業界観測

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【KEYENCE社の詳細分析】自動化企業の成功は決して偶然ではない

センサーは従来より、工業の自動化に不可欠な基礎コンポーネントであり、近年のスマート製造、モノのインターネット等の技術の台頭に伴い、センサーはスマート製造の中核コンポーネントとなっている。

センサーは従来より、工業の自動化に不可欠な基礎コンポーネントであり、近年のスマート製造、モノのインターネット等の技術の台頭に伴い、センサーはスマート製造の中核コンポーネントとなっている。センサーといえば、「センサー業界の王者」であるKeyence社に言及しなければならない。Keyence社が毎年新たに生み出すセンサー等の製品の約7割が「世界初」と「業界初」であり、しかもKeyenceの製品は通常同業者の価格の5倍以上であるが、他のメーカーが解決できない問題を解決することができるのでよく売れているKeyence社は競争力が高い製品を持っていること以外、以下の点にも注目が集まる:

l  Keyence社創業者の滝崎武光氏は、2021913日株式市場の取引終了後382億ドルの保有資産で日本一の富豪となった。

l  Keyence社は日本企業の中で平均年収が最も高く、2020年のKeyence従業員の平均年収は1751万円(約103万元)に達した。

l  Keyence社は最大規模の「ファブレス」(工場を持たない)製造システムの自動化企業である。

 

詳細分析-Keyence

 

Keyence社は1974年に設立され、センサー、測定システム、レーザー刻印機、顕微鏡システム及びスタンドアロンイメージングシステムの国際化総合サプライヤーであり、製品は半導体、モーター、精密機器、食品、薬品、自動車等の多くの業界で使用される。大阪に本社を置き、全世界の従業員数は約8380人。

この2年間、Keyence社の売上高は減少したものの、売上高営業利益率は50%以上を維持する:

Keyence社の2020年会計年度に於ける(2020321~2021320)世界の売上高は約538十億円(316億元)で、前年同期比2.5%減となった。主に、新型コロナウイルスの感染拡大による企業の設備投資意欲の減退で、自動化製品の販売が低迷したことによるものである。地域を見ると、中国を中心としたアジア地域では新型コロナウイルスの感染拡大の抑制が効果的で、景気は急速に回復し、売上高は逆成長を遂げたものの、日本国内と海外地域の売上高の低迷を補うことはできなかった。

2015~2020会計年度Keyence売上高状況

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(データ出所:Keyence連結決算、MIR睿工業の整理)

 

2019年会計年度、2020年会計年度は経済危機や新型コロナウイルス等の影響を受け、世界的な景気低迷の中でKeyence社の売上高はやや減少したものの、売上高営業利益率は50%以上を維持している。

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(画像出所:Keyence20203~20213月連結決算)

 

l   「ファブレス」製造システム:究極の利益を追求する為に、Keyence社はすべての重資産経営モデルを捨て、全面的に「ファブレス」経営モデルに転換し、利益率が最も高いセンサーや自動化設備等の設計開発に注力する。Keyence社は、圧力センサー、バーコードリーダー、レーザースキャナー、顕微鏡測定システム、PLCコントローラー等のほとんどすべての製品の生産が外注され、それに、日本企業だけに生産加工を委託する。メディアの報道によると、Keyence社は自社工場の生産ラインの約10%しか保有せず、緊急時の生産需要に対応する。

 

l   代理店を介さない直販体制にすることで中間マージンを省く:Keyence社は直販体制を貫いており、企業の営業スタッフは顧客に直販すると同時に、製品マネージャーと情報収集を兼ねる。

 

世界経済が回復し始めた現在、各国の政策により製造業を中心とした設備投資の回復が牽引され、日本国内生産製造業も回復し始め、Keyence社の輸出事業が好調になり、売上高はプラス成長に転じ、20213~6月期の売上高は169十億円で、前年同期比54.5%増となった。

 

日本で最も給料の高い企業で、従業員の効率も最高

 

日本経済新聞の20218月の統計によると、Keyence社は日本企業の中で平均年収が最も高く、2020年のKeyence従業員の平均年収は1751万円(約103万元)に達する。Keyenceは毎年、一定割合の営業利益を年4回の一時所得と月次ボーナスの形で従業員に支給している。Keyence社は、「会社売上高への貢献を社員の実際の収入に反映させることで、モチベーションを高めている」と言及している。

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Keyence社の中国公式サイトには「営業スタッフの一日」という展示ページが設けられており、「一分一秒を無駄にしない」という文字が先頭に書かれており、従業員の効率的な仕事に対するKeyence社のビジョンがよく表れている。Keyenceは、「高給による効率化」だけでなく、従業員のトレーニングや管理モデルにも力を入れる。

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(画像出所:Keyence中国公式サイト)

l  充実した研修制度、新入社員のトレーニングは以下の通り:新入社員研修職場内訓練On-the-Job Training)、定期フォローアップ研修、地域業績と市場分析訓練;キャリア開発トレーニングには、MDPManagement Development Program)、リーダーシップ研修が含まれる。体系的な新人トレーニングは新人に迅速に仕事を引き継ぐことができ、更に効率的に企業が利益を創造することができる。対象を絞ったキャリア開発トレーニングは、スタッフにより広い昇進スペースをもたらし、それによってより多くの個人利益を獲得し、企業の人材流失率を下げることができる。

 

l  完全に電子化されたソフトウェア管理モデルは、営業スタッフによる顧客管理、販売チャンスの追跡を効率的にサポートし、チームの共同作業をよりよく実現できる。Keyence社の営業スタッフは、一日の作業終了後、一日の作業結果をCRM管理システムに入力する必要があり(CRM管理システムはKeyence社が独自開発し、日本のチームによって運営されている)、取引に成功した顧客と失敗した顧客の両方が入力する必要があり、現在、CRMシステムが記録した顧客情報は既に百万本を超えており、リアルタイムで更新されている。

 

中国市場への進出を続け、2020会計年度は中国が海外市場の売上高シェア第一位になった:

 

現在、Keyenceは世界で約110カ国・地域の30万社以上の顧客にサービスを提供している。2001年にKeyenceは中国初の販売会社を設立し、2021年迄には上海(本社)、北京、天津、大連、青島、深圳等中国国内の主要都市で販売会社を設立し、膨大な販売ネットワークを形成している。

 

Keyence中国支社分布図

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(情報出所:MIR睿工業が公開資料により整理)

 

2020会計年度Keyence社の全世界売上高は地域別に見ると、中国の売上高のみが増加しており、また、中国市場の売上高シェアは16%で、アメリカの市場売上高シェアを上回り、Keyence社海外市場売上高の第一位となっている。

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(情報出所:MIR睿工業が公開資料により整理)

 

MIR DATABANKデータによると、2020年の中国変位センサ、光電スイッチ市場に於けるKeyenceの市場シェアは第一位であり、それぞれ33.75%25.47%を占める;ビジョン製品市場に於ける市場シェアは第二位となり、15.34%を占める。

*Keyenceの中国市場に於ける製品売上高については、https://www.mirdatabank.comにアクセスしてください

 

 

自動化の高度化傾向は不可逆的で、中国の自動化市場は将来的に期待できる

 

日本のトップ富豪が消費財業界の大手から自動化企業家になったことは、疫病の下で、産業構造が再構築されていることを示した。疫病時代に於ける多くの工場の操業停止は、人を生産の主力とする生産チェーンの脆弱性を示し、産業オートメーションの需要が高まり、ファクトリーオートメーションの高度化が加速した。

日本の自動化企業に比べ、中国の自動化企業の規模は小さく、2021年の中国トップ100富豪ランキングには自動化企業家の姿はない。Keyence2020会計年度(2020321日から2021320日迄)の売上高は316億元で、中国自動化の上位企業であるInovance社の2020年の売上高は115億元で、Keyence社の約3分の1である。中国の自動化業界の発展は日本に比べてまだ大きな差があるが、ここ数年中国の自動化企業の急速な発展を見るべきで、中国の自動化市場の発展の空間は広い。2016年から2020年迄、Inovance社の売上高は36億元から115億元に増加し、年間複合成長率は25.8%に達した。

MIR DATABANKのデータによると、2021年上半期の中国自動化全体市場規模は1529億元で、前年同期比の伸び率は26.9%と過去最高を更新した。自動化の高度化は、従来の業界の効率性と省電力性の向上に役立つだけでなく、人件費の削減にも大きな効果をもたらす。最近、中国では既に多くの企業が自動化の高度化・改造プロジェクトを積極的に推進しており、将来的には、より多くの企業が自動化の高度化の仲間に入り、中国の自動化市場の発展を後押しすると信じている。

2021年中国自動化高度化プロジェクト-一部

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(情報出所:MIR DATABANK)