ばいの傾向を続けることによるものである。


2021Q1-2022Q2自動化製品市場の主な製品の前年比成長状況(四半期別)

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(データ出所:MIR DATABANK)


2022年後半には、国の政策に支えられ、自動化製品業界全体が回復すると予想されている。2022年末までに、第二十回の全人代「全国人民代表大会」到来は新しい政策支持をもたらし、一部の業界は新しい発展を迎えることになる。サプライチェーン全体を見ると、下流市場の全体的な景況は依然として下降傾向にあるが、第3、第4四半期の自動化製品市場の需要はある程度回復すると予想される。



第三位

プロジェクト型自動化製品市場は上半期は安定して伸び、下半期は圧力が小さくない



MIR DATABANKのデータによると、2022年上半期のプロジェクト型自動化製品市場は前年同期比5.5%増となった。


●2021年上半期のプロジェクト型自動化製品市場全体のパフォーマンスはOEM市場より優れ、第1四半期のプロジェクト型自動化製品市場は回復し、前年同期比の成長幅は9.8%に達した。その中で採鉱、石油化学、化学工業業界の投資は高く、需要は大きい。一方、上位メーカーのABB、Siemensの2021年末の受注残や代理店の買い控え品の大半はプロジェクト型市場に出荷された。第2四半期のプロジェクト型市場の成長は明らかに鈍化し、伝統業界、例えば石油化学、電力、製紙等は固定資産投資の下落の影響を受け、全てある程度の下落があり、全体の成長率は1.2%であった。


●下半期を展望すると、新興産業プロジェクトは製造業の質の高い発展をけん引し、国は固定資産投資を拡大し、各省の重要プロジェクトが続々と着工し、プロジェクトの建設ブームが巻き起こるだろう。「基建通」ビッグデータの統計によると、2022年7月以降、各省市発展改革委員会、交通運輸庁は累計12件の道路プロジェクト、7件の鉄道プロジェクト、1件の都市鉄道交通プロジェクトを承認し、各プロジェクトの総投資額はそれぞれ646億元、1499億元、389億元で、合計の総投資額は2534億元となった。インフラプロジェクトの安定した支えがあるが、下半期のプロジェクト型市場の前年同期比の成長圧力は依然として大きく、製品の納期延長の影響で、一部の自動化製品メーカー(特に欧米メーカー)の下半期の売上高は予想に及ばないかもしれない。総合的に見て、MIR睿工業はプロジェクト型市場全体が下半期に「重荷を負うて遠き道を行く」になると予想している。


プロジェクト型市場自動化製品の前年同期比成長状況

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(データ出所:MIR DATABANK)



第二位

OEM市場に於ける新興業界は依然として安定した成長を続け、伝統的な業界の需要が明らかに鈍化した



MIR DATABANKのデータによると、2022年上半期のOEM自動化製品市場は前年同期比0.05%減少した。

2021年上半期、OEM市場は対外貿易需要の低下、疫病による国内生産の阻害等の要因で需要が伸び悩んだ。しかし、食品・飲料、電池、半導体等の業界が好調だった。

伝統的な業界の上半期の伸び悩みは2022年上半期の輸出額(特に機械設備)の大幅な急落にあり、関連メーカーの新規受注は全て異なる程度減少した。新興業界の中で、電池、半導体業界は引き続き伝統的な業界を上回った。


2022年下半期も世界経済は深刻なインフレと経済発展の停滞が並行する局面にあると予想されている。このような局面に直面し、伝統的な業界の需要成長の減速は明らかで、新エネルギー業界だけで自動化製品市場全体を支持するのは、原動力が限られている。また、下半期は原材料の値上がり、チップや部品の品薄状况が続き、各業界の機械設備の正常な生産と納入に引き続き悪影響を及ぼすとみられる。


OEM業界自動化製品の前年同期比の成長状況

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 (データ出所:MIR DATABANK)



第一位

中国の自動化製品市場全体は「困難な時」を過ごすことになる



MIR DATABANKのデータによると、2022年上半期の中国自動化製品全体の市場規模は前年同期比2.9%増の1574億元に達し、2022年の経済のマクロ環境と自動化製品市場のマイクロ環境を総合すると、2022年の自動化製品全体の市場状況は楽観視できないと考えられる。従って、7月に年初の自動化製品市場の予想を下方修正し、自動化製品市場の年間成長率を元の8.5%から3.9%に下方修正した。


2020-2022年中国自動化製品全体の市場規模と成長状況

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(データ出所:MIR DATABANK)


下半期を展望すると、世界経済のマクロ環境がしばらく回復する傾向がない下で、自動化の川下産業の需要は依然として限られており、その内生的な成長原動力が不足している:新エネルギー業界を除いて、他の伝統的な業界の需要成長の減速は明らかであるが、新エネルギー業界だけで自動化製品市場全体を支え、下半期の圧力は小さくない。同時に、徐々に感染の回復に伴い、輸出貿易は回復するだろう。しかし、警戒すべきな自然災害、戦争及び突発的な衛生事件等の他のコントロールできない要素も中国経済に一定のリスクをもたらすことで、これは直接自動化製品業界の上流のコア部品の供給、自動化業界の下流の投資の速度を下げる等につながる為、2022年下半期の市場成長率は高くないと予想される。



結び:

Dickensは「双城記」の中で「これは最高の時代であり、最悪の時代でもある」と書いた。業界も個人も、時代の成長傾向に直面してできることは限られているが、これは私たちが座って死を待つことを意味するものではなく、というのも、この複雑な時代では、私たちはいつまでも「目をくばる」という方式で毎日安心して過ごすことができないからである。前世紀の70年代には、あの時の人々は私たちと同じように(スタグフレーション)を経験したが、その後の情報技術革命の為、世界経済の発展はすぐ黄金期に入った。このことから分かるように、世界経済は変化サイクルの傾向にあるが、現在私たちの経済は「小氷期」に入っている。冬が来て、同時に氷を溶かす火も燃えている-新エネルギー車、人工知能、量子計算、ロボット等の新興技術の牽引の下で、自動化製品市場も全世界経済も次の革命を迎える。今は夜明け前の暗闇で、星空を見上げる人々は松明を上げている。