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中国自動化市場:2021年上半期の10ニュース|MIR DATABANK

2021年上半期、中国のマクロ経済が安定の中で好転する趨勢の下で、中国自動化市場の成長率は前年同期比で過去最高の26.9%に達し、引き続き自動化メーカーの発展に自信を高めた。

MIR睿工業は中国自動化市場に長期的に注目し、豊富な市場調査経験を頼りに、2021年上半期の10ニュースを選び、共に中国自動化市場を回顧する。

(以下のニュースは重要度に基づきランク付けされている)

 

十、第14次五ヵ年計画は引き続き自動化市場の成長を支える

2021年は「第14次五ヵ年計画」の初年度であり、「第13次五ヵ年計画」と「第14次五ヵ年計画」の製造業に於ける内容を比較しても全体的な目標に大きな変化は見られない。

l  「第14次五ヵ年計画」は次の五年間、ハイエンド設備と新エネルギー業界、例えばハイエンドの医療機器、農業機械、先進工作機械及び太陽光発電、風力発電、新エネルギー車等の業界に引き続き重点的に注目し、次第にコア分野の輸入製品への依存を低下させ、これは中国の機械と自動化製品市場の成長を支え続ける。

l   「第14次五ヵ年計画」はもっと具体的な環境保護と持続可能な発展目標を提出し、総エネルギー消費に於ける非化石エネルギー消費比率を202015.9%から202520%迄向上させ、鉄鋼、石油化学、化学工業、非鉄金属、建築材料、紡績、製紙と皮革業界の省エネルギー排出削減はハイエンド省エネルギー機械設備と自動化製品にもっと広い市場空間をもたらす。

 

製造業に於ける「第13次五ヵ年計画」と「第14次五ヵ年計画」の比較

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(データ出所:MIR睿工業が公開資料により整理)

 

 

 

九、外資メーカーの管理職が徐々に現地化していく

202151日から肖松博士はSiemens中国の新董事長、総裁兼最高経営責任者に任命された。これで、SiemensSchneiderABB等の外資系ブランドの中国子会社は、全て中国人が舵を取っている(Schneider-尹正、Schneider Electric SAグローバル執行副総裁、中国区総裁、 ABB-顧純元、ABB(中国)有限公司董事長及びABBグループアジア、中東、アフリカ区総裁)。肖松は、Siemens中国の歴史上第二の華人CEO(以前は2010年に上任した程美、台湾系アメリカ人)で、最初の中国人CEOである。

ますます多くの多国籍企業は人材現地化の戦略を選択し、その優位性は主に:1.文化の違いによる損失を減らし、従業員の管理を行い、及び政府部門とのPR等の方面で、更に良いコミュニケーションを行うことができる。2.現地の経済法制度をよりよく理解することは、企業がこれらの制度をよりよく把握し、よりよく運営するのに役立つ。3.人的資源の使用コストが削減されており、使用先の人的資源コストは親会社から派遣された人的資源の使用コストよりも低くなる傾向がある。4.企業イメージを高め、現地の従業員チームをより安定させる。

 

八、中国の工業情報セキュリティ基準の厳格化

産業用インターネット、モノのインターネット、ビッグデータ等の技術の深い発展に伴い、産業用制御セキュリティ市場は需要の高成長期を迎えている。その為、中国では工業情報セキュリティに関する政策が徐々に増加し、標準の実施が加速している。2021220日、中国市場監督管理総局はGB 40050-2021「重要なネットワーク設備の安全性に関する一般的な要件」を発表し、202181日に実施する。この要件の重要なネットワーク設備は、ルーター、スイッチ、サーバー、PLC設備を含める。上記の設備は、要件を実施した後、資格を持つ機構から安全認証を受け、或いは安全テストに合格した後に販売や提供されることになる。

「ネットワーク重要な設備とネットワーク・セキュリティー専用製品カタログ(最初のロット)

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(情報出所:MIR睿工業が公開資料により整理)

 

七、禾川(HCFA)は上場予定、自動化は引き続き資本市場からの利益を享受する

2021年上半期、科創板IPOの審査は厳しくなったが、産業用自動化制御コア部品の国産化を背景に、資本市場は依然として自動化の発展を期待している。2021510日、浙江証監局は浙江禾川科技股份有限公司が科創板に登録する予定と発表した。HCFA2011年に設立され、技術に支えられる産業用自動化制御コア部品と全体的なソリューションを提供するメーカーである。主に産業用自動化製品の研究開発、生産、販売とアプリケーションを統合しており、主要製品はサーボシステム、PLC等を含む。

MIR DATABANKのデータによると、2020年中国のサーボ市場に於いてHCFAは約3%占め、2021年上半期にはHCFAのシェアが約4%に上昇しており、国産メーカーの第3位となった(12位はInovanceDeltaである)

 

2018-2020年HCFA売上高状況(百万元)

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(データ出所:MIR睿工業が公開資料により整理)

 

六、外資メーカーより内資メーカーはチップ不足にもたらされた影響が小さい

2021年上半期の海外疫病や原材料チップ不足で中国自動化市場にマイナスの影響を及ばし、外資系メーカーの納品は大きな困難に直面したが、内資系メーカーのパフォーマンスは外資系メーカーより明らかに良く、納品速度はより速く一定の市場を獲得し、国産化プロセスを推進した。その要因は以下の通り:内資メーカーの操業再開が早く、柔軟に対応し、ハイエンド製品のチップは在庫があり、一部のローエンド製品のチップは徐々に国産化され、Inovanceをはじめとする内資メーカーのDeltaHCFAEstun、無錫信捷等はいずれも高い成長を維持した。

MIR DATABNAKのデータによると、2021年上半期の中国サーボ、インバーター等の自動化製品市場に於ける内資メーカーの売上高成長率は全体的に外資メーカーを上回った。

2020-2021年中国サーボ市場に於ける内・外資メーカーの売上高成長率

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(データ出所:MIR DATABANK

 

五、2021年上半期CNCが爆発して成長

MIR DATABANKのデータによると、2021年上半期のCNC市場規模は29.02万台に達し、昨年の水準に近き、前年比106.9%増加した。

要因:1.川上では原材料不足で、工作機械市場全体が品薄と過度な買いだめの状態にあり、川下の工作機械メーカーと代理店は値上がりを懸念し、買いだめが多い。2.建設機械、新エネルギー車、3C電子等の川下業界の需要は急速に増加し、特に新エネルギー車業界の成長率は300%を超えた。

2019~2021年中国CNC市場規模

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(データ出所:MIR DATABANK

 

 

四、プロジェクト型自動化市場はQ1に急成長するが、Q2は下落する

MIR DATABANK のデータによると、2021年上半期プロジェクト型自動化市場の市場規模は880億元で、前年同期比19.1%増となった。保守的予測すると、下半期プロジェクト型自動化市場の市場規模は884億元に達し、前年同期比7.7%増となる。楽観的予測すると、下半期プロジェクト型自動化市場の市場規模は903億元に達し、前年同期比10.0%増となる。

l  2021年上半期プロジェクト型自動化市場全体は好調で、Q1プロジェクト型自動化市場は回復し、前年同期比成長率は大きく、34%に達した。しかし、Q2の市場下落は明らかで、重工業、冶金、石油化学、化学工業、電力、市政及び公共施設等の従来型業界は、固定資産投資低下の影響を受け、いずれも成長率が下落し、全体成長率は7.2%である。

l  下半期を見ると、新興業界プロジェクトは製造業の質の高い発展、インフラと民生プロジェクトの着実な進展を促進する。下半期には各重大プロジェクトが着工し、プロジェクト建設ブームをもたらす。「基建通」ビッグデータプラットフォームの統計によると、直近半月だけで19重大の道路プロジェクトは着工し、総投資1595億元であった。最近着工した重大都市軌道系のプロジェクトは5つあり、鉄道は1つで、総投資額は合計1013億元を超えた。その他、一部の地域では高エネルギー消費産業の発展規模を厳しく規制したり、化学工業企業に影響を与えたりする。MIR睿工業は、プロジェクト型市場全体が下半期に安定して回復すると予測する

2020H1-2021H1プロジェクト型業界自動化製品同期比成長状況

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(データ出所:MIR DATABANK)

 

三、OEM市場の内、新興業界は依然として急成長を維持し、従来型業界は輸出の牽引により成長率は大きかった

MIR DATABANKのデータによると、2021年上半期OEM自動化市場規模は649億元で、前年同期比39.0%増となった。保守的予測すると、下半期OEM自動化市場規模は487億元に達し、前年同期比2.3%成長する。楽観的予測すると、下半期OEM自動化市場規模は 524億元に達し、前年同期比10.1%成長する。

l  2021年上半期、産業用ロボット、電池製造設備及び風力発電、太陽光発電、3C、物流等の新興業界の急成長により牽引され、OEM業界全体は急成長を維持する。従来型業界上半期の成長は主に輸出市場により促進され、紡績機械各メーカーの新規受注は程度の差あれ増加傾向がある。大部分企業の受注は下半期まで続き、紡績市場では供給不足現象が現れた。

l  2021年下半期に従来型業界の成長原動力は不足し、新興業界の成長率も緩和すると予測する。外国のワクチン接種率は高まり続き、防疫措置を緩和し、経済活動は徐々に回復し、国内へ移転された紡績業界の受注は減少する。下半期原材料は値上げし、チップ及び部品不足状況は続き、各業界設備の正常生産と納品には引き続き悪影響をもたらす。

2020H1-2021H1OEM業界自動化製品前年同期比成長状況

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(データ出所:MIR DATABANK)

 

二、Inovanceのサーボは第一位を占める

2021年上半期中国自動化市場は急成長し、国産化プロセスも加速し続けている。中国自動化市場に於ける内資リーディングカンパニーであるInovanceの業績は全体的に好調であり、サーボ事業は急速に発展した2021年上半期に、Inovanceの売上高は前年比72.95%増の約82.74億元であり、上場企業株主に帰属する純利益は前年比101.81%増の約15.63億元である。事業セグメントを見ると、汎用インバーターの売上高は15.41億元、汎用サーボシステムの売上高は19.03億元、PLC&HMIの売上高は3.23億元、電気油圧システムの売上高は4.23億元(伊士通を含む)である。

MIR DATABANKのデータによると、2021年上半期に中国のサーボ市場では、Inovance 15.9%の市場シェアで第一位にランクされており、第2位を4ポイント上回り、約5億人民元である。

 

要因:1.川下業界の需要は旺盛であり、特に:新エネルギー車、リチウム電池、半導体、包装機械、太陽光発電等の業界市場は活況を呈し、多くの受注がもたらされた。2.2020年末に、Inovanceは主にPLCとサーボ製品に使用されるチップの在庫を多く準備した為、2021年上半期に業界のチップ不足を背景に、Inovanceはあまり影響を受けず、一部の市場を奪った。

2021年上半期に中国サーボ市場に於けるサプライヤーシェアの状況

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(データ出所:MIR DATABANK)

*備考:MIR 睿工業はInovanceの連結決算に於ける汎用サーボシステム売上高はMIR 睿工業が定義した汎用サーボの他(ACサーボドライブ+サーボモータ)、モーションコントロールカード、紡績機械等業界専用サーボ売上高も含まれると推察される。

 

一、中国自動化市場全体の前年比成長率は過去最高を更新した  

MIR DATABANKのデータによると、2021年上半期に中国自動化市場全体の規模は前年比26.9%増の1529億元に達した。自動化市場は2021年下半期に前年比6%増の1371億元に達すると保守的に予想される。2021年下半期に自動化市場の規模は前年比10%増の1427億元に達すると楽観的に予想される。

 

l  20209月以降、原材料の供給が逼迫し、価格が急騰したが、2021年上半期には緩和されず、状況は更に深刻になった為、川下顧客は過度な買いだめの状況になった。この状況は20211~5月に明らかになっており、上半期に自動化市場の成長率は過去最高を更新した主要原因の一つである。

l   下半期を展望すると、川下顧客の過度な買いだめが緩和され、顧客は徐々に理性的になっている。他国からのワクチン接種が相次ぐことに伴い、下半期の景気回復の可能性が高く、国際貿易環境の悪化に加え、海外からの受注が中国に戻る傾向は鈍化するとみられる。自然災害、戦争及び突発的な衛生事件等の制御不能な要因も中国経済に一定のリスクをもたらし、自動化業界に於ける川上のコア部品の供給の困難と、自動化の川下業界に於ける投資の減速等を直接招く為、2021年下半期の市場成長率は上半期を下回ると予想される。

 

2019-2021年中国自動化の全体的な市場規模

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(データ出所:MIR DATABANK)