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磁気浮上の輸送ライン-小さな市場、大きな未来

磁気浮上の原理は複雑ではないが、この概念が実際に実用化されるのは1966年で、アメリカの科学者James PowellとGordon Danbyが最初の実用的な磁気浮上の輸送システムを提案した。



01.定理から始める

 

1842年、イギリスの物理学者Earnshowは、点粒子集合が静電力の下で安定して静止する問題を研究したとき、有名なアーンショーの定理を提唱した:物体が安定した静止状態にあるには2つの条件が必要であり、物体の平衡点での合力がゼロであると同時に、物体の平衡点での合力のフラックスがゼロ未満である。即ち、物体が安定した状態を維持するためには、いくつかの等しい外力が一緒に作用して互いに相殺しなければならず、同時に物体が他の擾乱を受けた後も、受けた合力は依然として平衡点を指していなければならない。このバランスのとれた安定した状態を実現したのは、我々が日常生活で目にする磁石であると驚き、それで、後の世代によって話されている磁気浮上の概念が生まれた。

 

磁気浮上の原理は複雑ではないが、この概念が実際に実用化されるのは1966年で、アメリカの科学者James PowellとGordon Danbyが最初の実用的な磁気浮上の輸送システムを提案した。この飛躍には124年かかった。現在、人々が最もよく知っている磁気浮上のアプリケーションはリニアモーターカーである。上海のリニアモーターカーは2006年に運行開始され、浦東空港へ30kmの道のりを最速8分で到着できる。

 

製造業にも独自の「磁気浮上の専用列車」があるが、人ではなく産業用製品を運ぶため、名前も変えて「磁気浮上の輸送ライン」と呼ぶようになった。磁気浮上の輸送ラインの原理は磁気浮上の専用列車と類似しているが、より小型化され、具体的に言えば、サーボモーターを軸に垂直して切断し、かつまっすぐに延伸して1つの軌道を形成し、磁石付きの可動子は軌道上で水平方向に移動する。これは1つのリニアモーターのようであり、かつ複数の可動子の同時運動をサポートし、加工待ちの中間部材を可動子のトレイに置いて締め付けを行い、このように加工される製品はそれぞれのワークステーションに移動して加工を行うことができ、例えば: ラミネート、組立、検出など、そうすれば1本の生産ラインを構成することができ、この生産ラインは「磁気浮上の輸送ライン」と呼ばれる。

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LS電気X-Trak磁気浮上の輸送システム

 

フレキシブル製造が新エネルギー動力電池、3Cなどの分野で広く認められた製造方式になるにつれて、その重要な一環である「磁気浮上の輸送ライン」は従来型機械輸送の摩耗、メンテナンスの複雑さ、柔軟な調整ができないなどの問題を解決し、その重要性は明らかである。「磁気浮上の輸送システム」は今後、中国製造業のモデルチェンジとグレードアップに必要な技術になることが予想される。

 

02.隙間市場は大きな潜在力を持つ

 

中国の「磁気浮上の輸送ライン」市場はスタートが遅れており、2012年以降、中国国内の自動化分野で初めて磁気浮上の輸送方式が現れ、発展初期から今日まで、中国に於ける磁気浮上の輸送ラインはずっと隙間市場である。2021年磁気浮上の輸送ラインの市場規模は前年比30%~40%増の約3.5億元で、2025年までには10億元の規模に達する見込みである。


2019-2025E年中国磁気浮上の輸送ラインの市場規模傾向

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(データ出所:MIR DATABANK

 

現在、中国国内に於ける磁気浮上の輸送ラインの市場規模が大きくないのは、この分野の参入障壁が非常に高く、中国メーカーは循環線の高速通信制御、循環線の円弧の精密位置決め等の技術に於いて外資メーカーと一定の差があるからである。

一方では、多くのユーザーは価格要因に制限されているため、この技術は、局所的に小さなクリティカル・セグメントでしか使用することができず、従来型機電輸送ラインと組み合わせて使用する。

これらの国内メーカーが直面している問題は、実際には産業規模化によって製品コストを下げることができていないためであり、多くのユーザーにとってこの技術はハイエンドであるが、必要ではない。元の従来型輸送は、欠点が多いが、コストは許容範囲内である。然し、今後フレキシブル製造を背景に、磁気浮上の輸送ライン製品の現地化は必然的な傾向であり、その時点でそのコストは更に低下し、従来型輸送方式を大規模に置き換えることは当然になると予想される。

 

03.羽口のサーキット

 

2021年の中国磁気浮上の輸送ライン市場は3.5億元の市場規模で、アプリケーションの成長の大部分は、川下のリチウム電池、3C、自動車、医療などの業界によるもの。特に、リチウム電池業界はハイエンド製造業であり、ここ2年、新エネルギー自動車の需要が急速に増加し、設備の安定性と速度に対する需要が高く、上位リチウム電池メーカーが次々と導入して使用し始め、リチウム電池業界に於ける磁気浮上の輸送ラインの市場シェアが引き続き増加すると予想される。

 

2021年磁気浮上の輸送ラインに於けるアプリケーション分野の割合

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3C業界は主に軽負荷製品を使用しており、関連シーンは比較的広く、パソコン、イヤホン等の製品へのアプリケーションは次第に開発され、Apple以外の益々多くのユーザーがこの製品に注目し、試用を開始するようになっている。

 

自動車業界は現在部品、自動車電子製品の組立に多く使用されており、自動車完成車の負荷が比較的大きく、既存の製品の負荷、精度に対応することが難しいという難点がある。

 

新型コロナワクチンの大規模な接種を前提として、医療業界は生産能力に対して更に高い要求を提唱しているため、磁気浮上の輸送ラインが広く使用され、関連分野に更に多くの機会をもたらした。

 

04.国産化は任重くして道遠し


スタートが遅く、この分野のハードルが高いため、中国国内メーカーは磁気浮上の輸送ライン分野での発展に苦労している。現在、市場は主に外資メーカーが主導しており、Rockwell、B&R、Beckhoffなどは主に輸入方式に依存して販売しており、価格は一般的に国産メーカーの1倍以上を超え、川下ユーザーの大きな痛点となっている。

 

2019-2021年中国市場に於ける内資・外資メーカーのシェア割合

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(データ出所:MIR DATABANK

 

一方、中国メーカーである果栗は、技術の継続したグレードアップを通し、製品をユーザー市場に近づけることができ、分野セグメントで大きな市場シェアを占めており、他の同業者に自信と啓発をもたらしている。中国国産製品の技術の成熟に伴い、今後本土ブランドの市場シェアが徐々に拡大すると予想され、外資メーカーの現地化生産が必要となる。

 


B&R -Supertrak

Beckhoff -XTS

Rockwell -MML

Golytec -iTS-M540L

最大速度-m/s

2.5

4

2

2.5

最大負荷-kg

10kg

5kg

10kg

20kg

繰り返し位置決め精度-

μm

±10/±25

±10

±100

±30


現在、外資メーカーは納期の問題にも直面している。納期は3ヶ月を超えた場合、川下のユーザーは国産ブランドを選択する可能性があり、これは本土メーカーのチャンスである。今後、中国磁気浮上の輸送ライン市場に大きな競争構造の変化が生じるかどうかは、内資メーカーがこのようなチャンスをつかみ、現地化の優位性を活用して外資メーカーから更にシェアを獲得することができるかどうかに係っている。当然、技術の蓄積とブレークスルーは依然として最優先事項である。