業界観測

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2022年産業用ロボット分野の融資状況の深掘り分析

この分野に参入しようとする新興企業は益々増えており、業界内の競争は今後も激しくなり、中国の産業用ロボット市場はまだまだ終盤戦に突入していない。


2022年の市場は低迷と言われているが、資本市場を見ると、産業用ロボット分野はその影響を受けなかったようである。大まかな統計によると、2022年通年、産業用ロボット分野での投融資案件は93件で、市場セグメントにはコア部品、ロボット本体、移動ロボット、ロボットビジョンが含まれる。時間的に見ると、産業用ロボット分野の投融資案件の発展は変動状態を呈し、高い傾向の後に低い傾向が見られるなど、決して平坦なものではない。

2022年1-12月産業用ロボット分野の投融資案件(件)

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

 

ロボットビジョンが過熱し、移動ロボットの融資案件数は産業用ロボットを上回る

 

2020年、産業用ロボットは大幅に成長した初年を迎え、産業シーンでの顧客ニーズに対応し始め、受注金額、納品品質、再購入率が順調に伸び始めた。

現段階では、産業用ロボット企業は既にコア製品を企画ビジョンから実用化まで実施しており、製品のスマート化への理解とコア製品の生産能力を競っている。

分野別で見ると、2022年に産業用ロボット分野で最も多くの融資が発生したのはロボットビジョン分野で、次は移動ロボット、その次は産業用ロボット本体。

2022年産業用ロボットの市場セグメント別投融資案件(件)

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

物流業界のデータによると、2023年に宅配便の市場規模は1兆元を超えるが、業界全体は低効率、劣悪な作業環境、安全・品質事故の多発という共通の問題に直面している。スマート化、無人化運営の普及率は約3%で極めて低く、運営モデルの更新が急務となっている。

以上を背景に、人手に頼らないスマートハンドリングフォークリフトの需要が高まり、スマートフォークリフトは2019年の2700台から2023年の1万台余りに、市場規模は数百億元になると予想されるデータがある。それに伴い、移動ロボット市場は急成長する。移動ロボット業界の融資状況からも、資本側が業界の今後の見通しに期待していることがわかる。

同時に、ロボットビジョンの熱度が徐々に上昇することは明らか。2022年、この分野で数十件の融資が完了した。自動化生産の流れを背景に、工場へのロボット導入は既に成熟し、時間の発展に伴い、ロボット生産に基づき、ロボットに3Dカメラを搭載し、より精密化、スマート化を完成させたいという需要が益々高まっている。それは移動ロボット分野の発展が益々激しくなっていることからもう見える。

コア部品である高調波減速機の国産化代替の勢いが益々激しくなり、国産の高調波減速機上位メーカーの来福諧波(Laifual Drive)は2022年に1億元超のDラウンド融資を完了した。

また、産業用ロボットよりもサービスロボットや特殊ロボットが市場でより多くの資本の人気を集めており、2022年の年間融資件数は200件近くに達し、融資金額も比較的大きいことも非常に重要。

 

1億元級の融資案件が活発になり、千万元級の融資が主流になる

 

93件の融資案件の中で、百万元級の融資案件が占める割合は益々減少し、千万元級の融資が主流になる。また、1億元級の融資案件はここ数年活発になり、案件の数は絶えず増加している。

2022年産業用ロボット分野の投融資金額分布

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

2022年、産業用ロボット分野に於ける1億元級の融資案件は41件に達したが、その多くは移動ロボットと協働ロボット分野に集中していた。その中で金額が最も大きいのは協働ロボット分野の鎂伽科技(MEGAROBO)で、約20億元のCラウンドの融資を完了し、JAKAのDラウンドの融資は10億元に達した。このほか、AUBO の4月に完成したCラウンド融資とDOBOT の11月に完成したDラウンド融資は具体的な金額は公表されていないが、融資プロセスの推進は、それ自体の競争力が更に強化されたことを意味しており、国産協働ロボットメーカーが急速に台頭している。

資本の流入は産業用ロボット業界の発展を大きく後押しし、2022年の産業用ロボット業界の資本投資は新たな段階に入り、投融資市場には以下の3つの特徴が現れつつある。

第一に、産業用ロボットとスマート製造産業及びその投融資市場は新型コロナの繰り返しなど外部要因の影響を受けたが、市場はむしろ活況を呈する。産業用ロボット製品は製造企業に新たな消費ニーズをもたらし、主要事業を中心とした生産ラインのアップグレード需要が絶えず増加している。

第二に、防疫政策の持続した最適化と経済政策の実施に伴い、産業用ロボット産業に対する投融資市場の信頼が大きく高まる。

第三に、国産産業用ロボット産業の発展は強靭性を示し、産業発展の質の高い傾向が明らか。産業用ロボット企業は市場の変化に積極的に対応し、主要事業に焦点を当て、イノベーションを強化し、品質と効率を向上させる。また、国産産業用ロボットのリーディングカンパニーは積極的に海外市場の発展のきっかけを掴み、海外市場を開拓している。

今後、資本は業界の発展を力強く牽引し、産業用ロボット市場の発展に新たな原動力を提供する。

 

融資ラウンドは初期段階にあり、Eラウンド以降の企業は極わずか

 

融資を受けたロボット企業の中で、エンジェルラウンドとAラウンド、Bラウンドの間が多く、CラウンドとDラウンドは計11社と少ない。Eラウンド及びIPOラウンドに参加できる企業は更に少なく、2022年通年では4社にとどまった。

2022年産業用ロボット分野での投融資ラウンドの分布状況

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(データ出所:MIR 睿工業の公開資料による整理)

2022年、産業用ロボット企業の主要融資案件が増え、高価値の企業数が引き続き増加し、IPO企業数が明らかに増加した。

2022年6月、井松智能(Gen-song)のIPOの申請が承認され、科創板の上場に成功し、智昌集団(EMERGEN)もPre-IPOラウンドの融資に入った。このほか、2022年12月19日には、JAKAと国泰君安(Guotai Junan Securities)は上場指導協定を締結し、IPOプロセスを正式に開始した。JAKAが上場に成功すれば、初の国産協働ロボット上場企業になる。

従い、2022年の産業用ロボット分野の融資ラウンドは基本的に初期段階にあり、エンジェルラウンドとAラウンドの割合が比較的大きかった。これは業界内に新興企業が多く、業界内の競争が激しいことを示していると同時に、産業用ロボット市場には無限の発展可能性があることを意味している。

エンジェルラウンドにある企業の一部

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(データ出所:MIR 睿工の公開資料による整理)

要するに、現在の業界の大部分の企業のビジネスモデルは成熟しつつあり、全体としてまだ前期の段階にあるが、2022年の融資状况は2021年より明らかに良い。このような結果になった理由は多岐にわたる。

まず、新型コロナの繰り返しにより、製造企業は採用難、労働力不足れなどの難題に直面せざるを得なくなった。産業用ロボットの登場はこのために新たな転機をもたらし、人の代わりに産業用ロボットを導入し、産業スマート製造の高度化を図り、企業のコスト削減と効率向上を支援することが新たなトレンドとなっている。

次に、スマート製造の良好な経済環境が続く中、証券取引所市場の産業用ロボットの株が更に高くなっている。「産業用ロボット市場への投資熱は高まり続けており、良い投資プロジェクトは奪うことしかできない」と嘆く投資家もいた。上場企業の好調は、産業用ロボット投資に無限の可能性をもたらしている。

 

最後に、


産業用ロボット企業が誕生してから本格的に生き残るまでには、少なくとも10年はかかる。この2年間、中国の有利なマクロ政策の絶え間ない発表に伴い、現在の産業用ロボットの競争非常に激しい。

2023年の初め、工信部(中華人民共和国工業情報化部の略称)などの十七部門は「『ロボット+』使用行動実施計画」を共同で発表し、2025年までに製造業のロボット密度を2020年比で2倍にし、重点分野の「ロボット+」アプリケーションを深化させ、「ロボット+」アプリケーションの基礎支援能力を高め、「ロボット+」アプリケーションの組織保障を強化することを提案した。

製造業に於ける産業用ロボットの開発に対しても、この計画は明確な要求を提出している。溶接、組立、塗装、運搬、研削、研磨などのロボットの新製品を開発し、専門的かつカスタマイズされたソリューションとハードウェア・ソフトウェア製品を開発し、ロボット制御ソフトウェアと統合アプリケーションシステムを深く融合し、自動車、電子、機械、軽工業、紡績、建材、医薬など大規模に展開する業界でのアプリケーションを推進し、衛生器具設備、セラミック、太陽光発電、製錬、鋳造、板金、金物、家具などの分野に於けるグレイズスプレー、陶器の修理、研磨、研削、溶接、塗装、運搬、パレタイズなどの主要プロセスでのアプリケーションを拡大する。スマート製造モデル工場の建設を推進し、産業用ロボットの典型的なアプリケーションシーンを構築する。産業用ロボットに基づくスマート製造システムを発展させ、製造業のデジタル化モデルチェンジ、スマート化変革を後押しする。

遅れて始まったが、他国より発達しているのは中国の産業用ロボット業界の特色ある発展経路。中国は世界最大の製造拠点を持ち、世界最大の設置台数が見込めることに加え、多くのアプリケーションシーンが産業用ロボットのスタートアップ企業にとってイノベーションの原動力となっている。また、資本の絶えずの選好は、業界の発展を強く後押しし、多くのメーカーが更に上を目指すための力となる。キー&コアテクノロジー業界の投資者宋玉傑氏は「ロボット分野では、Windows、Apple、HMOVなど様々なレベルの企業を育成できる」と発表し、2023年はロボット分野の絶好のチャンスになり、従来型製品3種類(減速機、コントローラー、サーボ)は完全に国産化され、スマートな製品2種類(3Dカメラ、力覚センサー)は世界をリードし、国産本体は大量に出荷され、スマートで標準化され、高いコスパのワークステーションが量産されると予測する。

この分野に参入しようとする新興企業は益々増えており、業界内の競争は今後も激しくなり、中国の産業用ロボット市場はまだまだ終盤戦に突入していない。