業界観測

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産業用ソフトウェア」:トラックを疾走するのは誰?

​6月26日、Rockwell は22.2億ドルで世界的先端スマート製造プラットフォームサプライヤーのPlex Systemsを買収することを発表し、これで同社のデジタル変換プロセスは加速、

6月26日、Rockwell は22.2億ドルで世界的先端スマート製造プラットフォームサプライヤーのPlex Systemsを買収することを発表し、これで同社のデジタル変換プロセスは加速、これは産業用ソフトウェアの買収に於ける外資企業の1つのアクションである。


産業用ソフトウェアはすでに現代工業プロセスの「魂」になったと言われている。

産業用ソフトウェアは用途によって分類され、一般的に研究開発設計系、運営管理系、生産スケジューリング及びプロセス制御系、デジタル化交付、組込みソフトウェア系及び現在台頭している産業用クラウドプラットフォーム系に分類される。

(図表1:産業用ソフトウェアの定義図)

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(情報出所:MIR DATABANK

2019年にファーウェイが米国に制裁された「実体リスト」には、チップの他に、供給が停止したチップの設計に必要なEDAツールがある。ファーウェイは毎年百億ドル以上のチップを外国から輸入しており、これらのチップの設計はEDAに依存していることを知っている人は少ない。

従って、米国がファーウェイを制裁する最も乱暴な方法はEDAのソフトウェアライセンスを取り消すことであり、これもまさに産業用ソフトウェアの巨大な威力である。

統計データによると、中国のハイエンド産業用ソフトウェア市場の80%は外国に独占されており、ミドル・ローエンド市場の独自開発の割合も50%弱となっている。

ある制限された市場で、私たちはWeChatTikTokのような世界を魅了するアプリを開発したが、産業用ソフトウェアの競争で外資系メーカーに排除された。

(図表2:自動化製品メーカーの主なソフトウェア製品のカバー図)

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(情報出所:公開資料によりMIR睿工業が整理)

 

01.産業のボスたちのM&Aの版図

外資系メーカーの産業用ソフトウェアの版図を見ると、大部分はM&Aに関連したものである。これらの大手企業のM&Aの歴史は企業成長の歴史でもある。

彼らは自身の戦略推進に基づき、資本手段を採用してM&Aを通じて幅広くカバーしている製品ラインと水平方向の戦略配置を急速に完備し、ひいては企業のモデルチェンジを実現した。

製造業界では、皆様がよく知っている有名な外資系企業は、いずれもM&Aの道で急速かつ好調に発展している。

かつて「これ以上硬くない」と言われていたSiemensは、2001年から20社以上の産業用ソフトウェア企業を相次いで買収した。買収が進むにつれて、SiemensSAPに次ぐヨーロッパ第2の大ソフトウェア企業になった。

買収の背景には、Siemensのソフトウェアレイアウトは戦略全体の推進に於いて益々重要になっていることがある。

2011年、ドイツは「インダストリー4.0」という概念を正式に提唱し、スマート製造に於けるソフトウェアの地位を強調し、Siemensがメインプロモーターとして参加した。

2014年に、「2020企業ビジョン」計画が提案された。Siemensはデジタル化を今後の主要成長分野とする「デジタル化工場グループ」を設立した。

201882日、Siemensは企業の構造を調整し、「デジタル化工業」、「天然ガスと発電」、「スマートインフラ」と共に、3社の主要な事業企業となった。

現在、電気化と自動化は依然としてSiemensに於ける主な収益源であるが、SiemensはソフトウェアM&A戦略と内部戦略の調整により、デジタル化事業は利益率が最も高く、成長率が最も速い部分となった。

(図表3SiemensソフトウエアM&Aの大きなイベントとレイアウト)

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(データ出所:公開資料によりMIR 睿工業が整理)

 

Siemensの先見性に比べ、Schneider Electricは製品レイアウトに於いて「後から人を制する」達人である。

その特徴は市場を見据えて買収し、強力な統合と普及手段で急速に市場を獲得する。

Schneider Electricに於ける産業用ソフトウェアのレイアウトは10年前Citectの買収から始め、2014年に英維思(Invensys)を買収した後、ソフトウエアの領域を拡大し続けた。現在では、プロセス、混合、及びディスクリート製造のライフサイクル全体をカバーする数少ない産業用ソフトウェア製品及びソリューションのサプライヤーとなっている。

2018年、Schneider Electricのイノベーションサミットで明らかにしたことがある:「デジタル化の変革の傾向に直面し、Schneider Electricは製造企業のデジタル化プロセスに力を与え、これらの企業と協力して変革とアップグレードのベストプラクティスの道を模索する。」

現在、Schneider Electricはプロセスシミュレーション、エンジニアリングデザイン、エンジニアリング構築、エンジニアリングデリバリー、サプライチェーン最適化、オペレータトレーニング、予測性メンテナンス、エネルギー管理等、一体化した一連のプロセスソフトウェアシステムを持っている。エンジニアリングを重点とするSchneiderは、産業用ソフトウェア分野でSiemensと競争市場にいるが、少し違うようだ……

(図表4Schneider ElectricソフトウェアM&Aの大事件とレイアウト)

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(情報出所:公開資料によりMIR 睿工業整理

前者の他、GEHoneywell、そして冒頭で述べたRockwellのような他の企業も優秀なソフトウェア開発企業を買収し続けており、スマート製造、デジタル化の中で市場シェアを獲得することを目的としている。

(図表5:近年の他メーカーの産業用ソフトウェアM&A事件)

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(情報出所:MIR 睿工業は公開資料により整理する

競技場には、硝煙がもうもうと立ちこめている。オートメーション分野での競争に続き、産業用ソフトウェア分野での競争が始まっている。

 

02. 難局の「芯が欠け魂が少ない」

「芯が欠け魂が少ない」ことはずっと中国産業の痛みである。

外国大手企業のソフトウェア買収布石に比べて、国内企業は産業用ソフトウェア市場で現れた現状は「管理ソフトウェアが強く、エンジニアリングソフトウェアが弱い;ローエンドのソフトウェアが多く、ハイエンドのソフトウェアが少ない」の状態である。

実際には、前世紀90年代の中期には、国産産業用ソフトウェアの平均市場シェアはまだ25%であり、さらには個別の特別分野では45%前後に達していた。

しかし、今では、逆に国内の産業用ソフトウェア、特にハイエンドの産業用ソフトウェア市場では、基本的に外国に独占されている。

国内ソフトウェア市場の苦境を乗り越える道は「自主革新or買収・合併」の他がない。

買収への近道はない。

知的財産権だけを見ると、欧米一体。彼らはシームレスにリンクしたM&Aを実現することができ、このような「あなたの中に私があり、私の中にあなたがある」局面は、ドイツと米国を二分することができる。

自主革新から見ると、国内の産業用ソフトウェアは政策から人材の支持点と支持力まですべて比較的に弱くて、更にここ数年の「重硬軽軟」(工業を重要視し、ソフトウェア産業があんまり重要視されない)の傾向を加えて、制造業企業は国内ソフトウェアに対する受け入れ度が低くて、商業化を実現することが難しい。

しかし、状況は完全に悲観的ではない。

競争市場から諦められた後、至る所で「発展を制限される」ため、今では制造業でも、制御メーカーは産業用ソフトウェアを配置し始めている。

2018年、Inovanceは産業用ソフトウェア市場の布石を開始した。中国制造業の顧客が多く、データを入手する能力もあるInovanceは「会社がデータの中台を作れば、より高い堀を打ち立てることができる」。

(図表6Inovance産業用インターネット製品ラインの戦略的企画)

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データ出所:インターネット

 

201910月、中望軟件は第2ラウンド1.4億元の資金調達を完了したと発表した。2018年末には第1ラウンド8000万元の資金調達を完了した。今回の資金調達は、国内の研究開発および設計業界のソフトウェア分野で最も高い評価を得ている最大の資金調達事例にもなる。

その為、国内の産業用ソフトウェアも資本の注目を集めた。MIR DATABANKデータによると、2021年の中国産業用ソフトウェア市場は前年比18%成長すると予測される。

(図表72018-2025中国産業用ソフトウェア市場規模図)

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(データ出所:MIR DATABANK

 

03余裕を持たないVS挫折を経験すればするほど勇ましくなる

制裁され、封じられ、首を絞められる……多き岐路、今どこに?

制裁しよう、封鎖しよう、と言う人がいる。それから十年八年間封鎖すると、中国の製造業の問題は解決された。

その言葉には悲壮感があり、希望があり、希望には使命もある。

2020325日、工業情報化部報道官は共同統制・共同防衛会議で次のように「工業情報化部は国家ソフトウェア重大プロジェクトを実施し、力を入れて主要ソフトウェアの「カーネック」問題を解決し、工業技術のソフトウェア化の推進に力を入れ、ソフトウェア定義ネットワークの応用普及を加速する」指摘した。

データは変化を示す。

トラックから蹴り出された日は苦しいが、トラックに戻るのはさらに大変だった。

製造業のモデルチェンジとグレードアップが加速し、政策が絶えず産業用ソフトウェアを切り開く時代が到来した。国産化の向上を背景に、中国の製造業が復活することは不可能ではないだろう。