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2022年中国産業用ロボット市場の回顧と2023年の予測

MIR DATABANKのデータによると、2022年の中国に於ける産業用ロボットの販売台数は前年比10%増の28万台を超え、実績はMIR睿工業の年初の予想をわずかに下回った。


2022年中国に於ける産業用ロボット市場はコロナ、ロシア・ウクライナ戦争、エネルギー不足等の影響を受けた後、果たしてどのようになったのか。そしてコロナが効果的にコントロールされた後、2023年の中国産業用ロボット市場はどのように成長していくのだろうか。この記事では、MIR睿工業の分析と予測をご説明致します。

 

2022市場の回顧

 

MIR DATABANKのデータによると、2022年の中国に於ける産業用ロボットの販売台数は前年比10%増の28万台を超え、実績はMIR睿工業の年初の予想をわずかに下回った。

 

Ÿ   上半期はコロナとロシア・ウクライナ戦争等の複数の要因の影響を受けて供給側が大きな試練に直面したが、下半期はサプライチェーンの圧力が緩和され、業界の成長率が回復した。

2016-2022年産業用ロボットの四半期別の市場規模(出荷台数/台)

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(出所:MIR DATABANK)

*出荷台数の合計には:6≦20kg6軸>20kgSCARACobotsDeltaが含まれる。

2022年第1四半期の産業用ロボット市場は川下の需要が依然として多く、多くのロボットメーカーが多く受注した。第二四半期はコロナの影響を受け、成長率が最低になり、川上の供給端の需要が減少し、海外輸出事業も減少し続ける傾向にあった。第三四半期の地域の封鎖が緩和され、それまで遅延した注文が放出されたことに加えて、新エネルギー関連産業が急成長して市場の需要の成長を牽引し、市場は回復し始めた。第四四半期は引き続き成長し、注文の成長率は縮小し、川下の需要は景気が悪化した。

 

Ÿ   業界市場は主に新エネルギー車、リチウム電池、太陽光発電、医療等の新興業界の需要にけん引されている。3C電子需要が大幅に縮小し、一般工業は回復し始めたが予想には届かなかった。

2022年産業用ロボット川下産業出荷状況

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(出所:MIR DATABANK

新エネルギー車は引き続き成長傾向にあり、市場の生産と販売はともに盛んで、BYDをはじめとする新エネルギー車メーカーは生産拡大を加速し、同時にリチウム電池の市場需要を強力に牽引した。また、動力電池のほか、太陽光発電、半導体、物流運輸等の新興業界も引き続き急成長した。MIR睿工業の統計によると、新エネルギー車と新興業界の産業用ロボットの出荷台数は産業用ロボット市場全体の出荷台数の40%以上を占めた。

2022年3C電子業界は低迷し、携帯電話の在庫が多くて消化しにくく、メーカーは頻繁に注文を取り消し、コロナの影響で急成長したノートパソコンやタブレットPCの需要の伸びが鈍化し、AirPods等の新製品のイノベーション不足で消費を刺激できず、「VR/AR」製品がまだ普及していない等さまざまな要因により3C電子市場の成長は鈍化した。金属加工等の業界はマクロ経済の低迷やコモディティの値上がり、輸出の減少等の影響を受け、川下市場の回復も予想に及ばなかった。

 

Ÿ   Cobots>20kg 6軸は引き続き急成長し、≤20kg 6軸、SCARDeltaの業界パフォーマンスは予想を下回った。

2022年産業用ロボットのモデル別出荷状況

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(出所:MIR DATABANK

2022年Cobotsは自動車部品やカーエレクトロニクス、医療、半導体等の工業市場で広く使用され、Cobots市場全体を牽引して大きく成長した。ここ数年、Cobotsの国産化率もずっと上昇しており、上位メーカーは続々と発売する計画を発表し、公開情報によると、JAKAは既に12月に上場指導を開始した。このほか、ますます多くの中国メーカーが海外へ事業を展開し、海外に一部の市場を拡大しており、JAKA、AUBO、越疆、ELITE、大族、ROKAE等はいずれも海外市場をよりよく開拓する為に、海外事業部/支社を設立した。

3C電子需要の大幅な減少の影響で、2022年SCARAの出荷台数は基本的に2021年と同じで、1%しか伸びなかったが、リチウム電池、太陽光発電、医療の需要は依然として旺盛だが、市場全体の急成長を牽引することには足りなかった。しかし、リチウム電池と太陽光発電市場のおかげで、高可搬と高速SCARA製品の需要が急成長し始め、SCARAメーカーが次々と高可搬SCARAモデルを発売した。

消費の低迷により、食品飲料や日用品等の分野が大きく影響され、Delta市場はマイナス成長となり、太陽光発電やリチウム電池等の新興市場への普及も加速しているが、現在のところその規模はまだ限られており、より多くのDeltaメーカーが業界の垣根を越えてSCARA市場に参入している。中国メーカーのDelta上位のAtomロボットは2022年10月に、高速SCARA新製品を発売した。

高可搬モデルがますます市場で人気を集め、高可搬製品の開発が加速し、20kg 6軸は自動車、バッテリー等の分野で更に多く使用されている為、2022年には市場シェアが35%に拡大した。逆に≦20kg 6軸は、電子業界の低迷、コモディティの値上げにより輸出事業の萎縮の為、≦20kg 6軸の需要は次第に減少した。

 

Ÿ   中国国産製品による輸入品の代替が加速し、内資市場シェアが更に拡大。

2022年産業用ロボット市場に於ける中国国内・外資メーカーのシェア

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(出所:MIR DATABANK

中国内資メーカーはサプライチェーンの優位性と柔軟な価格戦略により、リチウム電池、太陽光発電、自動車部品等の分野で引き続き普及しており、上位メーカーは外資メーカーと更に激しく競争し、2022年に市場シェアを更に拡大した。また、外資シェアの縮小の主な原因は供給側の資源調整リードタイムが長く、市場需要の成長に対応することができず、第二四半期は大きく影響され、下半期まで納期が短くなり、生産と納入が次第に正常に戻った。

また、2022年の産業用ロボット市場は「値上げの波」を迎え、ABB、KUKA、安川等の外資メーカーとESTUN、EFORT、配天機器人、ROKAE機器人、Atom機器人等の中国メーカーが相次いで値上げした。主な原因は原材料コストの高さとサプライチェーンの逼迫、物流コストの高止まりは生産コストの上昇を後押し、メーカーの利益バランスの下での対応策だ。外資の産業用ロボットブランドの値上げ幅は10%前後であるのに対し、中国ロボットブランドの値上げ幅は2-8%であり、外資メーカーに比べて中国メーカーの値上げ幅はやや低く、これも中国メーカーの競争の優位性となっている。

 

2023年の市場予測

 

2022年市場の成長は多少減速したが、市場全体の回復傾向は明らかだ。近年の産業用ロボット市場は短期的な変動を経験し、現在の産業用ロボットは依然として成長している自動化製品であるが、市場の中長期的には好転傾向は変わっておらず、今後数年は依然として2桁の成長を維持し、MIR DATABANKデータによると、2023年の中国産業用ロボット市場の前年比成長率は約12%に上昇すると予想している。また、モデル別、業界別、サプライヤーのパフォーマンスは構造的な差別化を見せている。

2018-2025年中国に於ける産業用ロボット市場の販売台数と予測

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(出所:MIR DATABANK)

Ÿ   モデル

3C業界の回復に制限され、SCARAと≦20kg 6軸の急成長期は暫くの間で再び現れないだろう。逆に新エネルギー車、リチウム電池、太陽光発電業界の好景気のおかげで、>20kg 6軸とCobotsは新しい成長段階に入る。特に注目すべきは、2021年に高可搬産業用ロボットのシェアが初めて上昇し、今後数年で同分野の市場が更に拡大し、中・高可搬(≧20kg)分野での新規参入した中国メーカーが引き続き増加し、中国の高可搬モデルが既に多く使用されている。

Ÿ   業界

小幅に成長している川下業界の中で、新エネルギーは間違いなく最も安定している業界であり、関連のセグメント分野は引き続き急成長する。しかし、2023年には川下産業の需要分化もますます顕著になり、新エネルギー車と新興業界の需要は依然として旺盛で、そのうち動力電池のほかに、蓄電池はリチウム電池サーキットの好景気が続くもう一つの強力な支えになるかもしれない。従来型業界は市場全体の成長により回復できるが、成長幅は限られる。

Ÿ   サプライヤー

2023年には、ESTUN、Inovance、EFORTを代表とする中国上位メーカーの規模の優位性が更に顕著になり、協働ロボットセグメント市場で上位メーカーが出て、JAKA、AUBO、越疆は「科創板」で上場する可能性が大きく、中国メーカーのシェアが更に拡大する見通しだ。

外資ブランドのサプライヤーチェーン、研究開発から生産までのローカライズプロセスが更に推進され、ロボット産業構造の矛盾が供給側から需要側に転向し始め、ロボット価格は下がる傾向が現れ、中国メーカーの価格戦略は次第に役に立てず、競争が更に激しくなる。

産業ロボットの分野は「一超多強」(備考:市場規模がすごく大きな一社があり、他の規模が大きな数社がある)の競争構造を形成し、2023年には産業用ロボット市場で販売台数が一万台以上となる企業数は増加する可能性があり、市場の集中度は更に増すだろう。