業界観測

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中国自動化市場の2020年上半期の回顧と下半期見通し

MIR DATABANKのデータによると、新型コロナ感染拡大と中米関係の深刻化により、2020年上半期の自動化市場は小幅なマイナス成長に陥った。



その中で、第1四半期の自動化市場は低迷し、流行状況は効果的にコントロールされ、第二四半期の自動化市場の回復の兆しは明らかである。これについて深く議論するために、MIR叡工業は2020年上半期の自動化市場を振り返って下半期の景気動向を予測する。

 

*自動化市場定義:

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1. 中国自動化市場は2020年上半期に小幅なマイナス成長に陥った。悲観的に予測すると、自動化市場が前年比横ばいになる;楽観的に予測すると、下半期の自動化市場は小幅でプラス成長になる。

2020年上半期の自動化市場の規模は597億元、前年比2.8%減少した。そのうち、第1四半期の自動化市場の規模は263億元、前年同期比12%減少した;第2四半期の自動化市場の規模は334億、前年比6%増となった;悲観的に予測すると、2020年下半期の自動化市場規模は594億元に達し、昨年下半期の市場規模と同程度となる。楽観的に予測すると、2020年下半期には自動化市場の規模は623億元に達し、昨年下半期の市場規模と比べて5%増加する。

l  新型コロナウイルスが流行してから、人の移動制限、春節休暇の延長、交通規制等の影響を受け、自動化市場の下落幅が大きい;第2四半期には国内の流行状況は効果的にコントロールされたが、海外の感染拡大が深刻化した。パニック買い、伝統的なOEM業界の回復、新興OEM業界の着実な成長、一部のプロジェクトベース業界の段階的な回復などの要因により、自動化市場は前年比急速な成長を遂げた。2020年上半期の全体自動化市場はプロジェクトベース市場の影響を受け、前年同期より小幅に減少した。

l  2020年下半期を展望すると、新型コロナ感染拡大と中米関係の深刻化などは依然として存在しているが、政府の経済刺激策によりインフラプロジェクト向けの自動化製品の調達量は下半期に徐々に増加すると予測;伝統的なOEM業界はさらに回復し、国家政策から支援を受ける半導体やリチウム電池などの新興OEM業界も成長を維持する。

2018-2020四半期ごとに中国自動化全体市場規模及び予測

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(データ出所:MIR Databank

2. 中国OEM自動化市場は2020年上半期に小幅成長しており、悲観的に予測すると、下半期は前年同期比マイナス成長になる;楽観的に予測すると、下半期も成長傾向が続く。

2020上半期のOEM自動化市場規模は349億元、前年同期比4.7%増加した。そのうち、第1四半期のOEM自動化市場の規模は152億元、前年同期比4%減となった。第2四半期のOEM自動化市場の規模は197億元、前年同期比14%増加した。悲観的に予測すると、下半期のOEM自動化市場の規模は312億元に達し、前年同期比1%減少する。楽観的に予測すると、下半期のOEM自動化市場の規模は328億元に達し、前年同期比5.1%増加する。

l  新型コロナ感染症により、第1四半期には紡績機械、エレベーター、工作機械などの労働集約的な製造加工を主とする伝統的なOEM業界の下落幅が大きい。第2四半期には国内の流行状況は効果的にコントロールされた為、紡績機械を除く建設機械、製薬機械、工作機械、包装機械、エレベーターなどの伝統業界はいずれも大幅に回復し、新興業界では産業用ロボットも好調だった。

l  上半期は電子半導体、リチウム電池、物流、3C などの新興産業及び医療機器業界が急速に成長している。

l  下半期、海外疫病に伴って中国OEM自動化市場における主要部品の買いだめ現象が後追い。伝統業界(特に紡績機械業界)はさらに回復し、中国が疫病の予防制御の常態化に入り、医療機器業界は引き続き成長し、新興業界は急速な成長を維持する。


 

2018-2020四半期ごとに中国自動化OEM市場規模及び予測

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(データ出所:MIR Databank)

 

OEM業界における自動化製品の成長率

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データ出所:MIR Databank


 

3.中国自動化のプロジェクトベース市場は2020年上半期に大幅に下落し、下半期にマイナスからプラスに転じると予測。

2020年上半期、自動化のプロジェクトベース市場規模は247億元で、前年同期比11.8%減少した;その中で、第1四半期のプロジェクトベース市場規模は110億元で、前年同期比21%減となった;第二四半期のプロジェクトベース市場規模は137億元で、前年同期比3%減となった。下半期の自動化プロジェクトベース市場規模は282億元で、前年同期比1.5%増と悲観的に予測;下半期の自動化プロジェクトベース市場規模は291億元に達し、前年同期比5%増と楽観的に予測。

l  1四半期の自動化プロジェクトベース市場は新型コロナウイルスの影響を受け、下落幅が大きかった。第二四半期に一部のプロジェクトベース業界は次第に回復し、その中で市政、冶金、石油化学の回復は比較的に速かった。石油及び天然ガス、化学工業、食品飲料、製紙、自動車などの業界は第二四半期に回復の兆しが見られ、下落幅は明らかに小さくなったが、上半期の全体市場は依然として低迷し、マイナス成長を続けている。

l  下半期を展望すると、政府の経済政策をけん引し、加えて上半期に建設を開始したインフラ建設プロジェクトは、自動化製品の調達を徐々に増加させる;上半期には建設と承認を見合わせたプロジェクトは、下半期にも開始する見通しだ。MIR叡工業は全体的なプロジェクトベース市場には変曲点が出現し、マイナスからプラスに転じると予測した。


 

2018-2020四半期ごとに中国自動化プロジェクトベース市場規模及び予測

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(データ出所:MIR Databank

 

各プロジェクトベース業界自動化製品成長率

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(データ出所:MIR Databank

 

4.自動化プロジェクトベース市場の外部環境分析——不安定な外部環境の下で、挑戦とチャンスが併存

4.1新型コロナがもたらす挑戦とチャンス

1新型コロナのショック傾向は、徐々に中国の内部ショックから内外の双方向ショックに変化している。

l  新型コロナの影響で、中国の上半期のGDPは前年同期比1.6%減少した;中国経済は上半期に景気後退を経てしっかり回復し始め、第1四半期に急激に下落し、前年同期比6.8%減となった;第二四半期、国内の疫病は徐々に制御され、GDP成長率はプラス成長に回帰し、前年同期比3.2%増加した。中国PMI指数は2月の劇的な下落を経て、徐々に回復し、このほど5ヵ月連続して臨界値を上回り、7月には中国PMI指数が51.1%まで回復し、中国経済が緩やかな回復傾向を見せている。


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(データ出所:国家統計局)

 

l  39日から43日まで、MIR叡工業は4ヵ週の『新型コロナは中国製造業に及ぼす影響の調査及びと重点企業のリアルタイムモニタリング報告書』を作り出した。報告書の第4週のデータによると、新型コロナの影響で操業停止あるいは1月には操業再開の企業が少ない;半数以上の製造業企業は2月中旬に操業再開し、43日まで、また約2%の企業が操業再開しなかった。このほど、MIR叡工業は以前に一部の製造業企業のためにモニタリング報告書を作り出し、今度にそれらの企業を再訪し、国内の疫病制御が適切であるため、現在、既に100%が操業再開した。


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の製造企業における操業再開状況統計(統計時間:202043日)

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(データ出所:MIR Databank)

l  新型コロナウイルスが流行してから、人数制限、物流の滞りなどの要素の影響の下、被害を受けた主な産業は:住民外出関連の産業、労働集約型産業と世界の輸出入関連の産業など。現在、国内の各業界はすでに全面的に操業を再開した。これらの衝撃は、中国内部への衝撃から内外両方への衝撃に徐々に変化した。20201-5月、中国商品輸出貿易総額は61989.4億元であり、前年同期比4.7%減となった。1-5月の中国商品輸入貿易総額は53391.3億元であり、前年同期比5.2%減となった。

2)新型コロナウイルスは先端核心技術欠如の問題を露呈し、中国は研究開発のプロセスを加速し、対外依存の状況を脱却する必要がある。

l  工業製品の面では、2019年の中国の10大輸入製品はそれぞれ、鉄鋼、集成回路、自動車のエンジン、計器、メーター、プラスチックの原材料、表示パネル、チップ、飛行機および航空機、電子部品、医療製品である。

l  世界のパワー半導体デバイスの産地は主に欧米日に集中しているが、中国は最大の消費国である。海外での新型コロナウイルスがいつ抑制されるのは現在のところ不明であり、持続時間が長ければ長いほど、中国への影響は大きくなる。世界IGBT市場における主なプレイヤーであるインフィニオン(Infineon)、三菱電機、オン・セミコンダクター(ON Semiconductor)などの半導体企業の海外工場は新型コロナウイルスの深刻な影響を受けている。

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(データ出所:MIR Databank)

 

l  中国は現在、世界液晶スクリーン輸出量の半分以上を占めているが、液晶スクリーンの材料面では依然として外国メーカーに依存している。液晶スクリーンの材料は、単結晶と混晶に簡単に分けられるが、現在中国では簡単な単結晶しか製造できず、国際市場では96%の混晶がドイツや日本のメーカーから供給されている。


 

世界混晶サプライヤーの市場シェア

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(データ出所:公開資料整理)


l  2019年の中国自動車部品の輸入額は367.11億ドルであり、このうちドイツ、日本、韓国、米国からの輸入総額は246.45億ドルであり、シェアは67.1%に達する。新型コロナウイルスと中米関係の影響を受け、20201 ~ 5月の中国自動車部品輸入額は11282億ドルであり、昨年同期に比べ14.7%減少した。現在、国内自動車メーカー輸入部品の大部分はまだ備蓄しているが、時間が経つにつれ、部品の在庫の消化が進めば、国内メーカーの課題も大きくなる見通し。

l  新型コロナウイルスの影響を受け、現在のグローバルサプライチェーンは再編段階にある。中国にとって、サプライチェーンの安全建設を重要視し、中国内部産業のサプライチェーンシステムの配置を促進し、製造企業のサプライチェーンの弾力性を高め、重要部品の国産化プロセスを加速する必要がある。

3)医療業界は新型コロナウイルスの流行から利益を享受し、関連企業の業績は倍速で増加し、下半期にも医療業界の発展も楽観視できる。

l  新型コロナウイルス予防制御の補助により、上半期医学業界における医療製品の販売は加速し、新型コロナウイルス予防制御の需要に応じた消費財の成長は良好である。


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(データ出所:企業公告によりMIRが整理)

 

l  現在、中国はすでに疫病の予防制御が常態化し、国家発展改革委員会は520日に「公共衛生予防制御の救急能力の建設計画書」を発表し、検査実験室、集中治療室(ICU)、呼吸、感染などの科学室の建設を強化し、各都市の病院の拡大に対しても明確な要求を提出した。そのため、医療設備購入の傾向は依然として続き、これをきっかけに、医療機器業界の国産化プロセスも加速する。

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(データ出所:MIR Databank

4)国内疫病が好転し、中国は新インフラ建設を加速し、自動化企業の発展を促進

l  疫病の影響により、3月から、中国政府は国家計画の重大工事及びインフラ建設の促進を加速し、5Gネットワーク、データセンター等の新インフラ建設の進度を加速することを明確に要求した為、下半期は自動化業界の発展に有利である。データセンターを例にすると、インバータはそのエアコンシステムを幅広くアプリケーションし、大型エアコンシステム(エアコンの冷凍本体、水循環システム、空気循環システム)と機械室専用精密エアコンを含み、データセンターは発展期を迎え、インバータ業界の成長を積極的に推進。


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データ出所:MIR Databank

 

2018-2022E年データセンターのインバータ市場規模及び予測

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データ出所:MIR Databank

4.2中米関係の悪化によるチャレンジとチャンス

1半導体業界はアメリカによってアップグレードを抑制され、中国政府は投資力を高め、半導体業界の国産化進度を推進。

l  2019年から、アメリカは半導体輸出の管理が厳しくなる為、中国政府は国内チップ業界を支える力を大きくしている。2019524日、中芯国際は米株の株価表現が良好でなく、国内需要が激増した等の原因でニューヨーク証券取引所から脱退し、20206月に科創板に上場申請した。中芯国際の目論見書によると、近年中国政府の中芯国際に対する補助金額が益々拡大しており、2017-2019年、中芯国際が受け取った政府補助はそれぞれ10.24億元、11.07億元、20.39億元であり、同期純利益を占める割合はそれぞれ82.23%148.09%113.69%である。2018年、2019年、政府の補助金額はその会社の純利益を上回った。

2017-2019中芯国際の純利益状況

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(データ出所:中芯国際目論見書、MIR 叡工業統計)

 

l  今年5月米国はアメリカの会社がファーウェーに対する半導体販売を中止し、世界の米国半導体設備を使用するメーカーがファーウェーに半導体を販売することも禁止し、協力しない国に制裁することを表明した。現在、世界は60%以上の半導体は高通等のウエハレスチップ会社で設計し、台積電、格芯、聯華電子、中芯国際、力晶芯片と三星等の受託加工会社で生産している。携帯電話チップ、特にプロセッサーはほとんどウエハレス工場で生産され、それらの受託加工工場は全てアメリカの半導体設備を使用している。アメリカのこの決定はファーウェーにチップ切れのリスクを直面させている。

l  長期的な視点から分析すると、アメリカの制裁政策は中国が半導体業界への投資を更に刺激した為、海外輸入技術の依存を減らし、中国が半導体の自給自足の実現を加速するのに役立つ;アメリカ半導体会社は中国市場からもたらす収益が減少し、アメリカ半導体の世界市場シェアもそれなりに減少するようになる。

2)アメリカはハイテクとその他の分野で中国を圧迫する傾向を更に強め、中国の各企業はサプライチェーンのバックアップを作成しなければならない。

l  2020上半期、エンティティリストは米国がハイテク及び他の分野における中国を一層制圧したことを示し、一旦リストに入れられ、最大の問題は多くのコア技術及び製品は手に入れない。一方で、経営の難度を高め、例えば、資金不足の問題。クラウドスマートロボットオペレーターのクラウドマインズは米国で上場することを計画したが、米国のエンティティリストに入れられた為、米国で上場することをやめざるを得ず米国市場でおよそ75%の注文を失った。  


エンティティリスト(522日に公表され)

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(データ出所:アメリカ商務部公式サイト、MIR 叡工業統計)

 

エンティティリスト720に公表され

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(データ出所:米国商務部公式サイト、MIR 叡工業統計)


 

l  ハイクビジョンは去年に製品提供が中止されても代替品は十分にあると発表した;360が民営化になった後中国で上場したが、エンティティリストに大きく影響された為、業績が大幅に低下した。現在、主に影響を受けた事業はスマートハードウェアである。

l  従って、サプライチェーンのバックアップを重視し、企業の発展進路を全面的に計画することは中国企業の米国の制裁への良策と考える。

3中国の米国企業は二重圧力を直面しており、中米の間でコミュニケーションブリッジとして力を入れる。

l  中国の米国企業は業界の分布が幅広いし、主要な投資業界は機械電子、冶金、石油、化工、通信、エネルギー、交通等重化学工業及び基幹産業を含んでいる。中国の米国企業は一般的に良好な営業及び財務業績を獲得した。最近、米国政府が引き続き中国にモニタリング及び制裁の遣り口をした為、中米の関係はより悪化になる。中国の米国企業も中米関係の悪化によってもたらした反米感情のため、中国における注文を失った;同時に、米国政府も持続的に圧力を増やしており、全ての中国の米国企業を呼びかけ、「どうしても米国本土に戻す」;二重圧力のため、米国企業は中国市場における事業が悪影響を受けた。

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(情報出所:MIR Databank)

l  最近、中米商工会議所が行ったビデオ会議に、米国企業の代表は新型コロナが企業の生産と経営に困難を増やしたが、彼らは中国市場の発展及び将来に相変わらず信じている。ハネウェルなどのグローバル企業は最近中国における新規投資プロジェクトを通過及び実施した。その結果、私たちは中国の米国企業との交流を強化し、より多くの事実を米国民衆及び指導者に伝え、中米の貿易摩擦に関するような注目されている問題の解決に力を入れる。

 

つまり、2020年上半期自動化市場の実際の状況は予想を上回り、下半期には不確実性が依然として存在しているが、国家支援政策が更に進んだため、新基建(新型インフラ建設)が速やかに展開しており、医療業界の倍増などの有利な条件は全体の自動化市場に新しい運動エネルギーを注ぐ。従って、私たちは市場の変化に積極的な態度を持っており、後半自動化市場がマイナス成長からプラスに転換すると確信する。