業界観測

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第3四半期、中国産業用ロボット市場の受注回復

MIR DataBankによると、2022年第3四半期、中国の産業用ロボット市場の出荷台数は7万台を超え、同期比で19.3%の成長率を達成したが、予想の25%より低い。


MIR DataBankによると、2022年第3四半期、中国の産業用ロボット市場の出荷台数は7万台を超え、同期比で19.3%の成長率を達成したが、予想の25%より低い。第1~3四半期の産業用ロボットの出荷台数は20万台を超え、同期比7.2%増加した。


文本框: コロナ

2017-2022年産業用ロボットの四半期別市場規模(出荷台数)

文本框: コロナ

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(データ出所:MIR DATABANK)

*出荷台数統計には以下の製品を含む: ≤20kg 6-axis、>20kg 6-axis、SCARA、Cobots、Delta


2022年、コロナの状況は意外に深刻となった。主要流行地域は上海とその周辺の長江デルタ地域であり、この地域の製造業メーカーに衝撃を与えて、発展は多かれ少なかれ制限された。

第1四半期の時、産業用ロボットの川下市場の需要が依然として多く、多くのロボットメーカーの受注は十分であり、昨年末の受注に注力いたが、3月に新型コロナ禍が繰り返され、産業用ロボット市場は影響を受け、成長が鈍化し始めた。4、5月は中国国内の感染状況が最も深刻な時期で、需要と供給両方が引き続き影響を受け、海外市場の発展も楽観的ではなく、市場が明らかに下落した。加えて、昨年の第2四半期の基数が大きかったので、市場はここ9四半期ぶりの下落となった。第3四半期にはコロナの感染状況が緩和され、第1、第2四半期にコロナの影響で納品が遅れた受注が、第3四半期には解放され、市場は回復し始めた。新エネルギー関連産業の成長も、ロボット市場の成長を促進した。しかし、全体的な成長状況は予想を下回った。

 

業界景気の差別化は顕著、新エネルギー、リチウム電池、太陽光発電、医療業界の発展は加速

 

産業用ロボット市場は主に新エネルギー自動車、リチウム電池、太陽光発電、医療等の新興業界の需要に牽引されている。 3C電子の需要が大幅に減少し、 一般工業は回復し始めたが予想より低い。


2022Q1-Q3産業用ロボット川下産業出荷状況(同期比成長率、%)

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(データ出所:MIR DATABANK


新エネルギー自動車、動力電池:近年、新エネルギー自動車の生産販売は好調を続けている。2022年以来、BYDをはじめとする新エネルギー自動車メーカーは生産拡大を加速し、「蔚小理」を代表とする自動車製造新興メーカーの月間販売台数も1 万台を超え、前年同期に比べて一倍以上成長した。自動車の電動化、ネット化、軽量化ニーズは自動車完成車&自動車部品&自動車電子等の分野でのロボット使用を加速したと同時に、新エネルギー自動車の発展も動力電池産業の需要を強力に牽引している。

3C電子、ウェアラブル設備、メタバース:コロナが発生した当初、3C電子業界は疫病から多くの利益を享受した。コロナ予防の常態化と電子製品の革新不足に伴い、消費者の需要は低迷し、市場も低迷した。スマホメーカーの在庫は多い上に、受注が取り消された場合がよくある; ウェアラブル設備市場は成熟期に入りつつあり、ワイヤレスイヤホン等の新製品の革新が不足する為、市場の成長率が低下し始めている。次世代メタバース製品がまだ成熟しておらず、3C市場の成長はさらに原動力が不足している。

半導体、太陽光発電、医療等新興業界:太陽光発電業界は「カーボンニュートラル」等の政策、国内外の川下市場の需要に牽引され、好景気が続いている。半導体、医療、物流等の市場で、高い成長を維持した。

一般工業:金属加工等の業界はコロナ、マクロ経済の低迷とコモディティ商品の値上がり、輸出低迷等の影響を受け、川下市場の回復は予想に及ばなかった。

全体的に見ると、第1~3四半期の市場は主に新エネルギー自動車と新興業界の需要に牽引されていた。MIRは2022年に新エネルギー自動車と新興業界のロボットの出荷台数が産業用ロボット全体市場の出荷台数の40%以上を占めると予想している。

 

5種類製品の成長はほぼ正常レベルに戻ったが、SCARAはマイナス成長

 

製品別にみると、2022年第3四半期はSCARAがマイナス成長となった。その他の製品はすべてプラス成長で、>20 kg 6-axisとCobotsの成長率が特に大きかった。


2022Q1-Q3産業用ロボット出荷台数の前年比増加状況―細分化製品別

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(データ出所:MIR DATABANK


第3四半期に、太陽光発電、リチウム電池、医療等の新興業界に牽引され、これらの分野でSCARAの需要が急速に拡大したが、3C電子分野の需要低迷が市場全体に大きな影響をもたらした為、前期比マイナス0.1%の成長率となった。

Cobotsは主に自動車部品や自動車、医療、金属製品、半導体等の工業市場で好調であったが、飲食、新小売、教育等の非工業市場ではコロナの影響を受け楽観的ではない。

第3四半期はDeltaロボットのシーズンで、食品飲料や日常化学用品、医療分野の需要回復により、Deltaロボットの需要を牽引した。

>20kg 6-axisの急成長は、主に新エネルギー自動車の完成車と部品、動力電池、物流等の分野で使用が増えたからである。20kg 6-axisは一般工業の回復に牽引され、需要も回復した。

 

外資が再びプラス成長に戻り、内資の成長率が市場の平均成長率を上回った

 

メーカー別に見ると、第3四半期に内資・外資メーカーの市場はいずれもある程度成長した。納期がある程度好転し、生産と納品が徐々に回復し、第2四半期にコロナ等により納品が遅れた受注が第3四半期に次々と納品された為、市場成長を牽引した。


2022年Q3産業用ロボット市場における内・外資メーカーの同期比成長状況

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(データ出所:MIR DATABANK


前期比で見ると、第3四半期の外資シェアは上昇し、国産メーカーの市場シェアは下落した。第2四半期コロナの状況は厳しかった為に、外資メーカーが第2四半期に納品できなかった受注は、第3四半期に大量に出荷された。また、国産メーカーはコロナ期間中完全に国産品代替を実現しなかった。一流外資ロボットメーカーの「四大ブランド」(FANUC、Kuka、ABB、Yaskawa)は「品切れ」が深刻であったが、NachiKawasaki等の外資メーカーはこのチャンスを捉え、自動車、リチウム電池業界でBYDから大量に受注した。

同時に、業界の景況感からも影響を受けた。新エネルギー自動車、リチウム電池、太陽光発電業界の成長が加速した。これらの業界で外資系メーカーの参入が早く、より優位を持っている。それに対して、国産メーカーの川下産業は相対的に分散しており、優位性のある一般工業でも、第3期の成長も決して理想的ではなかった。

さらに、内資メーカーでの差別化も明らかである。コロナの背景に、国産メーカーはサプライチェーンと柔軟な価格戦略の優位性により、リチウム電池、新エネルギー自動車部品、太陽光発電等の分野で引き続き事業を拡大して、シェアを大きく高めた。例えば、Estun、Effort等のメーカーはチャンスをつかんで出荷台数が多かった。一方、一部の中小メーカーは市場の圧力に直面して、競争力が不足してシェアが縮小した。

しかし、2022年第1~3四半期の同期比から見ると、ローカルメーカーの市場シェアは依然として上昇しており、国産品による代替の傾向は引き続けている。