業界観測

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国産汎用減速機のハイエンド化は不可欠

ポストコロナ時代、中国製造業の回復に伴い、工業自動化は各業界で普及している。国家の「製造業強国」戦略に支えられている。

ポストコロナ時代、中国製造業の回復に伴い、工業自動化は各業界で普及している。国家の「製造業強国」戦略に支えられている。また、川下需要のハイエンド化と製品のグレードアップにより、国産ミドル・ハイエンド汎用減速機の需要が増大したと同時に、国産ミドル・ハイエンド汎用減速機市場は供給不足になった。従って、需要増加と供給不足に牽引され、国産汎用減速機のミドル・ハイエンド化は不可欠である。


ミドル・ハイエンドの汎用減速機に対する国内市場の需要が高まる


中国の人口ボーナスが次第に消え、労働力コストが絶えず上昇することに伴い、機械が人手に代わるのは必然的な流れとなっている。このような機械が人手に代わる工業自動化の流れで、減速機は自動化ハードウェアに不可欠な構成要素として、近年市場は成長傾向にある。MIR DATABANKのデータによると、2020年の中国減速機市場規模は1200億元近くで、2016-2020年の減速機市場規模CAGRは8.94%で、成長が安定した。減速機には汎用減速機と専用減速機が含まれる。汎用減速機とは、モジュール化、シリーズ化された中小規模の減速機とセメント、鉱山等の業界で使用されている重負荷産業用ギアボックスを含む、工業生産が各川下業界に広く使用されている減速機を指す。専用減速機は特定の業界で使用され、船用減速機、風力発電ギアボックス、産業用ロボット、工作機械、航空宇宙等の分野で使用されている精密減速機等、非標準、カスタム化された製品が多い。 減速機市場では、汎用減速機は約50%を占め、市場全体規模は約500-600億元である。

 

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(データ出所:MIR DATABANK)


3つの駆動要素により、ミドル・ハイエンドの汎用減速機市場は、今後の需要が増加していく。一つは国家戦略の駆動:中国の「製造強国」への進行に伴い、川中のハイエンド機器製造プロセスの質も向上しつつあり、ミドル・ハイエンド機器の生産量の割合は継続して増加する。二つは川下企業「消費アップグレード」の駆動:中国の産業化の迅速な推進につれて、業界の集中度が向上し、企業規模が大きくなり、機器性能への要求が高くなる為、従来の減速機ローエンド市場の機器がアップグレードを余儀なくされ、ミドル市場の規模は持続的に拡大している。三つは汎用減速機製品アップグレードの駆動:ウォームギア減速機の円筒ウォームとウォームホイールの間に主に摺動摩擦で、材料のロスが高く、しかも伝達効率が低い為、現在使用率は徐々に低下している;ギア減速機は、各ギア段の伝動で減速を実現し、柔軟で多様な組み合わせができ、ギア比が高く、使用範囲も拡大している。


ミドル・ハイエンド汎用減速機は供給不足


現在、中国汎用減速機の供給側には技術的障壁とブランドプレミアムの違いがあり、上から下へ順に並べるなら、大体外資系ブランド、有名な国産ブランドと知名度の低い国産ブランドに分けられる。SEW、Siemens、Flender、NORD、LenzeとSUMIMOTOをはじめとする外資系メーカーはハイエンド汎用減速機に位置づけられ、市場シェアは約20%。江蘇国茂、江蘇泰隆、寧波東力と南高歯を代表とする有名な国産メーカーはミドルエンド汎用減速機に位置づけられ、市場シェアは約15%-20%。その他は知名度の低い国産ブランドであり、市場シェアは合計60%超え、ロングテールの特徴が目立つ。

 

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(データ出所:MIR DATABANK)


汎用減速機のハイエンドブランドは一般的に輸入設備加工部品を使用し、外部調達の標準型部品も国際の上位ブランドに製造され、例えば、SKF、SOFTTO等。2020年に疫病が継続して感染拡大し、一部の海外工場は影響されて生産を停止した。同時に、国際物流も疫病の悪影響を受けて事業の展開が妨げられた。上記の二つの原因でハイエンドブランド汎用減速機の生産・供給能力が激減し、上位メーカーのSEWを例に取ると、同社のスリーインワン減速機製品の一般納期は元の2~4週間から4~6週間に延びた。産業用ギアボックスの納期は元の8-10週間から14週間以上に延び、前と比べて納期は50%延びた。同社の主要顧客は早めに発注し、そして、スペアマシンを使用して生産需要を満たす。だが、一部のプロジェクト実行が緊急を要する顧客の場合、SEWが供給を保証できない時、一部の受注を中国に於ける知名度が高いメーカーに移転する。

中国に於ける知名度が高いブランドもこのような状況があり、寧波東力を例に取って、同社の納期は元の4週間から6週間前後に延び、一部の顧客は受注を知名度があまり高くない国産メーカーに移転せざるを得ない。

ミドル・ローエンド市場に於いて供給が需要に応じきれない状況が深刻化している為、現在ミドルエンドブランドでハイエンドブランドを代替し、ローエンドブランドでミドルエンドブランドを代替する傾向になる。汎用減速機の市場需要が増え続けるにつれて、この傾向が更に著しくなり、国産汎用減速機のミドル・ハイエンド化したのを促進した。


国産汎用減速機のミドル・ハイエンド化した状況  


1.  国産汎用減速機のミドル・ハイエンド化した影響政策

直近5年間、中国政府が国産製造設備のハイエンド化したのを重視しており、科技部、工信部、発展改革委員会等国家部門委員会は一連のセット政策を打ち出した。中国の製造発展目標を実現し、中国製造業の高品質発展を促進する為に、国産汎用減速機業界もミドル・ハイエンド化したスペースを加速する必要がある。


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2.  国産汎用減速機メーカーのハイエンド対策

 

南高歯: 2018年11月に、中国工程機械工業協会の指導の下、徐州工程機械集団有限公司、浙江大学と業界に於けるホスト製造企業、部品企業、高等学院、科学研究院、基礎材料セット企業などの54社が協力して徐州にハイエンド工事機械及び核心部品産業技術革新戦略連盟を設立した。

 

江蘇国茂:2020年9月、江蘇国茂は常州莱克斯諾が中国で保有しているギアボックス関連事業および事業資産の一部を580万ドルで買収すると発表した。莱克斯諾減速機の製品は、品質もブランドもSEW減速機とほぼ同じで、買収後は「捷諾」ブランドでハイエンド減速機市場に注力する。


江蘇泰隆:第12次5カ年計画の期末には早くも工業情報化部が「工業強基(工業基礎を強くする)戦略を提唱し、江蘇太龍が主導してこの戦略に応答した。情報によると、第13次5カ年計画期間(2016-2020)の間に、泰隆グループは、ハイエンドの生産および試験装置の購入に毎年1億元以上を投資した。毎年、売上高の約4%が企業・科学研究所・高等学校の協力に使われている。国防、軍事産業、航空宇宙、原子力、風力発電、新エネルギー等の国家経済の主要分野におけるアプリケーションのニーズに応えて、プロセス技術の開発と新製品の研究開発と製造に注力し、伝動装置のミドル・ハイエンドへの発展を牽引する。


杭州傑牌:2015年から、杭州傑牌はウォーム減速機、ギヤ減速機、タワークレーンの製造メーカーからスマート伝動ソリューションサプライヤーとモデルチェンジ・アップグレードを実施し始めた。2018年12月3日、傑牌と阿里雲は戦略的協力協定を締結し、双方はクラウドコンピューティング、ビッグデータ、モノのインターネット(IOT)などの技術に基づいてデジタル化工場と製品を共同で構築し、スマート工場、スマート製品、スマートサービスの新たな挑戦を切り開いたと発表した。

国内の汎用減速機メーカーは既にミドル・ハイエンド市場に参入したが、海外上位企業の事前レイアウトが国内のハイエンド汎用減速機市場の大部分をしっかりと占めている。国茂股份、江蘇泰隆などの企業は、製品品質と競争力のある価格ランクに依存して、国内の一流ブランドとなったが、ハイエンド市場シェアはまだ比較的低い。また、他のミドルエンドの国産ブランドが占める割合も高くなく、残りの大部分はローエンドの知名度が低い国産ブランドが占めている。今後、国産汎用減速機のハイエンド化が長期化する見通しである。