業界観測

数年に亘り、工業分野の仕事で培った経験を通じ、客観的に蓄積した膨大なデータを基に、お客様へ弊社ならではの独自のアドバイスをご提供します。


ホームページ > 業界観測

中国のファイバーレーザー市場:鋭科はIPGを超えるのか?

ファイバーレーザーに関しては、誰もがが知っていると思う。光ビームの高品質性、多波長出力性、プロセスの多様性等の特性を持って、航空宇宙、通信、電子、自動車、建設機械、医療等の業界に広く使用されている。


 

ファイバーレーザーに関しては、誰もがが知っていると思う。光ビームの高品質性、多波長出力性、プロセスの多様性等の特性を持って、航空宇宙、通信、電子、自動車、建設機械、医療等の業界に広く使用されている。


image.png

(データ出所:MIR DATABANK

 

数年前、中国のファイバーレーザー市場はほとんど外資メーカーに独占されていた。2000年以降、国産メーカーは技術の備蓄と市場アプリケーションを通じて、中国のファイバーレーザー産業を急成長させ、低出力から中出力まで、IPG、nLIGHTを代表とする一部の外資メーカーの中国での市場シェアを奪い取ってきた。具体的に見ると:

1-3KW:国産メーカーは近年、外資メーカーの市場シェアをさらに奪い取り、国産化代替をほぼ実現した。

3-6KW:国産メーカーは発展優位性を活用し、良いコストパフォーマンスで急速に国内市場を占めた。

6~10 KW及びそれ以上:鋭科激光、創鑫を代表とする国産メーカーは積極的に技術障壁を乗り越え、発展潜在力を求めているが、超高出力分野では、コア部品は依然として輸入に依存している。

 


市場構造:上位3社を中心に、1位メーカーは厳しい課題に直面



中国国内のファイバーレーザーメーカーの台頭に伴い、国産品への代替が絶えず深化・強化され、IPG、nLIGHT、Coherent等の外国メーカーの中国市場に於ける売上高はある程度下落している。MIRのデータによると、IPGは依然として第一位を占めるものの、市場シェアは2020年の34.6%から2021年の28.1%へと6.5%減少した。nLIGHTやCoherent等他の外資系メーカーのシェアも低下し続けている。一方、代表的国産メーカーである鋭科激光の市場シェアは2020年の24.4%から、2021年の27.3%に伸び、IPGとほぼ同じとなった。創鑫激光は二年連続で第3位を占め、市場シェアは次第に高まっている。


image.png

(データ出所:MIR DATABANK

 

2008年にIPGが中国市場での業績を開示して以来、十数年にわたるIPGの中国におけるファイバーレーザー市場シェアは、ずっと独占的な地位にあった。2021年、鋭科激光は34.1億元の業績で、IPGとわずか0.8%格差の市場シェアを実現し、ほぼ同じとなった。その成長率から見ると、2022年、鋭科激光は中国のファイバーレーザー市場で初めてIPGを上回るメーカーになる見通しである。

 


IPG:ファイバーレーザー業界のリーダー



米国IPG Photonics社は、世界最大の光ファイバーレーザーの製造メーカーであり、1991年にアメリカのMassachusetts州で設立され、2006年にアメリカのNASDAQで上場し、2007年に中国市場に入り、そして10数年続けて中国レーザー市場の1位を占めた。2017年から国産品への代替が徐々に始まり、1kW以上の高出力レーザー設備の国産化率が急速に上昇し、2018-2019年、IPGの中国市場シェアは50%から42%に低下し、代表的国産メーカーである鋭科激光の市場シェアは18%から24%に引き上げた。

IPGの公告によると、2021年第4四半期の売上高は3.65億ドル(23.3億元)で、前年同期比8%増となった。その中、中国地域の売上高は1.13億ドルで、全体売上高の31%を占めた。中国以外の市場の業績は2.52億ドルで、全体売上高の69%を占め、過去最高を記録した。


2021年IPG中国地域の売上高推移-四半期別(億元)

image.png

(データ出所:MIR DATABANK

 

順調に伸びているように見える売上高の背後には、課題がある。2021年に疫病の繰り返し等環境の影響を受けたほか、鋭科激光等の国産メーカーと外資メーカーの価格競争はすでに最高潮段階に入り、切断市場のIPGの下落幅はさらに30%を超えた。溶接、精密切断等の市場では専門技術と製品の優位性で、成長が顕著であり、ある程度切断市場の業績の低下を緩和し、事業の堅調な成長を実現した。

 


国産メーカー:「生産代行」から「新進気鋭」に



中国は「世界一の製造工場」であるが、レーザーのコア技術を把握していない為、以前はずっと生産代行請け負ってきた。レーザー設備等の一部重要部品はほぼすべて輸入に依存した。近年、国はレーザー市場の発展を奨励することに伴い、技術分野では進歩を遂げた。2021年、中国の新規レーザー技術関連特許は16,210件であり、前年同期比27.6%増加した。2021年12月31日まで、中国に存続するレーザー関連メーカーは合計16,230社、上場予定のレーザーメーカーは12社を超え、そのうち炬光科技、大族数控等が既に上場に成功した。

中国のキラ星: 銳科激光

2007年に設立された鋭科激光は、国内初のレーザーを主要事業とする上場会社である。その筆頭株主は元航天科工四院と元航天科工九院が合併・再編して誕生した中国航天三江集団である。鋭科激光の発表した2021年の業績報告によると、2021年通年の売上高は前年同期比47.18%増の34.10億元であった。親会社に帰属する純利益は前年同期比60.17%増の4.74億元であった。


2021年鋭科激光の売上高推移-四半期別(億元)

image.png

(データ出所:MIR DATABANK


市場の面では、鋭科激光は中国国内のファイバーレーザーのリーディングカンパニーとして、レーザー溶接、レーザークラッド、新エネルギー、3Dプリンター、船舶製造、航空宇宙等のハイエンドアプリケーション分野で引き続き力を入れる;科学研究の面では、リングスポット溶接レーザー、復合洗浄レーザー等のハイエンドアプリケーション分野向けの新製品を市販し、レーザーの販売量と売上高の安定的な向上を牽引する。その他、子会社である上海国神は技術の革新を通じて、鋭科激光の川上産業チェーンをさらに完備し、同社の製品ラインを拡大した。その中、特殊光ファイバー、超高速レーザー等の分野は同社に一定の利益を提供した。2021年度の売上高は76.67%増の0.12億元を超えた。



国産vs.輸入 どちらがリーダー



近年、自動車、医療等業界の発展のおかげで、ファイバーレーザー市場は急速に発展している。同時に内・外資メーカー間の競争も激化している。切断の分野を例にすると、2020年から今まで、切断市場は2年連続で低下し、IPG、nLIGHTを代表とする外資メーカーに打撃を与えた;逆に国内メーカーは、製品の品質と非常に良いコストパフォーマンスによって、切断分野のパルス設備は既に市場で絶対的な優位を占めた。しかし、高出力レーザー分野では、IPGが絶対的な技術の優位性により、依然としてトップの地位を占めている。その為、鋭科とIPGを代表とする内・外資メーカーが今後の国内市場でどちらがリーダーかという話題は引き続き注目されるだろう。

製品の面から、IPGと鋭科激光の事業構造は類似していて、すべてファイバーレーザー分野の連続、パルス全種類製品事業に集中している。分けて見ると、鋭科激光は連続ファイバレーザーを主とし、レーザー事業の80%ぐらいを占める。次はパルスレーザーであり、約10%を占める。IPGのファイバーレーザー事業は高出力の連続レーザーを主とし、約70%を占めて、パルスレーザーは20%を占めている。

業績の面からは、2021年2社の公開した決算データはいずれも同期比のプラス成長を見せているが、詳しく分析すると、IPGの中国における四半期業績の同期比成長率が低下し続けており、第三、四四半期は同期比マイナスの成長を見せ、シェアが低下したことがわかった。また、国内市場では、鋭科激光はコスト、ローカルサービスの優位性により、市場占有率の成長幅が大きく(依然として中・低出力市場に集中)、四半期のこのデータはいずれもIPGより大きく、両者の業績格差がさらに近づけている。

現地の発展から見ると、鋭科激光の本社は中国レーザー産業の発祥地である武漢東湖高新区の光谷に位置しており、現在は武漢を中心とし、華中をカバーし、華東、華南、華北地区へと発展する「1+4」の国内産業構造を形成した。2022年、東湖高新区は一連のレーザー産業発展計画と産業サポート政策を発表し、地域内のメーカーによる合併買収、技術研究開発・革新等をサポートする。一方、外資メーカーの現地化の速度は遅く、ますます大きくなるコストや納期の短縮圧力に直面し、中国に工場を建設するか否かは外資メーカーが考慮しなければならない問題である。

技術、製品等の面で、国産メーカーはIPG等のレーザー大手メーカーと対抗することができない。ポンプ、ファイバー等のファイバーレーザーのコア部品も主に輸入に依存している。集束等の製造プロセスは強化も待たれる。しかし、近年鋭科の研究開発投資額を見ると、2016年の0.38億元から2021年の2.88億元に増加した。2021年末まで、鋭科の特許件数は509件、IPGは600件であり、特許数量の格差もさらに縮小している。総合的に見ると、鋭科激光を代表する国産メーカーは現地化特有の優位性と頻繁の値下げ動向を利用して、外資メーカーの中・低出力設備の市場シェアを奪い取っている。IPGを代表とする外資メーカーは高い技術レベルにより、徐々に高出力と万ワット級市場により多く投資している。ファイバーケーブル、光設備、光デバイスモジュール等その他の細分化された科学技術業界の発展傾向を通じて予測できるのは、競争が最も激しい中国市場において、中国のファイバーレーザーメーカーと海外大手メーカーとの競争は依然として激しく、国産メーカー主導への道のりはまだ長い。