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中国リチウム電池業界用ロボット市場が急成長

リチウム電池の東風に乗り、産業用ロボットは風穴の真ん中に立ち、リチウム電池産業の持続した生産拡大の需要に牽引され、ロボットのリチウム電池業界での販売台数は「大幅に」増えた。


2022年、世界新エネルギー車の販売に於いて、BYDはほぼナンバー1になり、Teslaの今年1年間の販売台数もBYDの過去10ヶ月の販売台数に追い付かないかもしれない。

BYDが発表したデータによると、10月の新エネルギー車の販売台数は前年比144.7%増の21.75万台。この一ヵ月の販売台数だけでは、NIO、XPENG、Li Autoなどの新しい自動車メーカーは一年間では達せられず、実力の強い老舗自動車メーカーも羨むばかりである。

更に重要なのは、1~10月のBYDの新エネルギー車の販売台数は140.29万台に達しており、11月と12月にこの勢いを維持できれば、2022年の販売台数は約180万台に達する可能性がある。

今年第1~3四半期、BYDの長年のライバルであるTeslaの販売台数は90.86台で、仮に第4四半期が四半期ごとの平均販売台数30万台のデータを保つことができたとしても、総販売台数は僅か120万台に過ぎず、BYDが以前設定した年間目標をかろうじて達成し、間違いなく販売台数でBYDに押されている。

新エネルギー車市場全体の競争は激しく、2022年の1-9月、新エネルギー車の生産販売台数は、それぞれ471.7万台と456.7万台で、前年比1.2倍と1.1倍増えた。

従来、新エネルギー車の「心臓」とされてきた動力電池も大幅に牽引され、生産販売の成長率は新エネルギー車に肩を並べるほどになっている。2022年1-9月、中国の動力電池の搭載数量は前年比110.5%増の193.7GWhである。

同時に、スマート製造の背景の下で、中国の主要電池企業は次々と電池生産ラインの自動化程度を上げ、大量に産業用ロボットを導入し始め、材料の搬送、溶接、組立、検査などのプロセスに使用される。リチウム電池の東風に乗り、産業用ロボットは風穴の真ん中に立ち、リチウム電池産業の持続した生産拡大の需要に牽引され、ロボットのリチウム電池業界での販売台数は「大幅に」増えた。

それでは、リチウム電池業界のロボット市場規模はどうなのか?川下産業の需要はどうなのか?使用製品の開発はどうなのか?国産・外資メーカーのパフォーマンスはどうなのか?以下に解答する。

 


動力電池メーカーの生産拡大が加速し、産業用ロボットの使用数量が急増

 


MIR DATABANKのデータによると、2021年の中国リチウム電池業界に於ける産業用ロボットの販売台数は20000台を超え、前年比133.6%増加した。

2015-2025年中国リチウム電池業界に於ける産業用ロボットの販売台数推移と見通し

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(データ出所:MIR DATABANK

*統計データは民生用電池と動力電池の電池セル&モジュールpackの製造分野を含み、エネルギー貯蔵及びその他の関連ロボットの使用数量は含まれていない

その中で、動力電池と民生用電池はリチウム電池業界全体の産業用ロボット市場の大部分を構成しており、2021年には動力電池分野の産業用ロボットの使用数量が2倍近くに増え、全体に占める割合が民生用電池を上回った。

2020 vs 2021年リチウム電池業界に於ける産業用ロボットの市場セグメント—川下産業

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(データ出所:MIR DATABANK

CAAMのデータによると、2022年1-9月の中国の新エネルギー車の市場シェアは24%に達し、既に「新エネルギー車の産業発展計画(2021-2035年)」で明確に打ち出された2025年までの新エネルギー車の販売台数割合を約20%にするという目標を前倒しで達成した。この背景の下で、従来型動力電池メーカーは次々と生産拡大に力を入れ、Sunwoda、COSMX、ATLなどの一部の民生用電池メーカーも動力電池事業に力を入れ始め、国内で動力電池の投資熱を巻き起こしている。

20229月以降、SunwodaEVEなどを含み、少なくとも7社の動力電池メーカーは生産拡大の計画を発表し、生産拡大規模の合計は1000億元を超える見込み。

GOTIONは10月26日、安徽省合肥市で年産20GWh動力電池プロジェクトを建設し、投資総額は67億元;柳州市で年産10GWhの動力リチウム電池生産拠点を新たに建設する予定で、投資総額は約48億元で、これら2件の投資総額は115億元に達すると発表した。BYDは深圳市、西安市、合肥市、撫州市などの完成車基地周辺で電池工場への重点的な投資を行うと共に、FAW、CCAG、JACなどの合弁工場への投資を加速させている。不完全な統計によると、2022年現在までの動力電池業界全体の生産拡大規模は5000億元を超えた。

然し、それは終わりとは程遠い。

2022年9月26日、中国の財務省、税務総局、工信部(中華人民共和国工業情報化部の略称)は、「新エネルギー車の車両購入税免除政策の継続に関する公告」を公布し、新エネルギー車の車両購入税免除政策を継続し、購入日が2023年1月1日から2023年12月31日までの期間内の新エネルギー車について、車両購入税を免除する。

新エネルギー車購入税の免除政策は、中国が2014年に初めて実施し、2017年と2020年の2回延長したのに続き、今回は3回目の延長となった。

言い換えれば、新エネルギー車市場は政策のボーナスの下で引き続き前進し、動力電池市場の投資と生産拡大のペースも決して止まることはない。

旺盛な生産拡大需要に牽引され、動力電池メーカーのロボットへの投入もかつてないほど盛り上がっている。

BYDを例にとると、ここ2年間の生産能力の不足は非常に大きく、ロボットの導入を引き続き強化し、第二線の外資ロボットブランドや国産ロボットブランド、例えばNachiKawasakiPanasonicEstunEfortなどは全てBYDの供給システムに切り込まれた。

第二グループの動力電池メーカー、例えばGOTION、SVOLT、EVE、CALB、Farasis、Sunwodaなどのメーカーもロボットの使用に対する情熱を次々と示している。

新エネルギー車の普及率向上の目標、リチウム電池企業の海外生産能力の投入の加速、充電インフラの整備、電池コストの低減、航続距離や安全性など消費者の悩みが解消されるにつれて、動力電池のロボットシェアは引き続き上昇すると予想されている。


 

SCARA及び6-axisは主要製品で、実用化が進んでいる

 


リチウム電池の生産プロセスが多く、動力電池にとって、ロボットは電池セル生産、モジュール&PACKセグメントの普及率が年々向上しており、現在既に多くの生産の主要プロセスに使用されている。

動力電池の生産プロセス

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(データ出所:MIR DATABANK

その中で、リチウム電池の生産段階で6-axisロボット関連のプロセスの中で、モジュール&PACKラインの使用数量が最大で、搬送、材料上げ・下げ、塗布、積層、溶接、ピッキング、洗浄、箱詰め、ロック、検査、包装などの段階を含んでいる。

SCARAはリチウム電池業界で使用される主要プロセスには組立、溶接の材料上げ・下げ、ラベリング、検査、充電放電・容量選別、包装組立の材料上げ・下げなどが含まれている。然し、現在は電池セルのバックセクション用の超高可搬重量(50kg)のSCARAロボットを開発しているメーカーもある。

そのほか、動力電池産業の急速な発展に伴い、電池企業は自動化に対する需要が日増しに高まり、フロントセクションに於ける電池の電極用原反の体積と重量が次第に大きくなり、人手作業による電池の電極用原反の材料上げ・下げの労働強度が大きくて効率が低く、ロボットはフロントセクションの段階で人手作業の代替も次第に増えていく。

2020 vs 2021年リチウム電池業界に於ける産業用ロボットの割合(製品別)

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(データ出所:MIR DATABANK

上の図を見ると、6-axisロボットの市場シェアが明らかに上昇したことがわかった。

シェアの増加は主に電池セルセグメントが最も早く使用する製品は6-axisであるため、技術のアプリケーションは既に成熟し、モジュール&PACK工程は以前手作業が多い工程であるが、企業の自動化の需要の向上に伴い、6-axisロボットの使用も徐々に普及し始めた。

また、動力電池の生産ラインでは設備の互換性が要求されており、一回により多くの電池セルを搬送するためには、可搬重量範囲がより広い6-axisロボットはより良い選択となっている。

また、ディスペンス塗布の段階では、産業用ロボットの柔軟性も求められており、柔軟性の高さと可搬重量の大きさを同時に満たすことを前提に、6-axisロボットが好まれることになる。

今後数年、6-axisロボットと≥20kgSCARAロボットは動力電池分野の主要シェアを占め、その他の製品が大量に使用できる機会はあまりないと予想される。

 


外資はリチウム電池業界ロボット分野に早期に参入し、市場シェアが高い。国産ブランドは上昇傾向にある


 

リチウム電池業界で多く使われている産業用ロボットは6-axisロボットとSCARAロボットで、この2つの製品のコースで、外資メーカーはブランドと製品の長期的な信頼性の優位性に基づき、相対的に上位を占めている。

2021年リチウム電池業界に於ける産業用ロボットの市場シェア(外資系、ローカル系)メーカー

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(データ出所:MIR DATABANK

然し、これまでの長い間、大部分のリチウム電池メーカーは外資ブランドのロボットを主に使用し、国産ブランドのロボットを少量しか使用していなかったが、2020年以降、Inovance、Estunを代表とする国産産業用ロボットブランドはリチウム電池業界で急速に進展し、多くの大手リチウム電池メーカーの認可と再購入を獲得し続けている。

原材料の値上がり、新型コロナの影響、サプライチェーンの圧迫など複数の要因が重なった影響の下で、ポストコロナ時代は国産産業用ロボットブランドがリチウム電池業界に参入するための一つのチャンスを作り出し、益々多くの国産ロボットメーカーがリチウム電池業界への布石を打つようになったとある程度で考えられる。

全体的に見ると、Estunは国産メーカーの中でのパフォーマンスは比較的優れており、市場シェアは少し上昇し、これはリチウム電池分野で事業展開した後の製品は動力電池の上位メーカーの使用が認められているためである。

現在、リチウム電池業界のロボットは依然として外資ブランドを中心にしているが、InovanceEstunを代表とする上位国産メーカーの市場シェアは今後も比較的明らかな上昇傾向がある。

 


最後に、

「デュアルカーボン」目標の提出は、産業用ロボットのアプリケーションに「発展余地の大きい」新しいコースを設定したと言え、エネルギーの変革は今後30年の主要テーマと基調であり、その中で必然的に知能科学技術の発展とアプリケーションに伴う。

データを見ると、リチウム電池産業の規模が引き続き拡大するのに伴い、ロボットがリチウム電池業界に占める割合は年々上昇している。

言い換えれば、リチウム電池業界はロボットを使用する多くの業界の中でシェアを拡大し続け、今後数年間のロボット需要増加の「エンジン」の役割を担うことになる可能性が大きい。

リチウム電池の新たな発展サイクルの中で、産業用ロボット市場も絶えず前進していく。