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様々な困難が有ろうとも、信念を貫けば必ずや光明が現れる Hollysys | 権利の為の戦い 詳細分析

2020年7月以降、中国DCS大手企業の1つであるHollysysは、経営陣の混乱、株価の下落、買収のオファー等のイベントを経験した為、衆目を集めた。

同時に、よくHollysysと同列に論じられる中国DCS市場に於けるもう1つの大手企業である浙江中控は、202011月に上海証券取引所の科創板に正式に上場し、株価の上げ幅は210%以上、時価総額は500億元を超えた為、工業自動化の焦点になった。Hollysysは、早くも2008年に中国の自動化分野に於いてアメリカで最初の上場企業になったが、現在(202148日)の時価総額は浙江中控の8分の1にすぎない。この週刊で、MIR睿工業はこの謎を解き、過去1年間にHollysysに何が起こったのか、そして同社の将来の方向性を探る。

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Hollysysの背景

 

HollysysHollySysHOLI.US)は1993年に成立され、その前身は電子工業部の第六研究所であり、20088月にアメリカで上場した。同社は、中国に於ける工業自動化とデジタルシステム製品とソリューションサプライヤーのリーディングカンパニーであり、事業はプロセス製造、ディスクリート製造、軌道交通、医薬健康、都市インフラ施設等の重要な分野をカバーしている。そのコア事業はDCSであるが、浙江中控と比較すれば、中国の高速鉄道と原子力発電の中核制御システム技術を掌握していることが最大の優位性である。

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

 

Hollysys 集団は、中国に9社の直接持株/資本参加会社、世界中に22社の関連持株/資本参加会社がある。アメリカでの上場企業は主に北京和利時と杭州和利時である。

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

 

Hollysysの事業は、主に工業自動化、軌道交通自動化、医療自動化の3つの主要分野に集中している。

 

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

 

 

現在、中国の高速鉄道と原子力発電の中核制御システム技術は既にローカライズされ、中国の高速鉄道制御システムには3つの主要なサプライヤーがいる:Hollysys(HOLI.O)、中国鉄道科学研究院と中国通号であり、原子力発電の制御システムは主にHollysysから提供される。中国のDCS市場では、中国の国産ブランドは既に海外のブランドと競争し、一定の代替効果を形成することができる。近年、中小規模のプロジェクトの急速な発展により、中国DCS市場に於ける国産大手企業である浙江中控とHollysysの市場シェアが大幅に伸びる。

 

2020年中国DCSサプライヤーの市場シェア(%

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(データ出所:MIR Databank

 

上層部の人事異動が突然起こる、闘争が現れる

 

邵柏慶は罷免された

l  20207月、Hollysysは取締役兼CEOである邵柏慶を全ての役職から突然解任した。元取締役の喬力が取締役会の議長になり、元社外取締役兼監査委員会の議長である科林·宋が同社のCEOになった。20208月、Jerry Zhangは同社の社外取締役等の役職を辞任した。20209月、Kok Peng THEKhiaw Ngoh TANが社外取締役等の役職に任命された。

l  20201214日、Hollysys はさらに邵柏慶寧波子会社の会長職を罷免した。邵柏慶が罷免後に参加するいかなる業界会議、学術会議、商業会議及び商業活働は、Hollysysのメンバー企業とは関係がなく、Hollysys は同氏の個人活動によるいかなる法的責任も負わないと発表した。

 

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

 

 

邵柏慶とは誰か?

邵柏慶は浙江省慈渓市で生まれた。設立時にHollySysに入社し、下っ端からスタートした。Hollysys20年近く働き、取締役会会長として罷免された彼がよく言われる身分はHollysys創業者の王常力の教え子である。 Hollysysを去った後、邵柏慶は「正当な理由がなしに」罷免されたと公言した。邵柏慶が罷免された理由については、在職中に担当した慈渓プロジェクトが鍵となる導火線である。プロジェクトの建設中に資金問題に遭った際、邵柏慶とHollysys取締役会の間に意見の不一致が生じた。同プロジェクトは、邵柏慶の故郷である慈渓市にあり、慈渓のハイテク産業開発区に慈渓の生産とインテリジェントな製造拠点を設立するもので、総投資額は31500万元である。第1期の敷地面積は4万平方メートル、新設建筑面積は62800平方メートルである。プロジェクト開始後、年間9700台のキャビネット、3万台のバルブ、15000台のメーター、90台のスマート装置、5200台の康源装備、355800セットのキャップの生産能力を備え、2021年末に生産の条件を整え、部分稼働を開始する予定である。同プロジェクトは20191126日に開始された。邵柏慶がHollysysを離れた後、現在停止状態になっている。 Hollysysの内部関係者も同プロジェクトを注意深く監視し、それについて話すことを避けた。

この人事異動後、Hollysysのすべての主要権利は取締役会にある。会社の実質的な支配権利がすべて取締役会にあり、取締役の任期が無期限である為、株主は理由なく取締役を罷免する権利はない。また、Hollysys20209月にポイズン・ピル計画を改訂し、上場企業に限らず、取締役が会社全体を管理する権利を持つようにした。(「ポイズンピルプラン」のフルネームは「株式希薄化敵対的買収防衛策」であり、1982年に有名なアメリカのMA弁護士マーティンリプトンによって発明された用語である。会社が敵対的買収に遭遇した時、特に買収者の株式が1020%に達した時に、支配権を守る為に低価格で多数新株発行するいう策である。目的は、買収側の株式比率を下げ、買収コストを増加させることで、買収側が持ち株の目標を達成できなくすることが目的ある。)

その後、お互いに一進一退を繰り返しながら、争いはエスカレートしていく。このような状況が更に深刻になったのは、HollySys米国の株式市場から撤退して中国市場に戻るのを背景に、会社の時価総額は大幅に増加することが確実である一方、同社が中国の株式市場に戻る過程で、同社の株式保有構成を変更する機会を生み出す可能性がある為だと、筆者は考えた。両方の背後にある資本力の網引きも無視できない。

 

邵柏慶はHollysysを買収する際に複数の障害に悩まされた

Hollysys罷免された後、邵慶はHollysysの買収計画を立ち上げた。邵伯慶は、同社の取締役会で外国人のメンバーが多いという状況を変える為だと述べた。しかし、この買収計画はうまくいかず、複数の障害に悩まされた。

 

Hollysysは買収交渉を正面から拒否:

l  2020127日、慶、Ace Lead(慶が株式を保有する)及びCPE Funds

Management Limitedがコンソーシアム合意書に署名し、まだ彼らが保有していないHollysysの発行済みの全ての普通株を1株あたり15.47ドルで買収する予定で、この価格は124日(最初提案日の前の最後取引日)Hollysysの終値より24%のプレミアムが上乗せされていることになる。慶とAce Leadはそれぞれ410万の普通株と430万の普通株を保有しており、Hollysysの株式に占める割合が合計14%に達した。当該コンソーシアムは8.698億ドルをかけてHollysysの残された全ての発行済み株式を買収する予定。

l  2021年1月8日、Hollysys取締役会は買い手(邵柏慶、Ace LeadとCPE Funds

Management limited)の拘束力のない最初の買収提案を拒否した。その理由は、会社の価値を過小評価し、株主の利益に合致しないからである。

l  2021年2月1日、邵柏、Ace LeadとCPE Funds Managementからなる買い手は、会社の予定買収価格を1株当たり17.1ドルに11%引き上げた。

 

邵柏夫人が側面から買収を阻止した:

l  2021219日、邵柏の夫人である岐愛筠は弁護士に依頼して声明を発表した。その声明によると、最近、Hollysys取締役会が私有化の交渉に関するニュースを受け取った。双方がまだ法的に有効な婚姻関係にあることを考慮し、岐愛筠の書面による事前の同意なしに邵柏慶は名義の任意の夫婦共同財産(即ち、邵柏慶は保有しているHollysysの上場会社の普通株が合計4,309,223)を移転、譲渡、売却、融資や投資等のような夫婦の共同財産に対していかなる欠陥性、制限的な手配や行動してはならないと。

l  2021225日、邵柏慶は岐愛筠の声明に応えた:邵柏慶とその買い手がHollysysに提案した買収は正常な投資に属し、夫婦の財産を個人的に処理する行為は存在せず、岐愛筠女史の同意を得る必要もない。

 

邵柏慶はHollysysに対して訴訟を起した:

l  2021210日、邵柏慶とAce Leadは、202121日にイギリス領ヴァージン諸島の東カリブ最高裁判所の商事部において、Hollysysに対して訴状を起した当該訴訟の中で、邵柏Ace Leadは裁判所に、Hollysysの最近の会社組織の概要と定款の改正案を無効にして覆す;会社が当該改正案に依拠し、会社組織の概要及び(或いは)定款を改正する株主の権利或いは権益をいかなる形で制限することを禁止する;この訴訟を通じて、株主の同意なしに会社が組織の概要や定款を改正して株主の権利や権益を制限することを禁止する、という判決を求めた。

l  2021314邵柏慶Ace Leadはニュースを発表し、イギリス領ヴァージン諸島の東カリブ最高裁判所の商事部のGerhard Wallbankの裁判長は第一次判決を下した。この判決は、202121日に和利時自動化科技有限公司へ提起された訴訟で暫定的な勝利を意味する。判決によると、同社(和利時)は既に若干承諾した。そのうち、本訴訟の最終判決まで、同社は原告が異議を申し立てた会社組織の概要及び定款改正案に基づいた一切の措置を取ってはならないことを含む。したがって、現在同社は違法な定款改正案に基づいて、株主が買い手の提案する買収提案を検討することを阻止できない。

l  2021315日、和利時自動化の取締役会は和利時信託利益委員会の通知を受け、 202139日、香港高等法院で邵柏慶とAceLeadに対して訴訟が提起されたAce Leadが保有する会社株式の実益所有権と、邵柏慶氏が保有するAce Leadの株式の実益所有権には法的紛争があるため、和利時自動化が必要な問い合わせを行う。

l  2021316日、和利時はニュースを発表し、邵柏慶とAce Leadが発表した「202121日和利時自動化科技有限公司へ提起した訴訟は暫定的な勝利を取得した」というプレスリリースに「誤解を招く」説明を含む。和利時は、判決は、裁判所がこの問題について最終判決を下すのを待っている間に当事者が達した合意を表すため、判決は原告の株主の立場に立って裁判所が下した「勝利」または「確認」ではないと述べた。

l  2021322日、邵柏慶とAce Leadは和利時2021315日のプレスリリースに応じて、次のように声明した:訴訟は提起されたものの、香港高等裁判所は、香港地域外に所在する原告株主への関連する請求または訴訟文書の送付を許可しておらず、申立当事者は、まだ香港高等裁判所を納得させていない。なぜ香港と何の関係もない被告者に管轄権を使用するかの説明が無い。

 

現在邵柏慶は和利時を買収する事案は進行中である。邵柏慶とAce Leadの和利時は現在会社の組織概要と最近の定款改正案、そして一切の方法に基づき、株主は会社の組織概要/または定款を訂正する権利/または権益の制限を禁止する訴訟に対して、和利時は同訴訟の公判を20217月に前倒しすることに同意した。   

 

上層部の人事混乱が株価と業績に与える影響

MIR睿工業は、和利時上層部の人事混乱が株価に及ぼす影響は一時的なもので、事件発生後、和利時の株価は急速に下落したが、20209月に和利時の新たな経営陣が確定した後、株価は回復を続け、現在は事件発生前の水準まで回復しているとみている。会社の業績は人事異動の影響をほとんど受けず、2020年下半期には中国国内の新型コロナウイルスの抑制が比較的良好なため、プロジェクト型市場が回復し始め、和利時の営業利益は前年同期比プラス成長に転じ、純利益の減少幅は前年同期比で縮小した。

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Hollysys (HOLI)

 

2019-2020Hollysys四半期別の売上高状況

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

 

2021329日にHollysysが公表した資料で:北京市での効果的な防疫対策措置及び旺盛な市場需要の為、Hollysysは積極的にスタッフに「現地で年越し」を提唱し、残業して生産を拡大した。春節直後に100%操業再開を実現し、20211-2月にHollysysの売上高は2020年と比べて60%強増となり、疫病による悪影響を受けなかった2019年と比べて30%以上増加した。2021会計年度(2020630-2021630)Hollysysの売上高は約6%8%増となると予想される。

 

 

Hollysysの民営化、A株投資に戻るのは時代の趨勢、問題点は企業の所有権

 

近年、益々多くの中国企業は海外で上場するに連れて、企業は米国に於ける株式の取引量は大きくなく、株価も継続して低迷していると気がついたが、中国国内市場での株式市場は益々成熟しており、国家新経済戦略で個人投資家はインターネット等新興経済モデルへの認知度は向上し、加えて常にとある会社は数倍に海外に於ける会社の時価を取得した事例があり、これらは多くの中国関連株会社がA株投資に戻ったと牽引した。例えば、2020716日にSMICは正式にA株市場に参入し、上海証券取引所「科創板」で上場し、202149日迄SMICA株の時価は4504億元であるが、20195月にSMICは米国株式市場から退出する時に時価は僅か5.5億ドルであった。

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中芯国際[688981]    2021.04.09

 

Hollysysは近年米国株式市場でのパフォーマンスは良いとは言えず、特に2018年から株価は引き続き低下し、Hollysysグループは既に民営化し、A株投資に戻ると計画したと予想された。

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Hollysys(HOLI)

今のところ最大の問題点は民営化とA株投資に戻ったHollysysグループの所有権を持つ方は誰であるか。邵柏慶Hollysys創立者の王常力の学生であり、長らくHollysysの発展に力を入れた。現職のグループ取締役会長の喬力は王常力の10年以上のパートナーであり、喬力の努力でHollysysは初期軌道交通業界、原子力発電業界で事業を展開できた。両社は各自の利益の要求に基づき、バランスポイントを見つけ出せば利益戦争をやめて親善関係を結ぶかもしれないと作者は思った。しかし、目の前の状況を見ると、邵柏慶等の失敗は既に事実となる。7月に裁判所による両社の訴訟判決結果は今回の事件に始末を付ける。

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)