業界観測

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中国バッテリー市場で新たな戦いが繰り広げられている

しかし、いずれにしても、リチウム電池市場の人気はすでに言う必要はなく、将来、新エネルギー車の発展に伴い、電池産業も更に1段階あがっただろう。市場の将来の発展はわれわれに期待するに値する。

先ごろのフランス・パリモーターショーでは、中国の電気自動車が注目を集め、フランスのマクロン大統領はブースで憂いの表情を浮かべ、「ヨーロッパは目覚めなければならない」と言った。

中国の新エネルギー車業界の急成長が現実のものとなりつつあり、電気自動車は高速鉄道、原子力発電に続き、中国製造業の海外市場向けの第3枚目の「金色名刺」になる可能性が高い。現代版「夷の長技を師とし、以て夷を制す」の物語が実際に上演されているが、今回だけは、百年前とは全く異なる結末があるだろう。

2022年1~10月、新エネルギー車の累積市場浸透率は24.7%に達し、一般社団法人自動車販売協会連合会秘書長の崔東樹氏は前の3四半期の市況と第4期の自動車メーカーの生産拡大を見ると、2022年の新エネルギー車の年間市場浸透率は約28%になると予想されている。新エネルギー車の市場浸透率の上昇は、動力電池業界の繁栄を再び後押しすることになるだろう。


2022年1-10月の中国動力電池搭載量

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(データ出所:中国自動車動力電池産業革新連盟)


この好景気はバッテリー市場の競争が激化させ、新たな戦いになりそうだ。MIRは2022年11月時点での電池業界の上位メーカー50社の傘下にある200以上の工場の情報を分析し、川下産業、地域、工場の建設状態という3つの方面で市場の推移を分析した。

 


動力電池工場の数は急増した


 

リチウム電池のサプライチェーンは川上の原材料と電池材料、川中のリチウム電池の生産と組み立て、川下のアプリケーションの三つの部分に分けられる。その中で、川上の原材料は主に正と負の電極材料、電解液、セパレータ等がある。川中のリチウム電池の生産と組立は主に極板の製造、電池セルのパッケージ、リチウム電池の組立、リチウム電池モジュールとPACKを含む。川下アプリケーションは主にコンシューマエレクトロニクス、動力電池、蓄電池分野が含まれる。本稿では、主に川中リチウム電池の生産工場を対象に分析を行った。


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リチウム電池上位メーカーの傘下工場の主力事業を調査した結果により、動力電池の工場の数が最も多い。民生用電池と蓄電池の工場の数の差はほとんどなく、ほとんどは上位メーカーの重点的に事業を展開する分野ではないことが分かる。


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(データ出所:MIR DATABANK


主な原因はリチウム電池の発展が新エネルギー車の台頭によるものである。自動車に使用されている動力電池は主にリチウム電池であるため、新エネルギー車と動力電池の発展は相互補完的であると言える。初期の民生用電池の発展がリチウム電池の成長を牽引したが、実際に産業を成長させたは、やはり新エネルギー車市場が急成長した後である。

例えば数年前にBMWの人気により、寧徳時代が急成長し、「万億寧王」の称号を得た。しかし、今の寧徳時代の生活も穏やかではない。動力電池の市場規模がますます大きくなるにつれて、電池メーカーだけでなく、自動車メーカーも電池子会社を設立したり、投資したりする方式で参入し、より産業チェーンの発言権を奪い取ろうとしている。

自動車メーカーがサポートを提供する。大衆は国軒高科に出資し、ベンツは孚能科技に出資し、中創航は広汽、長安新能源と深い提携を展開し、蜂巣能源は長城汽車の力強い支援を受け、欣旺達は動力電池事業を分割して単独で融資し、小鵬、理想、蔚来汽車、広汽資本、東風資産等多くの企業から投資を受け、自動車メーカーは続々と新しい電池ブランドに資金とサポートを提供している。

電池メーカーは競争が激しい。自動車メーカーの支援の下で、新規参入メーカーが寧徳時代の顧客を奪い取っている。中創新航はここ数年の生産規模が拡大し、2018年から4年以内に中国国内市場シェアが9位から3位まで上昇し、2020年からは既に広汽の第一サプライヤーとなった。国軒高科は動力電池を10数年にわたって開発し、シェアは安定しており、基本的に5%-6%前後を維持している。億緯鋰能は欣旺達と共に民生用電池事業から動力電池事業へと転換し、既存の技術と顧客リソースの蓄積を頼りに着実に市場を開拓している。蜂巢能源等のメーカーは一部の自動車メーカーのサプライチェーンに参入し、シェア争いに参加している。 

サプライチェーンの安全を保証し、価格交渉能力を高め、コストを下げるために、新エネルギー完成車メーカーは、従来の独占供給モデルを徐々に打破し始め、合弁、出資、長期契約等の方式を通じて「第二サプライヤー」更には「第三サプライヤー」を求め、新しいサプライヤーと協力関係を構築し、第二レベルの電池メーカーに良好な発展チャンスをもたらした。今、動力電池市場規模は大きくなっている。

 


産業集積エリアはメーカーの工場建設の第一選択

 


リチウム電池産業が特殊なのは、一貫して技術集約型産業である。リチウム電池メーカーの生存と発展は技術の進歩に依存しているので、リチウム電池メーカーは工場を建てる時の立地の第一選択はほとんどが産業クラスターの基礎がある省と都市で、同時に資源型と政策指向型の省も比較的に好まれる。


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(データ出所:MIR DATABANK


技術は産業の発展をサポートし、メーカーの工場建設の第一選択である。リチウム電池は、最初はコンシューマエレクトロニクス製品のために開発された。広東省は以前からエレクトロニクス情報産業の主要な経営拠点である。広東省深圳市のエレクトロニクス情報産業の総規模は中国の6分の1にも達した。Huawei、中興、スカイワース、BYD等の大手エレクトロニクスメーカーがここで創業した。中国に於ける最大のエレクトロニクス市場である華強北も深圳市に位置する。リチウム電池産業を展開し、技術的にはすでに先行優位性を持っている他、マーケット面でも地域の優位性を持っている。

また、広東省内部には新エネルギー車産業チェーンが形成されており、深圳市、東莞市、恵州市は新エネルギー産業で発言権があり、生産要素を大都市間で最適配置することができ、総合的な生産コストが低い。政府の強力な支持と証券取引所の建設竣工の前提の下で、技術、産業の組み合わせ、資金等の優位性は広東省はすべて備えており、リチウム電池メーカーがここに工場を建設することを選んだ理由は言うまでもない。

資源が豊富で、支援政策があり、電池工場の建設に有利である。江西省宜春市はリチウム電池の都と呼ばれている。BYDの最大の電池工場は宜春市にあり、宜春市は豊富なリチウム鉱山資源を持っている。リチウム電池メーカーはより多くの資源を得るために、通常原材料の産地に工場を建てる。2021年末にリチウム価格が高くなってから、宜春市は更に多くの電池メーカーが生産能力を拡大し、政府と提携し合弁でリチウム鉱山/リチウム塩工場を建設する等の方式で資源を得ている。

国が動力電池産業の発展を強力に支援すれば、地方政府は当然それに追随して後押しするだろう。工場建設への投資はより多くの税収をもたらし、雇用の圧力を緩和させることを意味する。多くの地方政府はバッテリー製造プロジェクトの実施を積極的に後押しし、参入基準を下げた。現在、江蘇省常州市、湖北省荊門市、四川省宜賓市で計画されている電池生産能力はいずれも300Gwhを超える。

河北省、吉林省、新疆等の地域ではリチウム鉱山資源が少なく、リチウム電池を発展させる先行条件が不足しており、後続業界の発展は川上備蓄に依存するから、これらの地域の上位メーカーは生産能力を増やすためのリチウム電池工場をあまり建設していない。

今後、中国のリチウム電池産業の構造は、ハイエンドリチウム電池技術の研究開発は広東省、福建省東部の沿海地域が中心となり、基礎リチウム電池の生産・製造は一部の中部と華東地区に移転するモデルになる。

 


工場建設に投資して更に工場を拡張することがすでに電池メーカーの一般的な操作になっている

 


全体を見れば、300あまりのバッテリー工場の建設の多くはすでに完成したが、建設中および新規プロジェクトも少なくない、全体の3分の1ほどを占めている。これも現在の動力電池産業の増資・生産拡大の主なトレンドにほぼ合致している。


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(データ出所:MIR DATABANK


今の動力電池業界は「クレイジー」という言葉がぴったりだ。寧徳時代とBYDのような上位メーカー、あるいは新規参入メーカーにかかわらず、増資と生産拡大の計画は決して停止していない。この注目を集める分野では、競争が激しい。

2022年以降、ほぼ毎週、動力電池工場の操業や業界への投資のニュースが伝えられている。最近の半月の中で、力神電池は無錫省錫山市に112億元を投資し、動力電池拠点を建設する。蜂巣能源は科創板の上場が上海証券取引所に受理され、150億元を調達すると計画。


2022年1~11月一部電池メーカーの生産能力投資計画動向

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(情報源:公開資料をもとにMIR睿工業が整理)


投資、工場を建設、生産拡大、再び投資、工場を建設は今の電池メーカーの一般的な操作となっている。不完全な統計によれば、2022年1-11月には、動力電池分野で少なくとも75の投資計画が発表されており、投資総額は1兆を超えており、プロジェクトの半分近くの投資規模は百億を超えている。

更に、中国内部の電池産業の競争が深刻な現在、多くの企業が海外に出て、国際市場シェアを争奪する。

現在、寧徳時代の最初のヨーロッパ工場はすでに建設を開始し、年内に生産を開始する予定であり、第二のヨーロッパ工場もすでにハンガリーでの落成を発表した。昨年、BYD持ち株の弗迪電池も欧州工場建設の準備を始めた。2022年前半、億緯鋰能と国軒高科も相次いで欧州新工場の所在地を発表した。9月9日に、蜂巢能源は同社が欧州に第2の海外バッテリー工場を建設すると発表した。欧州のほか、北米、東南アジア等も同様に電池メーカーの工場建設戦略の要所となっている。

生産能力の競争の下で、電池産業内部の競争は更に空前の激しい局面を見せている。

しかし、いずれにしても、リチウム電池市場の人気はすでに言う必要はなく、将来、新エネルギー車の発展に伴い、電池産業も更に1段階あがっただろう。市場の将来の発展はわれわれに期待するに値する。

 

*中国に於ける電池工場に関する完全な情報を入手したいお客様は、MIR DATABANK-業界部分をご覧ください。