業界観測

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【電力制限による自動化業界への影響】新たな課題の裏にはチャンスがある

エネルギー消費量の「双控(エネルギー消費総量と消費強度の制限)」を背景に、最近、中国の約20の省、自治区、直轄市が工業用電力に対する制限措置を打ち出した。


主な原因は中国の輸出受注が急増し、工場がフル稼働し、電力に対する需要が増大した為、一部地域のエネルギー消費量管理が難しくなっている;加えて、石炭の値上げで発電企業の利益が大幅に低下し、更には赤字となり、一部の地域では「電力不足」に陥っている。

今回の電力制限措置による製造業への影響は避けられず、20219月にはエネルギー高消費業界が景気低迷等の影響を受け、製造業PMI指数は臨界点以下の49.6%となった。今回の電力制限措置が自動化製品の生産、自動化川下業界の需要にどのような影響を与えるか。また、電力制限措置は常態化するのか。以下にいくつかの角度からこれらの分析を行う。


1.   全国各省の電力制限措置は自動化工場の生産能力に直接影響を与え、元々長い納期が更に長くなり、供給不足が深刻となり、自動化製品は再び「値上げブーム」を迎えることが予想される。

新型コロナウイルスは工場自動化のグレードアップのペースを加速させ、工業自動化製品に対する需要を急増させている。2021年上半期は海外の疫病や原材料のチップ不足等の影響で、多くの外資系自動化メーカーの納品が大きな困難に直面し、納期は12週間から23カ月に遅延した。今回の電力制限措置は、複数の省の外資系自動化メーカーの納期を更に長くするだけでなく、内資系自動化メーカーの納期にも悪影響を及ぼす恐れがある。出荷の逼迫状況が深刻化しており、現在市場には既に値上げの兆しが見られ、一部の自動化メーカーは10月に全シリーズ製品の値上げを計画し、今回の広範囲な電力制限措置は自動化製品に再び「値上げブーム」をもたらす見込みである。

地域分布を見ると、上半期のエネルギー消費量が低下せず、逆に上昇した青海、寧夏、広西、広東、福建、新疆、雲南、陝西、江蘇はより強いエネルギー消費の制限に直面し、これらの地域に分布する自動化製品工場の生産能力もより強い圧力に直面する。

 

中国に於ける自動化業界の主要企業工場分布状況-一部

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(データ出所:MIR DATABANK)


2.  エネルギー高消費業界は短期的に自動化製品に対する需要が減少し、中長期的には、自動化製品は産業改造とグレードアップの恩恵を受けるかもしれない。太陽光発電、エネルギー貯蔵、新エネルギー車、リチウム電池等の分野は自動化業界の発展を引き続き牽引する。

最近各省が発表した電力制限・生産制限政策を見ると、工業生産に対する制限は主に鉄鋼、非鉄金属、セメント、化学工業、電解アルミ、工業用シリコン、紡績・印刷、建築材料等のエネルギー高消費業界に集中しており、次第に他の業界に関わる傾向もある。

電力制限による各業界への影響分析-一部

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(情報出所:公開資料によるMIR 睿工業が整理する)


エネルギー消費量の「双控」と基数(大きなエネルギー起源二酸化炭素排出量)の影響を受け、今後、エネルギー高消費業界の電力使用の伸びは明らかに鈍化する。短期的には業界に一定の衝撃を与え、エネルギー高消費業界の新規増加投資プロジェクトは大幅に減少し、自動化製品に対する需要は減少する可能性がある。しかし、中長期的には、エネルギー高消費企業も実質的な措置を講じて省エネ・消費削減の投資と改造を強化し、自動化設備とシステムは省エネ・排出削減、高効率な運営を実現することができ、中長期的に産業の高度化の恩恵を受ける。

「カーボンニュートラル」の戦略目標の下で、新エネルギー発電、エネルギー貯蔵、新エネルギー車、リチウム電池等のグリーン環境保護業界の発展を促進し、各業界も省エネ改造とより高い電気化レベルの方向に発展し、いずれも自動化市場の発展に原動力を提供する。

化石エネルギーをクリーンエネルギーに調整することは必然的な選択であり、光エネルギー、風力エネルギー、水力発電、水素エネルギー等のクリーンエネルギーは必ず大いに発展するだろう。クリーン電力と組み合わせて使用することで、電化の発展をよりよく推進することができる。また、省エネ分野の関連産業も好況を迎え、工業分野の省エネも期待される:従来型制造業のグリーン改造は、省エネ、高効率へと発展する。そして汚染の予防・管理、クリーン生産技術、環境保護モニタリング技術、及び再生資源利用、再製造、再利用産業の発展を推進する。交通分野の省エネ:交通運輸効率を高める情報化、スマート化建設を推進する;新エネルギーとクリーンな燃料車の使用をサポートする。

20219月新規建設プロジェクト情報-一部

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(情報出所:公開資料によるMIR 睿工業が整理する)

3.   エネルギー消費量・消費強度の「双控」は引き続き製造業のモデルチェンジ・アップグレードを推進

今回の電力制限・生産制限措置は、製造業が短期的に圧力を受け、多くの業界が構造調整の状況に直面し、効率が高く、エネルギー消費量が低く、先端技術を備えた良質な生産能力と立ち遅れた生産能力との差が開き、多くの高エネルギー消費の中小企業が市場から退出するリスクに直面し、製造業のモデルチェンジとグレードアップが差し迫っている:

1)設備と生産能力をアップグレードし、よりエネルギー消費効率の高い設備を置き換え、 限られたエネルギー消費量の下で生産能力を向上させる。

2)革新してモデルチェンジ、ハイテク技術の研究開発。中国の製造業の技術的障壁は通常高くなく、疫病発生下での受注爆発は一時的なものであり、未来の製造業は必ずハイエンド製造業にモデルチェンジするだろう。

 

4.   今冬、高エネルギー消費量の省が工業用電力を制限する現象は依然として存在し、長期的には電力制限が常態化することはない。

今回の電力制限措置の終了時期は各省とも異なり、多くの省はまだ終了時期を確定しておらず、江蘇省の今回の電力制限令が915日から始まり、実行期間が15日であれば、終了時期は930日となる。広東省は916日から「開二停五」電力使用計画を実行し、毎周日曜日、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日に「ピークスライド」の電気供給を実施し、「ピークスライド」の日は安全保障電力使用負荷のみを残し、安全保障負荷は総負荷の15%以下で、終了時間は未定である。

現在の状況によれば、「双控(エネルギー消費総量と消費強度の制限)」目標と冬の熱供給確保の下で、今冬のエネルギー消費量が緊張する省は住民の熱供給確保のために工業用電力を制限する現象が依然として存在するだろう。

長期的には電力制限が常態化することはない:

1)電力不足は石炭価格が下落すれば好転する。

2)輸出受注の急増による電力使用量の大幅な上昇は、短期的に海外で発生した疫病の影響であり、常態化することはない。

3)製造業企業はモデル転換とアップグレードを加速し、消費量を根本的に削減する。