業界観測

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リチウム電池の「ブルーオーシャン」は高可搬質量SCARAによる争奪戦

電池メーカーの生産拡大が加速することで、リチウム電池業界市場は引き続き上昇している


以下のデータは、2022年の新エネルギー業界の好調状況を説明できる:

  • 中国の新エネルギー車の販売台数は前年同期比93.4%増の688.7万台に達し、市場シェアは25.6%に上昇した。

  • 動力電池の生産量は、前年同期比148.5%増の545.9GWhで、販売量は前年同期比150.3%増の465.5GWhで、累計搭載量は前年同期比90.7%増の294.6GWhであった。

2021-2022年動力電池の生産量

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(出所:中国自動車動力電池産業革新連盟)

2022年の経済環境の下で、新エネルギーとリチウム電池は急速な成長を維持することができる分野である。リチウム電池産業の引き続いた生産拡大の需要の牽引の恩恵を受け、産業用ロボットのリチウム電池業界の販売量は「爆発」の態勢を見せていた。その中で、高可搬質量SCARAロボットはリチウム電池業界の中で高い発展可能性を持っている。

 

SCARA市場全体がの発展は楽観的ではなく、高可搬質量SCARAは特別な状況を見せた

 

2022年SCARA全体の市場は、電子業界低迷状況の影響を受け、そしてリチウム電池、太陽光発電、医療業界が市場全体を牽引することができない為、全体の発展は楽観的ではなかった。全体の成長は1%程度にとどまった。しかし、高可搬質量と高速SCARA製品の需要は旺盛で,

細分化市場は特別な状況を示した。MIR DATABANKデータによると、2022年通年の50kg SCARAの出荷台数は1600台を超え、前年同期比140%程度増加する見込み。

2018-2025年の50kg SCARAの市場規模と予測

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(出所:MIR DATABANK

50kg SCARAは可搬質量、剛性、リーチに対する要求は高いが、自由度への要求は高くない場合に使用される、現在50kg SCARAの業界の集中度は高くて、90%以上はリチウム電池業界であり、主に電池セルのバックプロセス、モジュールプロセス等で使用される。

50kg SCARA市場状況-業界別

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(出所:MIR DATABANK

今後、50kg SCARAの技術が徐々に成熟して、コストが下がることに連れて、そのアプリケーションは徐々に他の分野に普及する。例えば家電、自動車部品、3C等の業界、そして大/重ワークピースの組立、運搬等の分野。また、6-axisに比べ、SCARAは構造が簡単で省スペースかつ効率が高い為、30-70kgの6-axis市場の一部は50kg SCARAに代替される見込みである。

 

高可搬質量SCARAのリチウム電池生産の多くのプロセスへの普及が加速

 

リチウム電池電池は主に角型電池、ラミネート型電池、円筒電池とブレード電池を含んで、その中の角型電池の重量は大きく、しかも効率と生産能力の向上に対する需要は切迫しているので、現在50kg SCARAの大部分は角型電池の生産使われている。

ラミネート型電池の技術はまだ成熟していない、生産能力は低く、スピードアップへの需要は大きくない。円筒電池は基本的にXYZモジュールを使用して、生産効率と一貫性は通常高く、50kg SCARAは現在この2つの細分化分野に普及していない。

角型電池-生産プロセスとロボットの使用状況

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(出所:MIR DATABANK

角型電池の生産プロセスの中で、50kg SCARAは主にセルのミドルプロセス、バックプロセスとモジュールプロセスで使用される。例えば、電池セルの接着剤貼り&剥がし、密封釘溶接、二次注液、ソフト接続レーザー溶接、電池セルの予積スタック等のプロセスは徐々に使用し始めている。

また、6-axisに比べて、SCARAの構造は簡単で、よりスペースを節約し、効率が高い為、現在30-70kgの6-axisは主に電池セルの予備スタック、エンドプレートの材料搬送、トレイの配列・材料搬送等の自由度への要求は高くないプロセスで使用される。速度向上とコスト削減の為、これらのプロセスでは今後50kgのSCARAに徐々に置き換えられる見込みがある。

  • ホットプレス:動力電池メーカーの技術はそれぞれ異なっていて、使用する電池の型番も完全に統一していない、生産ラインの互換性と効率を高めることは中国国内の生産能力を高める各大手動力電池メーカーにとって非常に重要である。このような需要に直面して、高可搬質量SCARAはより優勢がある。

  • トレイ配列/トレイ外し:高可搬質量SCARAは、トレイを運ぶ等の簡単なことができ質量が重すぎてロボットが大きく揺れてしまうことを回避することができる。

 

拡大を続けているリチウム電池業界は、SCARAロボットメーカーが奪い合う「ブルーオーシャン」になるだろう

 

高可搬質量SCARAロボットは高い技術的なハードルが存在して、機械設計の調整や重要部品の交換等は、メーカーにより高い要求を提出した。しかし、動力電池業界の急速な発展に伴い、50kg SCARAロボット分野はますます多くのメーカーの注目を集めている。その中で内資メーカーの対応速度は速く、YAMAHA以外の外資メーカーもフォローしている。

YAMAHAは初めて50kg SCARA事業を展開したメーカーで、2021年になってから国産メーカーが続々と50kg SCARAを発売した。例えば、Inovanceが発売したS50シリーズSCARAロボット、Estunがリチウム電池業界向けに発売した高可搬質量SCARAロボットER50-1200-SR、新時達傘下の衆為興が発売したYRシリーズ高可搬質量SCARA-YR122040は、いずれも動力電池業界の電池セル組立、充電放電・容量選別、モジュール組立等の段階で使用されている。より多くのメーカーの参入に伴い、市場構造はさらに変化すると予想される。

高可搬質量SCARA製品を発売したメーカー

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(出所:MIR DATABANK

注目すべきは、国産ロボットメーカーが安定したサプライチェーンの優位性と優れた納期管理 により、リチウム電池業界の急速な変化のチャンスをつかみ、ますます多くの市場シェアを奪った。例えば、Estunは新エネルギー事業部を設立し、リチウム電池業界のフロント、ミドルプロセスからバックプロセスまでをカバーした。

数から見ると、現在参入している産業用ロボットメーカーは多くないが、今後では、依然として拡大を続けるリチウム電池業界はSCARAのロボットメーカーが奪い合う「ブルーオーシャン」になるだろう。

情報によると、複数の電池メーカーが年間SCARAを1000台以上調達しており、電池メーカーの生産拡大が加速することで、リチウム電池業界市場は引き続き上昇している。